アルシァラ・アル・ヤマニア

Alsheara Al Yamania

概要

クローバー貿易商会で外周り営業を務める、トヲラス人の若者。商会の「商社としての」部分を担い、顧客と連絡を取ったり、仕入れに当たったりするのが仕事である。
仕事には真摯に取り組み、業績も良い。が、同僚に対する態度にはやや問題があり、商会内では若干浮いた立場にある。
トヲラス人の中で特別な地位にある「天狗」であり、その背には滑らかな光沢を持った、炎のような色合いの翼が六臂、備わっている。

性格、気質

他人を見下し、敬わない。嫌な事があると直ぐに顔に出し、不機嫌になる。
自分は優秀だと思っていて、優秀な自分が愛されることは当然で、また疎まれるのも当然だと考える。
たとえ誰かを好きになったり、凄いと思って尊敬するようなことがあったりしても、それを素直に認める事はない。

好きなもの、嫌いなもの

食べ物は甘いものや果物を好むが、摂り過ぎないように心がけている。食べ物の好き嫌いは少なく、おそらく、商会の中で最も健康的な食生活を送っている。デーツや甘い紅茶が好物。

派手で目新しい事が好きだが、下調べや、基礎を整える事を疎かにはしない。泥臭い事は好まないが、嫌ってはいない。しかし、影で努力をしている事を知られたり、それを他人に吹聴する事は嫌いで、恥だと考えている。

戦闘

戦闘は不得手で、戦う事には慣れていない。荒事は周囲に任せる。荒事にならないように事を運ぼうとする。そして、その手腕に長けているがために、アルシァラは商会内で、対外的な立場に立っている。

価値観、死生観など

トヲラス天狗である事を誇りに思うと同時に、重い枷だと感じている。優れた存在であらねばならない自分と、現実の自分のギャップに苦しみ、追いつけない誰かの背中に手を伸ばす。そうしなければ生きていてはいけない、生きていけないとさえ思う。屈辱感、劣等感のようなものに、常に追い立てられている。
アルシァラにとって死は恐怖であり、それを逃れる方法があるなら、容易く何かを犠牲にできる。

生まれ

商家として名高い、ヤマニア家の妾腹の子。当主である彼の父親は、世継となる男児を欲し、妻を何人も娶り(トヲラスでは、妻を複数人娶ることが可能である)子を産ませた。しかし産まれてきたのが女児ばかりであったため、屋敷の使用人であった地潜の娘さえ孕ませた。その子がアルシァラである。
念願の男児ではあったものの、アルシァラの背の翼は姉たちの白く輝くそれとは異なり、赤く燃えていた。トヲラスの古い家では、性別と、翼の美しさは、家長となるに欠かせぬものであった。

悲しみに暮れた当主は隠居し、そのまま生涯を閉じたため、アルシァラは彼の遺した子の中で唯一の男児となった。それを良く思わなかったのが、アルシァラの姉と、その母親たちである。アルシァラよりも姉たちの方が、当主となるに相応しい翼を持っている。ましてや妾腹の子、汚らしい地潜の娘が産んだ子に家督を継がせるわけには行かぬと、彼女たちは結託し、彼ら母子を遠くアルスへ送り出して事実上絶縁としたのだった。

アルシァラら母子を島流しにすれど、殺しはしなかったのは、血を分けた弟への、姉たちからの慈悲だったのかもしれない。
しかしながら、アルスの文化はトヲラスのそれとは余りに異なる。アルスでは、背に翼持つ者は異形であり、忌避の対象であった。それだけではなく、トヲラス人そのものを排斥しようとする者もあった。表立ってアルシァラを攻撃する者こそ少なかったが、陰湿な悪意に曝され続け、アルシァラは自己保護としてのひとつの結論に至る。

——己が疎まれるのは、己の優秀さ故だ。

家族、対人関係

・オルティ
上席。尊敬はしているのだが、素直に態度に出さない。自分よりも優秀な人間の存在は、アルシァラにとっては邪魔でしかない。

・商会のメンバー
特別な感情は無く、個人的な付き合いもない。オルティの取り巻きだろ? 俺の魅力が分からないんだよ、可哀想に。

プロフィール

血 族:鹿狼族
年 齢:28歳
誕生日:晩冬
身 長:177cm
体 格:痩身・小柄
口 調:尊大、偉そう
「まあ、このぐらいは当然だろ。俺ってホラ、よく出来るからさ。」
「逃げよう、俺と逃げよう? あいつらみんなバカなんだよ、だって死んじゃうんだぞ!? 俺と一緒に来てよ……!」

ストーリー

・クローバー貿易商会の一員として、要所要所で登場する。トヲラス的な物の考え方、あるいはトヲラス天狗の有り様を示す立ち位置にある。

・オルティが隠遁した後、クローバー貿易商会は軍部の傀儡となった。このままいては未来の無いことを悟ったアルシァラは、軍部や竜宮に商会を売り渡し足抜けを画策する。

・しかし、時は既に遅かった。竜宮を巡る戦いの渦中、彼は呆気なく落命する。終ぞ届くことのなかった誰かの背が、あるいは、側に居られなかった誰かの横顔が、血溜まりの中に霞んで消えた。

メリーラム

Merrylamb

概要

クローバー貿易商会、『雑務』担当。ロータスの業務を手伝ったり、事務所を清掃したりと、のんびり働いている。勿論、商会がただの貿易会社ではないように、メリーラムも、清掃やお茶汲みとは別に本来の仕事を持っている。
それは平たく言えば『拷問』だ。ありとあらゆる道具、器具、あるいは薬品、を用いて、メリーラムは標的を嬲り殺す。とはいえ彼女は取り立てて殺しが好きだとか、断末魔が好きだとか、そういう性癖を抱えているわけではない。単純に、その技術があったからそうしているだけで、本当はマゾ寄りだというのが本人の弁。商会に仇為す者には容赦せず、たっぷりしっぽり情報を絞る。
ちなみに、フリフリの裸エプロン姿は「ご奉仕します」の意味らしい。……断じて雇い主であるオルティの趣味ではない。

性格、気質

口調や眼差しは眠たげだが、話す内容はきっぱりしている。人によっては不愉快に感じるような媚びた女の声色で、じりじりと責める。拷問は趣味ではなく、仕事だとはっきり認識しているため、獲物で遊んだり、不用意に殺したり、逆に延命させたりすることはしない。見かけよりも線引きがしっかりしている。
いつでも事に及べそうな服装だが、その気になることはそうそうない。誘われればする、程度の気持ち。そもそもエプロンの下が貞操帯のため、その気になったところで直ぐに事に及べるわけではない。

好きなもの、嫌いなもの

拷問や殺しに愉しさは感じないが、仕事として割り切っているため、人体の構造や、拷問のやり方等には興味を持つ。スクールには通えなかったが勉強には熱心で、単純な読み書きや計算をロータスから教わっている。
好物は辛いもの。激辛なんとか、みたいなものばかり食べている。

戦闘

動きが機敏なわけでも、耐久力があるわけでもないので、闘うのは不得手。メリーラムの技術はあくまで、甚振ることに特化したもの。

価値観、死生観など

自分はもう死んでいて、商会にいる、商会があることで生かされていると考えている。商会のないところで生きていく気は微塵もない。生きていける気もしない。
性には奔放なほうだが、生来の事情を鑑みれば、奔放というよりは、それがメリーラムにとって当然なのかもしれない。

生まれ

フリーク向けの娼館で生まれ、当然のように娼婦になった。物心ついた頃にはもう頭のおかしい客の相手をしており、初潮より先に妊娠した。
物好きな客と店によって、せっかくだから、と腹が膨れるまでそのままにされる。胎児が大きくなったところで腹を割かれ、メリーラムは自分の子宮と胎盤、そして胎児の心臓を食わされた。それ以来、物を食べても味は感じない。
じきに店は潰れる。路頭に迷い、路地裏で客を引いて金を貰うようになったが、ろくな稼ぎにはならない。おまけに、そこはとあるクランの縄張りであり、知らなかった事といえ、半殺しの目に遭わされてしまう。そうして路地裏で死にかけていたメリーラムを掬い上げたのがオルティであり、クローバー貿易商会だった。

家族、対人関係

・オルティ
命の恩人。恩返しぐらいはしておきたいのだが、別に身体は欲しくないと言われたので、それならばと今の仕事を買って出る。

・ロータス
事務所で一緒に過ごす事が多い。ツッコミが鋭いのでボケ甲斐がある。

・サダルメリク
餌付けしている。

・エリー
商会の数少ない女子メンバー同士なのだが、逆にどう接していいのかわからない。

・エヴァグリーン
童貞くさいのでそんなに好きじゃない。

・アルシァラ
鬱陶しい。誰のおかげでご飯が食べられると思っているのか。

プロフィール

血 族:トヲラス系鹿狼族
年 齢:10代
誕生日:不明
身 長:160cm+ハイヒール
体 格:Jカップ
口 調:眠たげな媚び口調
「あ、もしかして期待してる感じですかぁ。残念ですけどぉ、えっちなことはしないんですよぉ。」
「そういうのいいんで、情報だけちゃっちゃと吐いてもらえますかぁ?」

ストーリー

・商会に救われ、初めは秘書として雇われる予定だった。しかし読み書きが出来ないことを不安に思い、メリーラムから辞退。

・その後、オルティが潔癖気味であること、汚れ仕事を引き受ける者が居ないことを知る。それならばと汚れ役を引き受け、今に至る。

・商会の崩壊後も居残り続けたメンバーのひとり。商会と命運を共にした。

エヴァグリーン・イヴリス

Evagreen Ivris

概要

クローバー貿易商会に出入りする、殺し屋の竜種。会長オルティから直接指示を受け、標的を仕留めて報酬を受け取る。商会と正式に雇用契約を結んでいるわけではなく、アルバイト的に業務をこなしている。
ある理由でオルティを殺す為にやって来たはいいが、そのオルティに手八丁口八丁で丸め込まれてしまった。それ依頼、敵でも味方でもない微妙な立ち位置を保ち続けている。

性格、気質

乱暴粗暴、負けず嫌いな直情型。口より先に手が出て脚が出る。頭で理屈を考えることが不得手でもあり、つい感情的になりがち。生来孤独に過ごしたためか、一度仲間と認識した相手には甘い。口先では鬱陶しそうにするが、照れ隠しだということが非常にわかりやすい。

好きなもの、嫌いなもの

ラーメンが大好物。甘いものよりは辛いもの、塩気のものを好み、油気のものも大好き。ラーメンライスとハンバーガーセットをぺろりと平らげる大食漢であり、食べものは質より量派。非常に燃費が悪い。
しかし何故かキノコだけは食べたがらない。嫌な思い出があるらしい。

戦闘

敏捷にして重撃。その拳は風を切り、剣脚は大地を割く。有り体に言えば馬鹿力。本来の力は身に余り、どうしても振り回されてしまう。
また、戦法もかなり無茶苦茶で、駆け寄って潰す、を繰り返すのがほとんど。格闘術などあってないようなもので、なんとなく足技メインに戦っている、というような状態。
そのため、物理的な力では優っているはずなのに、戦闘毎の消耗が激しい、技を主軸にしている相手とは戦いづらい、というような問題を抱えている。

価値観、死生観など

『強者生存』。竜種であればある程度共通して、似たような価値観を持っているが、彼の場合は特に苛烈であり、病的でさえある。脅迫されるように「勝ち続けること」を目指し、弱い己を恥じる。その根底には「誰も自分を認めてくれない」という悲しみや孤独感がある。
強くとも選ばれなかった自分、弱くとも選ばれた者。過去からの残影に囚われ続けている。

生まれ

彼が生まれたのは、とある『艦』の上だった。とはいえ生まれたばかりの彼はそれを知らず、艦に積まれたわずかなパノラマ的な大地を世界のすべてだと信じていた。しかし生まれて1年もしないうちに、彼は艦を降ろされる。その艦は「希少なもの」を集めるための艦だったのだ。黒曜石の殻を持った卵の状態では珍しいものだった彼だが、孵化してしまえばなんのことはない、ただの竜種だった。 そして、ちょうど入れ替わるようなタイミングで艦に収容された 「色違い」、すなわち希少な竜種の存在。それらに後押し、あるいは蹴り落されるような形で、エヴァグリーンは捨てられたのだった。

エヴァグリーンは、廃棄される瞬間にそれが世界ではなかったことを知った。冷たい海の中で、その艦の姿を確かに見た。そして艦は、薄れる意識の中に強い嫌悪と怒りの火種を灯す。

家族、対人関係

・オルティ
標的であり、相棒であり、弱者であり強者であり、生き方を教えてくれた人でもある。結局最期まで付き添った。

・カマロ
いつの間にか恋人になっていた。そして誰よりも大切な人になっていた。そんな事考えるのも照れ臭いが。

・ネイディーン
拾った竜種の子。後々、カマロと共に育てることになったりする。

プロフィール

血 族:竜種
年 齢:23歳
誕生日:不明
身 長:168cm(ブーツ込み174cm)
体 格:痩身、筋肉質、しなやか
口 調:粗暴

「雑魚がウダウダうるっせぇんだよ。黙ってさっぱり死にやがれ。」
「っだーーーーーー! 俺に触るなって言ってんだろこのクソ野郎!!!!! その腕指から輪切りにされてぇのかクソボケがァ!!!!」
「お前やナディが幸せに生きて行けるんなら、俺はそれで充分だぜ、カマロ。」

ストーリー

・殺し屋としてオルティを襲撃するが、逆に捻じ伏せられ取引をすることになった。オルティを殺さない代わりに、ある艦の情報を提供される約束で。

・オルティとの取引関係は艦を潰したことで終了したのだが、オルティを殺すことはせず、相棒でいることを選んだ。

・オルティの死を看取り、彼の最期の頼みのため、とある研究施設へ潜入。そこで竜種の少年・ネイディーンを拾う。

・カマロと共にネイディーンを育てながら、現代最高峰の殺し屋として讃えられるほどのプロフェッショナルに。

・オルティの娘サリアが引き起こした竜種抗争こと『竜宮』事件に巻き込まれる。ネイディーン、カマロ、そして竜種の少年ニヴィアを庇い、重大なダメージを負って殺し屋を廃業した。

変幻自在のサダルメリク

Sadalmelik

概要

クローバー貿易商会の潜入、および戦闘時の陽動担当。観察したことのあるものならば、ほぼ無限に姿を変える事が可能な能力を持ち、また、サダルメリクを観測する者の認識の違いによって、その精度や特性が変化する。例えば、サダルメリクを怪物だと思っている人の前では、怪物に変化するが、その見た目や特徴は、観測者の認識(例:長い触手と翼のある怪物)に近い、サダルメリクが過去に観察したことのあるもの(例:頭足類や鳥類)を融合させて表現される。どちらが優先されるかは時と状況にもよるが、サダルメリク本人の想像力で変化することは難しい。

というのも、彼/彼女の能力の由来は、彼/彼女が不死者であることに由来するのだ。不死者となる際に、彼/彼女が魂の代わりに燃やした生命の炉心は、個性そのものだった。個性を喪失した彼/彼女は誰でもいられなくなり、記憶や価値観は曖昧であやふやなものになってしまった。もはや不死者となる以前、どんな人物で人格だったのかさえ思い出すことはできない。あるいは人間だったのかさえ、わからない。
彼/彼女を獲得した者に望まれるまま、怪物的に過ごしていた怪物の模倣者を拾い上げたオルティは、彼/彼女に『サダルメリク』の個性を与え、商会で保護する。それから彼は『サダルメリク』をベースとして生活するようになり、いつでも変身・復帰が可能なように、『サダルメリク』を書き込んだ手帳を持ち歩いている。

性格、気質

『サダルメリク』でいる間は、おっとりした、ほんのり天然系のおじさん。温和で争いを好まず、ふわふわと笑っている。見た目や雰囲気は、数学教師風、と形容される事が多いが、数学はむしろ苦手な部類である。
変身中は、その深度にもよるが、変身した相手の性格や気質を模倣する。素のサダルメリクとは真逆のような人格を持つ人に変身しても、深度が浅ければサダルメリクの性格がベースにある。変身の深度が深ければ深いほど、変身した相手の人格に引っ張られ、サダルメリクに戻ることが容易でなくなっていく。
不死者であるため、本来なら眠ることも、食事の必要もなく、傷つけられたとて痛む必要はない。しかしながら、オルティはサダルメリクが可能な限り『普通の人間』として暮らすことを望んだ。故にサダルメリクは眠り、食事し、痛み過ごす。サダルメリクはそれを煩わしいとは思わないが、不思議なことだと感じている。

好きなもの、嫌いなもの

好き、嫌いは個性の一部であるため、本来的にはこれらの情報も持たない。しかし『サダルメリク』はチョコレートケーキとチリビーンズが好きで、日向ぼっこが好きで、星を眺めたり、花を愛でたりする事が好きだ。それは誰が与えたというものでもなく、自然発生的に、サダルメリクに生まれた個性である。サダルメリク、という生き方を与えてくれたオルティ、それを受け入れてくれたクローバー貿易商会は、サダルメリクにとって大切なもののひとつである。それらの為になる事ならば、能力は惜しみなく使う。
無個性であることは彼/彼女にサダルメリクという新しい生を与えはしたが、それは砂の城のようなもので、波が寄せれば一瞬で崩れ去ってしまう。そうした時には、誰か(存命の間は主にオルティ)の認識からサダルメリクを復元するが、前と違ってやいないか、ちゃんと戻せているかと不安になり、後で忘れ去ってしまうとしても、サダルメリクはその時間が不愉快で、嫌いでさえある。

戦闘

不死者の特性上、他者の生命に干渉することは許されていない。故にサダルメリクは直接、誰かを殺すような戦い方はできない。あくまでも彼は怪物の模倣者であり、怪物そのものではない。
そのため、戦闘は行わず、能力を活かし、潜入や陽動を行うことがほとんど。どうしても武力が必要な場合は、誰かの姿を借りて戦うが、やはり殺す事はできない。

不死の特性ゆえに死にはしないので、肉壁を買って出る事はあるが、余程の困窮した状況に限られる。というのも大抵の場合、そういう事をするとオルティをはじめ、商会メンバーが心配するのだ。

価値観、死生観など

サダルメリクの性格ゆえか不死者ゆえか、危険なものに対する抵抗感が皆無で、また、自分の身体についても、大切にする必要はあまり感じていない。サダルメリクという個性は大切にしているが、不死であり、変身が可能な以上、肉体はいくら傷ついても問題はなく、危機感知能力が低い。それは一種、諦めにも似ている。
死ぬことが嫌で不死者になったはずなのだが、その「死ぬことが嫌だった個性」さえ喪っているので、特別死を恐れてはいない。
他人が不死の特性を求めることは快く思わない。これはサダルメリクの個性ではなく、不死者はそのように作られているからである。
後に、とある理由から不死の特性を棄却しようと足掻く事がある。

生まれ

不死者となる以前の環境は不明。
『サダルメリク』としての記憶と記録は、オルティに出会った時から始まっている。

家族、対人関係

・オルティ
『サダルメリク』を与えてくれた恩人。いちばん良く懐いている。彼の死に際し、サダルメリクを保てなくなった。

・ロータス
何かと気にかけてくれる人。なんやかんや世話を焼いてくれるので、一緒にいると楽。

・メリーラム、エリー
仲間として大切に思っている。変身途中の粘土のような姿を見られるのは、なんとなく恥ずかしい気がする。

・エヴァグリーン
強い人という認識なので、戦闘になるような事があれば真っ先に変身する。

・『収集者』
彼/彼女に不死者としての未来を提示した存在。ちょっとだけこわい。

プロフィール

血 族:不明
年 齢:不明(見た目30代後半)
誕生日:不明
身 長:概ね168cm
体 格:瘦せぎす
口 調:おっとり系、平仮名語

「おそかったね、オルティくん。君のまま死んでしまうところだったよ。」
「だめだよ。絶対にだめだ。君は僕みたいになっちゃいけない。」
「僕だって死ねるはずなんだ! 『サダルメリク』のまま、死ねるはずなんだ……!」

ストーリー

・『人を食う怪物』として飼育されているところをオルティ、ロータスに発見される。もちろん戦闘になったが、彼の特性を見抜いたオルティに無害で平凡な個性を与えられて鎮圧された。

・その後、普通の人として生活できるように、『サダルメリク』の個性と、それを手帳に書き留める方法が考案され、クローバー貿易商会の一員となる。

・人手不足の商会のため、潜入、諜報要員として使ってくれと言いだした。オルティは反対したが、最終的にはそれがサダルメリクの仕事になった。

・オルティの死後、自己認識が壊れてしまい、『サダルメリク』を失っていた。そのまま己が誰とも知れず生きていたところを、突然に揺り起こされる。それからの物語は、誰も知らない。

・再び全てを失ったサダルメリクは、この個性を抱えたまま死ぬ事を目指して何度も『自殺』を試みるが、『ある収集者』曰く、そう何度も横紙破りが許されるものではない、とのこと。結果、サダルメリクに残ったのはぼろぼろの身体と、古びた手帳、そして誰かの名前を刻んだ指輪だけだった。

・長い年月の後に、死神になったとある青年と再会を果たす。そうしてサダルメリクの永い永い死出の旅は、やっと終わるのだった。

ロータス

Lotus

ロータス(設定絵)

概要

クローバー貿易商会の会計、書記担当、兼、オルティの運転手、兼、お茶汲み、兼、……要するにオルティの右腕的存在である。
仕事では有能な割に日常生活が疎かになりがちなオルティのサポートを行いつつ、収支会計などの雑務を一手に引き受けているので、実は相当デキる部類。なのだが、なまじオルティが良い意味でも悪い意味でも目立つため、どうしても添え物のような扱いを受けてしまう。
ロータス本人も、オルティの事は自慢のボスで義兄弟だと認識している。話題は殆どが『今日のオルティさん』であり、付き合った女性から「もうそのオルティって人と付き合えば!?」とビンタされ振られたことは、一度や二度の事ではない。

性格、気質

好き嫌いがはっきりしていて、露骨に顔に出る。良く言えば素直な性格。嘘がつけないタイプだが、それが最善だと信じた時には、心を殺してでも嘘をつき通す芯の強さもある。明るくポジティブで、ヌケている所が目立つため、他人からは能天気な馬鹿だと思われがち。しかし、能天気はあながち外してもいない。
一途で一本気な忠犬属性の人柄でもあり、一度従うと決めた以上、オルティには絶対に背かない。また、他の誰の下につく気もない。クローバー貿易商会のメンバーは彼にとっては家族も同然であり、命を賭しても守り抜くと心に決めている。

好きなもの、嫌いなもの

食べる事と酒が好きで、明るく賑やかな場が好きなため、落ち着いた雰囲気のバーのような店よりも、居酒屋のような店を好む。軽食やツマミを自作して宅飲みするのも好き。度数の高い酒も飲めるが、ザルではないので適度に酔う。体型を結構気にしているが、食べたり呑んだりは辞められないので、運動でなんとか消費しようと努力している。
オルティと同じく買い物が好きだが、オルティはファッション関係やガジェット関係の買い物を好むのに比べ、ロータスは食べ物関係の買い物が好き。裏市街の朝市は、趣味と仕事を兼ねて見回る。
オルティの事は大好きだが、オルティの添え物扱いを受けるのは非常に不服であり、そういう扱いをされたと感じた時には、ムッとした表情を見せる。オルティさんが凄い事は、誰より自分が良く知っている、という思いも無きにしもあらずの事。

戦闘

基本的には徒手格闘。ストリート仕込みの喧嘩拳法だが、足技を中心にした連撃はそれぞれが重い。
かつては『サンドラの白狼』と呼ばれ狂犬として恐れられていたが、オルティの下についてからは牙が抜けたように大人しくなった。その事を揶揄して『眠り狼』と呼ぶ者もあり、事実、激昂した時など、今でも白狼の地金を見せる事はある。

ロータス(白狼時代)
白狼時代のロータス

価値観、死生観など

生まれも育ちも裏社会のため、この世は弱肉強食であり、生き残るのは強い者だと考えている。そして、その中でいかに強者となって、弱者を守るのかが、ロータスの課題でもある。

生まれ

アルスの娼婦街で、とあるトヲラス人娼婦の元に生まれる。母は商売女ではあったが、ロータスを溺愛し、愛情と金をかけて、教育を受けさせて育てた。そのため、ロータスは貧民街の出でありながらも、それなりの読み書きや算術を習得している。母とその周りの娼婦たちはロータスを可愛がり、ロータスも彼女たちに懐いた。今でも女性の扱いはそれなりに上手い。
たっぷりと愛情をかけてもらったぶん、ロータスは愛情深く、義理に厚い男に成長した。
成人する前に母を喪い、喧嘩と暴力の日々を過ごしたが、その気質は失われなかった。

家族、対人関係

・トラン
本当の父親の顔を知らないロータスは、先代のクローバー貿易商会会長であるトランを父のように慕っていた。トランもロータスを息子同然に可愛がっていた。オルティがトランの仇を討つと言い出した時、二つ返事で了承したのはロータスだけだった。

・オルティ
兄貴分であり、オルティが会長となった現在は仕えるべき主君でもあるが、その出会いは最低だった。喧嘩の強さを買われて用心棒のような事をさせられていたロータスは、当時まだクローバー貿易商会の鉄砲玉で、カチコミに来たオルティと本気の殴り合いになる。死闘の結果、地を舐めたのはロータスで、それ以来、ロータスはオルティを兄貴として慕うようになる。

・アンブロシア、ヴァースラフ
ロータスとほぼ同時期にクローバー貿易商会に参入した、トランに可愛がられた少年たち。二人が死んだ時は深く悲しみ、そして、四ツ葉を枯らす事は出来ないと、強く決意した。

・サダルメリク
オルティが拾ってきた、可愛い弟分のような存在。とはいえ、どうせ変身できるなら、おじさんじゃなくておっぱいのでかい美少女でいて欲しかった。

・メリーラム
だからってそういう路線の人を連れてこいって意味じゃない、と思った。
普段事務所で一緒に仕事になる事が多い。目のやり場に困る。

・アルシァラ
後輩。少し生意気だが仕事はできるので、特に咎めたりはしない。オルティ本人は許すが、オルティに対して態度が悪い時に叱る程度。

・エリー
彼女の兄、アンブロシアを助けられなかった責任は自分にもあると感じている。できる限り幸せに、平穏に暮らさせてあげたい。

・エヴァグリーン
またオルティさんがなんか拾ってきた。使える奴だとは思っているが、事務所のカーペットを血で汚すのはやめてほしいと常々思っている。どうせそれを片付けるのはロータスの仕事だからだ。

プロフィール

血 族:トヲラス系鹿狼族
年 齢:39歳
誕生日:早春
身 長:188cm
体 格:やや肉づきのいい、筋肉質の体型
口 調:目上の人には敬語調。優しげ。

「オルティさん、そろそろコーヒーぐらい自分で淹れられるようになってくださいよ。」
「お前ほんとまともな服着てくれよ頼むから」
「良い子だね、ほら、おいで?」

ストーリー

・オルティの右腕として、要所要所で登場はするものの、目立って活躍はしない。控えめに花を添える存在。

・オルティが病を理由に隠遁した後、必死になってオルティの行方を捜したが、二度と会うことは出来なかった。

・クローバー貿易商会会長代理となり、死ぬまで頑なに代理と名乗り続けた。

・オルティの娘サリアが軍部と組み、竜宮を作り上げて商会を狙ってきた時、ロータスはそれを止める事ができずに、商会は軍部の傀儡となった。

・竜宮とエヴァグリーンは全面戦争になり、ロータスは商会の残党を率いて戦場に立った。軍部に手を貸すつもりは微塵もなく、軍部に顔が立つ程度に働き、商会に残ったメンバーを逃がそうという腹積りで。その後、おそらく事情を理解できるだろうエヴァグリーンの手に掛かることが目的だった。

・しかし、彼を断罪したのはエヴァグリーンではなかった。異国の剣技を用い、その男はロータスの背を斬る。ああ、雨になりそうですよ、気をつけて帰ってくださいね。己を斬った男の膝で、彼の向こうの空へ手を伸ばし、それがロータスの最期の言葉になった。46歳の、雨の日のことだった。

オルティ・クラヴィアド

Ortie Claviad

オルティ(フル装備)
オルティ(普段着)

概要

アルスの裏社会を統治するクランのひとつ、『クローバー貿易商会』の二代目会長。
情報屋として非常に顔が広く、また、その精度も高い。彼の持つ情報はクローバー商会の商材で最も高値がつくもののひとつであり、重要な収入源であるため、オルティは時間の許す限り、それらの収集と整理に当たっている。
笑顔を崩さず、余裕の態度で膨大な情報を捌く様子がまるで手品のようである、と、付いた渾名が『奇術師』あるいは『魔術師』。もしくはクランの名を取って『四ツ葉(の王様)』と呼ばれている。

性格、気質

性格は至って温厚で平和的に見える。常に和やかに笑っているが、眼光は鋭く、冷たささえ感じさせる。他人を心から信じる事がなく、温厚な態度は無駄な諍いを避ける為でしかない。残酷で無慈悲な一面もあり、特に、敵対者と自分には非常に厳しい。心から笑ったり、泣いたり、そういったことは滅多にない。
『色違い』であり、その色の珍しさを好む者には特に敵愾心を抱く。これは幼少期から、見た目ばかりを褒められ、何を努力しても、その努力や本人の才覚よりも、色違いであることを評価されてきたからである。逆に言えば、そういった扱いをしない人の事は大好きだが、アルスでは色違いの価値が高騰しつつあるため、そのような人物はなかなかいない。特に、付き合ってきた女性が皆、オルティをアクセサリーのように扱ってきたことがトラウマになっている。
故に芯の部分では根暗。好きだと言われても、どうせ色違いだからだろう、と穿ってくる程度には根暗で、面倒臭い性格。そして、自分のそういった面を嫌悪しているため、明るく振舞って無理をするのが常。

好きなもの、嫌いなもの

ファッションに気を配り、かっこいい男でいることを心がけている。ショッピングも好きで、甘党。揶揄うように『四ツ葉の雄姫様』呼ばわりされるのは、満更でもない。
やや潔癖症気味で、血とか死体とかはあまり触りたくないが、嫌いなだけで殺らないわけではない。
妹を自殺に追いやった事から、性暴力は大嫌い。

戦闘

『商会一か弱い男』を自称しているが、か弱いの意味を千回は問い質したくなる程度には強い。情報屋、のステータスに見合わぬ武闘派であり、仮にも竜種であるエヴァグリーンを手練手管で負かし、物理的に床を舐めさせたこともある。無論、情報戦、心理戦にも強く、敵に回した事をたっぷり後悔させられる事になる。
主武装はコルトパイソンだが、近接格闘戦も強い。

価値観、死生観など

商売人でありマフィアであるため、金の力は良く知っている。金は生命よりも重くなることがある。逆もまた然りであり、生命は軽々と消費しない。殺しは悪であり、社会に反していると考える。
しかしながら、彼に殺しの罪悪感はない。殺しは悪だが、それは社会に属する者にとっての事だからだ。仲間の死に悲しむことはあれど、犯罪を犯して悲しむことはない。
また、色違いであることに価値はない、そういう世界を渇望している。

生まれ

トヲラス人の父と、彼のアルス人の愛妾の下に生まれた。生涯の殆どをアルスで過ごしているため、トヲラスが母国であるという実感は薄い。父は正妻との間にも子があり、オルティの妹に当たる。
父はトヲラス系の大企業『アストラ商会』の会長を務めており、オルティはその長男。アルスの裏社会で生きることを決めた時に、家から自主的に勘当され、名前と家を捨てた。父および正妻との関係は良好だったが、そう生きたいとオルティが願ったため、父は止めなかった。
棄てた名はオルトミルフィ・アルタイル=アストラ。この事は幼馴染等、一部の関係者だけが知っている。自分では、アストラの家に迷惑にならないように、名乗らないようにしている。

家族、対人関係

・タリー
腹違いの妹。目に入れても痛くないほど可愛がっていた。彼女が自殺する原因となった、性暴力を深く憎んでいる。また、その犯人グループを今も探している。

頬の傷は、妹の仇と戦った際についたもの。彼にとっては、誇りでもある。

・トラン
先代の会長であったトランは、第二の父親と言うべき存在。彼から教わった事は数知れず。トランが殺された事で、オルティは四ツ葉を継いだ。

・ロータス
右腕的な存在。トランが存命だった頃から、トランの息子同然の義兄弟同士の間柄。周りからは頼りない補佐官と思われがちだが、オルティ本人はかなり頼りにしている。

・アンブロシア、ヴァースラフ
ロータス同様、トランが息子同然に可愛がっていた少年たち。オルティ、ロータスとはそれぞれ義兄弟の間柄。アンブロシアはトランが亡くなる原因を作り、ヴァースラフはオルティに自分を殺させ、四ツ葉に仕立てた。

・サダルメリク
拾った不死者に『サダルメリク』の個性を与え、居場所を与えた。サダルメリクからも懐かれている。本当は、彼を戦場に出したくはない。

・メリーラム
傷だらけで棄てられ、死にそうになっていたメリーラムを助け、雇用した。周囲には愛妾だと思われているが、そういう関係ではないし、一度も抱いていない。衣装もオルティが用意したと思われている。

・エリー
亡きアンブロシアの妹。アンブロシアの代わりに彼女の身元を引き受け、受付嬢として雇用している。彼女から好意を向けられている事は知っているが、オルティが殺したも同然の、かつて親友だった男の妹を愛する事はできなかった。

・サリア
血の繋がらない娘。昔一度だけ相手をした娼妓から押し付けられ、引き取った。カタギの世界で生きてほしいという想いから、自分からは遠ざけて育てている。

・ナダレ、ダレン
スクール時代からの幼馴染。オルティの本名を知る数少ない人物。自分の外見をとやかく言わなかったのは彼らが初めてであり、いまだにその事を嬉しく思っている。
特にダレンは軍上層部への貴重なパイプでもあり、綿密に連絡を取り合っている。

・エヴァグリーン
オルティを始末しにきた殺し屋だが、仲間に引き入れ、最終的には互いに相棒のような立ち位置になった。オルティはエヴァグリーンを弟分か、あるいは息子のように思っている節がある。実は関係は旧く、かつてエヴァグリーンが、意図せずオルティの命を救ったことから始まっている。

プロフィール

血 族:トヲラス系鹿狼族
年 齢:39歳
誕生日:晩秋
身 長:193cm
体 格:筋肉質、大きめ
口 調:知的ではっきりしている

「では、今後ともご贔屓に、旦那。」
「エヴァグリーン、お前はもう少し、闘い方を覚えたほうがいいぜ。出撃する度にこれじゃあ、カーペットの替えが何枚あっても足りねぇよ。」
「俺は充分、幸せだった。今までもそうだし、これからもずっとそうだ。苦しくて泣きたいぐらい、本当に幸せなんだ。……大好きだよ、愛してる。」

ストーリー

・エヴァグリーンの襲撃を受け、仲間に引き込んだ。彼の目的に協力する代わり、自分を殺さないように契約。きっちり契約満了したが、エヴァグリーンはオルティを殺さず、これからも側にいる事を望んだ。

・ノエルの失踪後、ナダレに頼まれ、ノエルの行方を追った。しかし、後を追うように消えたナダレに調査結果を伝える事はできず、その全てはエヴァグリーンに託す事となった。

・遠国の超格上ヤクザクラン相手に取引交渉に行って、先方の頭領にいたく気に入られる。互いに互いの寂しさを埋めるように深く愛し合い、逢瀬を重ねるも、想いを伝える事ができないまま、羽化症の発症と共に身を引いた……のだが。

・生来、死病である、『羽化症』の潜在的な患者であり、20代の頃には、長生きはできないと宣告されていた。結果、43歳ごろに発症し、44歳で病没する。

・亡くなる前に一度だけ、想い人と再会を果たす。初めて想いを伝え合うことができ、彼の今後が気掛かりではありながらも、結末に満足していた。

・彼の死後、サリアの手により、クローバー貿易商会は呆気なく瓦解、壊滅する。