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ジャスミン

Jasmine

概要

ZeTAに所属する研究者で、「孤島」調査団の主任調査員。博物学に厚く、特に竜の生態や汚染水について詳しく研究している。ブルーバードによってZeTAに連れ込まれたシャルトリューズの治療、および身の回りの世話を行なう傍ら、「竜を人に戻す治療」にも関わっていた(ただし、ジャスミンは「不要不急の治療行為は行うべきでなく、本人の意志に任せるべき」という立場である)。

性格、気質

穏やかでおっとりしていて、落ち着いた雰囲気。私生活はズボラで片付け下手、マルチタスクが出来ない子。両手いっぱいに荷物を持って、ああ何だか落っことしそう、むしろもう落っことしてる、なのにどうしてうまく拾えないんだろう……と困り果てているようなタイプ。
決して無能ではない、むしろ優秀な研究者でありながらなかなか出世しないのは、そのせいなのかもしれない。そんな自分に自己嫌悪しがちだが、研究については自信を持っており、相手が上長でも積極的に提言を行う。

好きなもの、嫌いなもの

コーヒー党で、ミルクと砂糖アリアリが好き。ただいずれも贅沢品のため、野草から抽出したエキスに粉乳や甘味物質を加え、舌を誤魔化している。意外とイケるらしい。
嫌い、というか苦手なことは片付け、整理整頓。それに着替え。そもそも頻繁に洗剤での洗濯ができる環境ではないのだが、それにしてもジャスミンは一張羅で過ごしがちである。スチームで除菌してるから大丈夫だよ……多分……。

戦闘

一切できない。
ただ、何故だか腕っぷしは強く、引っ叩かれたシャルトリューズは「普通にめちゃくちゃ痛くて、ちょっと泣いた」と供述している。

価値観、死生観など

世界をより良くするためにZeTAとして働いているわけで、それが大事なのだから、自身の私生活を気にしても仕方ない。という大義名分の言い訳を携え、ごちゃごちゃした部屋で寝起きしている。片付けられないのは、自分と向き合うのが怖いから? 立派な仕事をしていても、自分自身はちっぽけでつまらないと思い知りたくないから?

生まれ

両親は大災厄以前、かねてからのZeTA職員であったため、ジャスミンはこの時代にありながら、きちんとした教育を受け、まともな環境で育ってきた。彼女が穏やかな人柄をしているのは、そのためだろう。
同時に、他の同僚たちがしてきたような苦労を、ジャスミンは全くと言っていいほど感じていない。それがジャスミンにはたまらないのだ。所詮、温室育ちというか。恵まれた環境で生まれたくせにこんなものというか。

家族、対人関係

・ブルーバード
誰彼から尊敬され、慕われている立派な戦士。自分とは生きる世界が違い、決して交わることがないと、そう思っていた。

・アンセム
彼女の明るくて爛漫なところに助けられているが、優秀な彼女と自分が同僚として並ぶのはどうだろう、と思うこともある。

・シャルトリューズ
きっと彼には辛いことが沢山あったのだろうと思っている。でもジャスミンには、彼が迷子の子供にしか見えない時があるのだ。

プロフィール

血 族:鹿狼族
年 齢:まだ20代
誕生日:プール開き
身 長:160cmほど
体 格:やや肉付きよし
口 調:穏やかで丁寧
「はいぃ……世話役のジャスミンです。検査お疲れ様でした。」
「汚部屋ですみません……。その辺座ってもらっていいですから」
「私、あなたのことがずっと好き。今までもこれからも変わらず、あなたを想ってます。」

ストーリー

がらくた英雄伝説(孤島の竜)

アンセム

Anthem

概要

ZeTAでエンジニアとして働く少女。「孤島」調査団技術顧問として任命され、ブルーバード、ジャスミンと共に孤島の調査へと赴いた。ソフト系では、先輩であるラサに勝るとも劣らない技術力を有している。その能力は、孤島の調査中に出会った現地民の不明言語を(実はライブラリに一致するデータがあったというだけなのだが)翻訳するツールを急拵えする程度には高い。

性格、気質

明るくて気のいい娘だが、その反面、調子に乗りやすく、周りを振り回す。目についたものなら何にでもひとこと言わないと気が済まないような所があるが、抜け目はなく、やるべきことはいつの間にかしっかりとこなしている。ただし周囲が頼りになる場合は、それに甘えてしまうきらいもある。

好きなもの、嫌いなもの

自分の境遇を気にかけてくれたことから、ラサを先輩と呼び慕う。単なる職場の同僚以上に懐き、ラサからも可愛がられている。
また、食べることが好きで、調査道具にもミールキットを必ず持参している。
嫌いなものは竜。ZeTAの目的が竜を「討伐すること」から「救うこと」へと変化していく最中で、それを受け入れられずにいた。

戦闘

特に戦闘の役には立たず、その力を持たない。

価値観、死生観など

目の前で幼い弟を竜に殺されたことから、竜を深く憎んでいる。同様の境遇であるブルーバードによって助けられ(ブルーバードにその記憶は特にない)、それ以来「最強の竜狩」の噂を追い続けていたが、再会したブルーバードは竜を憎むことを辞めていた。その時、アンセムの憧れは終わったのだろう。

生まれ

ZeTAにも認知されていない、ほぼ家族だけで暮らしていた小規模な集落の生まれ。ある日突然に竜によって襲われ、その殆ど全員が犠牲になった。
その後アンセムは方々のキャンプで、機材の修理などを請け負い暮らしていたらしい。

家族、対人関係

・ブルーバード
「弟を竜に殺された」という共通点、窮地の自分を救ってくれた烈火の如き竜への怒り、その全てに憧れていた。今や過去の憧れにすぎない。

・ラサ
ZeTAに勧誘してくれた先輩。アンセムにとっては、世界を拓いてくれた人だ。

・ジャスミン
同僚のひとり。穏やかで落ち着いたジャスミンとは真反対の性格だが、何故だか気は合うらしく、親しくしている。

・シャルトリューズ
嫌悪していたが、シャルトリューズ本人の調査への献身や、アニュータとの交流をきっかけに関係は軟化した。

・アニュータ
孤島で出会った現地の少年。彼が竜であった事には衝撃を受けたが、結局、本部で彼の面倒はアンセムが見ている。

プロフィール

血 族:鹿狼族
年 齢:秘密ッス!
誕生日:白詰草の咲く頃
身 長:140cmぐらい
体 格:小柄
口 調:こんな感じッス
「あと5分寝たいッス……」
「イケメン見ながら食べるカレーはうまいッスね!」
「何で『本当は人間でした』で、全部ぜんぶ、なかった事にできるッスか……!?」

ストーリー

がらくた英雄伝説(孤島の竜)

ラサ

Lhasa

概要

ZeTAでエンジニアとして務めているギャル。ゆるふわゆめかわロングヘアと頭上のサングラスがトレードマーク。
こんな見た目と勤務態度だが、エンジニアとしては超優秀かつ有能。一部署にひとり欲しい人材として、ZeTA内部でも有名である。

性格、気質

温厚で人懐こく、我が強くて爛漫。何かを頼めば二つ返事でこなし、困ったことがあれば素直に周りを頼る。一を聞いて十を知り、十二の知見で答えてくれる。誰にでも分け隔てなく明るく接する。理想的すぎるギャル兼オタクの姿がそこにある。

好きなもの、嫌いなもの

コンピューターいじりとソフト・ハード両面の開発が趣味。仕事が趣味と実益を兼ねているタイプで、ある意味ではワーカーホリック的でもある。
技術は人の役に立つために使われるべきぢゃん? つまりウチはウチの技術力でラブとピースを守っていきたいってワケ!
嫌いなものはバグ。コンピューター内のバグも、現実の虫も嫌い。

戦闘

ぜんぜんダメ。それっぽいメカを開発するのは得意だが、本人が使いこなすのは難しい。

価値観、死生観など

何時もあっけらかんとしたラサだが、ZeTAへの加入は並ならぬ覚悟で決行した。彼女が生まれたのは危険地帯に程近い、今はプレアデス・キャンプと呼ばれている集落だ。そこでは竜によって命を落とすことは日常の一部で、人々は戦っては死んでいく。ラサはそのことに心を痛めていた。そして、彼女の大切な親友、プレアデスがいつかそのような路を辿ってしまうのではないかと感じていた。
——せめて彼らが楽をできるように、自らの身を守れるように。戦う力を持たない自分が、戦える場所へ。場所が、やり方が違っても、自分も共に戦うために。諦めない。ただ、やり方を変える。それが彼女を動かす原動力なのだ。

生まれ

現在のプレアデス・キャンプにて、元軍人の娘として生まれた。彼女の技術力は、整備兵であった親の指導により培われたのである。

家族、対人関係

・プレアデス
幼馴染であり、ラサの行く末を決定づけた大切な人。ラサにとっては、可愛い「プーちゃん」。

・アンセム
可愛い後輩。彼女が過去の出来事に囚われていることを気にかけ、心配している。前を向いて生きて欲しい。

プロフィール

血 族:鹿狼族
年 齢:聞かんで〜
誕生日:指が悴む頃
身 長:160cmぐらい
体 格:細くて小柄
口 調:ギャル
「やっほ〜!!よろしくね、ちゃんギン!!」
「ほら、ウチらって超絶忙しい系組織ぢゃん?」
「プーちゃん、ウチね、守って欲しいんじゃないの。ウチがプーちゃんを守りたい。」

ストーリー

がらくた英雄伝説

ツキヒメ

Tsukihime

概要

カジノ『パンドラボックス』のカードコーナーは常に賑わいを見せているが、時に彼女が訪れる時、その賑わいは殊更に高揚する。ツキヒメ、カードの女王にして、王の細君。名うての勝負師でも彼女には敬意を払い、か弱き者は一目散に勝負を降りる。艶然と笑む彼女の前には、次第にチップの山が築かれる。終ぞ負け知らずの、幸運の女神に愛された者。それがツキヒメだった。

性格、気質

何もかもを見透かしているような微笑みを絶やさないことで、初見では怜悧な印象や、恐ろしい印象を受ける者が多い。しかし彼女自身は非常に甘やかで優しい。一度会話をすれば彼女の蕩けるような囁きの虜にされる。そして、その後の責任は誰も持ってくれはしない。

好きなもの、嫌いなもの

カードゲームは好きだが、それよりも楽しいお喋りや飲み物、そして美しいものや華やかなものを好む。逆に見窄らしいものは嫌う。かつての時代の貴婦人のような優雅で上品な振る舞いを好む。
食べ物であればとりわけチョコレート類をこよなく愛し、どちらかといえばビターな物が好き。蕩かすように味わう。

戦闘

戦うことはからきしで、戦力にはならない。泥臭さとは無縁な彼女は、繊細で嫋やかな、守るべき女そのものだ。

価値観、死生観など

強固な価値観や生命観を持たない彼女は、他人の価値観を肯定して生きている。即ちシュワルツの価値観を肯定し、それに倣っている。彼を愛し慈しみ、彼に愛される以上の自分は不必要で、今ここに、シュワルツの傍に立つ自分だけを肯定する。

生まれ

故に、シュワルツと出会う以前の事は語らない。その情報に彼女は意味を見出せないのだ。噂では、どこかの店で娼妓をしていただとか、かつては歌姫であったのだとか、様々に口々に言われているが、ツキヒメはそれを肯定も否定もせずに、ただ微笑んでいる。

家族、対人関係

・シュワルツ
最愛の男であり、パートナー。自身の存在の理由であり、全てである。彼が望む事を何でもしてやりたいと思うし、これまでも常にそうしてきた。

プロフィール

血 族:鹿狼族
年 齢:30代前半
誕生日:晩冬
身 長:170cm前後、ヒール込み
体 格:Gカップ
口 調:華やかで丁寧

「あらあら、また私の勝ちね。嬉しいわ!」
「私には貴方がいるもの。そして、貴方には私がいるのよ。だからちっとも、寂しくなんてないの。私は貴方を愛しているわ。」

ストーリー

・主軸となるストーリーには大きく絡まない。シュワルツの隣に立ち、彼を愛する者として存在する。

アルシァラ・アル・ヤマニア

Alsheara Al Yamania

概要

クローバー貿易商会の外商、すなわち外周り営業を務める、トヲラス人の若者。商会の「商社としての」部分を担い、顧客と連絡を取ったり、仕入れに当たったりするのが仕事。また、トヲラス人の中で特別な地位にある「天狗」である。

プロフィール

血 族:トヲラス系鹿狼族
年 齢:28歳
誕生日:晩冬
身 長:177cm
体 格:痩身・小柄
口 調:尊大、偉そう

「まあ、このぐらいは当然だろ。俺ってホラ、よく出来るからさ。」
「どいつもこいつもオルティさんオルティさんって。馬ッ鹿じゃねぇの? お前らって自我とかないわけ?」

外見描写

黒に近い暗褐色の肌に、灰色がかった白髪がしっとりとかかる。髪は柔らかな癖がついていて、よく手入れされて艶めいている。自信たっぷりに釣り上がったアーモンド型の目、長くしっかりとした睫毛。青い宝石のような瞳は鋭く眩しい。白いダブルのスーツを纏い、いつも胸を張っている。
トヲラス天狗である彼の背中には、燃えるような緋色の翼が、堂々たる三対六枚開いている。その翼は畳んで仕舞うこともできるものだが、アルシァラは好んでそうしている。

性質

他人を見下し、敬わない。嫌な事があると直ぐに顔に出し、不機嫌になる。同僚に対する態度に問題があると、上席であるオルティやロータスから何度も指摘を受けているが、改めようとしない。態度はともかく仕事ぶりは素晴らしく、アルシァラの業績は社内でも一、二を争うほどに高い。
自分は優秀だと思っていて、優秀な自分が愛されることは当然で、また疎まれるのも当然だと考える。
たとえ誰かを好きになったり、凄いと思って尊敬するようなことがあったりしても、それを素直に認める事はない。
甘いものや果物を好み、甘い紅茶やデーツが好物。しかし摂り過ぎないように心がけている。商会の中で最も健康的な生活を送っているのはアルシァラであろう。
派手で目新しい事が好きだが、下調べや、基礎を整える事を疎かにはしない。芯のしっかりした努力家で、泥臭い事は好まないが、嫌ってはいない。アルシァラは、影で努力をしている事を知られること、それを他人に吹聴することを嫌うのである。

戦闘

戦闘は不得手で、戦う事には慣れていない。荒事は周囲に任せる。荒事にならないように事を運ぼうとする。そして、その手腕に長けているがために、アルシァラは商会内で、対外的な立場に立っている。

ストーリー

・クローバー貿易商会の一員として登場する。トヲラス的な物の考え方、あるいはトヲラス天狗の有り様を示す立ち位置にある。

Read More – ただそう産まれたから

アルシァラは、トヲラスにおいて名家と名高いヤマニア家の子息である。その彼がアルスという異国で、かつ裏社会に関わりながら暮らしていることには、彼の語りたがらない深い事情がある。

ヤマニア家の当主である彼の父親は、世継となる男児を欲し、妻を何人も娶り(トヲラスでは、妻を複数人娶ることが可能である)子を産ませた。しかし産まれてきたのが女児ばかりであったため、屋敷の使用人であった地潜の娘さえ孕ませた。その子がアルシァラである。
念願の男児ではあったものの、アルシァラの背の翼は姉たちの白く輝くそれとは異なり、赤く燃えていた。トヲラスの古い家では、性別と、翼の美しさは、家長となるに欠かせぬものであった。

悲しみに暮れた当主は隠居し、そのまま生涯を閉じたため、アルシァラは彼の遺した子の中で唯一の男児となった。それを良く思わなかったのが、アルシァラの姉と、その母親たちである。アルシァラよりも姉たちの方が、当主となるに相応しい翼を持っている。ましてや妾腹の子、汚らしい地潜の娘が産んだ子に家督を継がせるわけには行かぬ。
彼女たちは結託し、アルシァラと母を遠くアルスへ送り出し、事実上絶縁としたのだった。

母子を島流しにすれど、殺しはしなかったのは、血を分けた弟への、姉たちからの慈悲だったのかもしれない。
しかしながら、アルスの文化はトヲラスのそれとはあまりに異なる。アルスでは、背に翼持つ者は異形であり、忌避の対象であった。それだけではなく、トヲラス人そのものを排斥しようとする者もあった。

陰湿な悪意に曝され続け、アルシァラは自己保護としてのひとつの結論に至る。
己が疎まれるのは、己の優秀さ故だ。

Read More – 遠く碧い空

真っ当な働き口など、見つかろうはずもない。

トヲラス人とひと目でわかるアルシァラの容姿は、この国では重い枷となった。アルシァラの成人をきっかけにして、故国からの仕送りは絶えた。老境に差し掛かった母に無理はさせられない。アルシァラは死に物狂いで努力した。低賃金で食い繋ぎながらいくつもの資格を取り、翼を隠して就職活動に明け暮れた。そして、その度に失望した。いつだって、トヲラス人というだけで断られた。

アルシァラの試みはうまくいかなかった。優秀であることと、結果を掴み取れることに因果関係はない。それを思い知らされただけだ。結局、母親が出入りしていたトヲラス人コミュニティから、彼はクローバー貿易商会と繋がった。そして、会長であるオルティに見出されたのだった。決死の努力など、何ひとつ関係なく。
彼の碧い瞳は、アルシァラの何も値踏みしなかった。ありのままを評価した。それをアルシァラは、屈辱だと感じずにはいられなかった。

トヲラス天狗である以上、優れた存在であらねばならない。地潜より、人狼どもより、誰よりも。環境が、世界がそれを許さなかったとしても、その在り方が折れることだけは許されない。そうして我を通すアルシァラは、何度も失敗をした。その度に彼を助けたのは、見下して見下ろしてきた地潜、翼を持たないトヲラス人たちだ。

飛べもしない、重く引き摺るだけの翼が、何の価値を保証するというのか。こんなもの、何の役にも立ちはしない。

羨ましい。こんなものに縛られていないお前が。腹立たしい。お前に追いつけない全てが。馬鹿馬鹿しい。この感情を捨てられない心が。未だ故郷の空に囚われている自分自身が!

屈辱感と劣等感に追い立てられながら、それでもアルシァラは彼の背を追う。自分より優秀な誰かの存在など、邪魔なだけだ。俺は取り巻きどもとは違う。お前をいずれ倒す。いずれ追い抜く。

——その碧い瞳に誰よりも、鮮烈に翔んでみせる。

メリーラム

Merrylamb

概要

クローバー貿易商会の雑務担当。清掃やお茶汲みから、口を割らない相手の拷問まで、何でも卒なくこなす。

プロフィール

血 族:トヲラス系鹿狼族
年 齢:不詳(20代?)
誕生日:不明
身 長:160cm+ハイヒール
体 格:Jカップ
口 調:眠たげな、媚びた女の調子

「あ、もしかして期待してる感じですかぁ。残念ですけどぉ、えっちなことはしないんですよぉ。」
「そういうのいいんで。情報だけちゃっちゃと吐いてもらえますかぁ?」

外見描写

艶やかで瑞々しい褐色の肌、長く豊かな淡い色の髪。髪は少し癖があり、色味は灰色がかっているが、光に当たれば緑色を帯びても見える。それはなめらかな天鵞絨のようにさらさらと、美しく色合いを変えるのである。その髪を、大抵は後頭部でひとつに束ねている。
やや目尻で下がる眉と、長いまつ毛に縁取られた眼はどこか気の抜けた風体である。明るい琥珀のような、あるいは暗い黄金のような色の瞳もどこか眠たげで、眼差しには鋭さがない。主張しない鼻筋、小さくてぽってりとした、開き気味の唇も男好きのする印象。そんな見た目と口調に依らず、意外なほどに話す内容はきっぱり、さっぱりとしている。
そして、どうしても豊満なバストが目を引く。メリーラムはいつも、その柔らかく大きな水風船のような褐色の膨らみを見せつけ、強調する服を選ぶのだ。大抵は下着すらまともに身につけておらず、いわゆる裸エプロンのようなスタイルである。ホワイトブリムを頭に乗せ、奇妙な小間使いとしてメリーラムはそこに居る。

性質

メリーラムは、取り立てて殺しが好きだとか、断末魔が好きだとか、そういう性癖を抱えているわけではない。単純に、仕事だからそうしているだけだ。
標的を拷問し、ありとあらゆる責苦を与え、生かさず殺さず全力で嬲り搾る。仕事だとはっきり認識しているため、遊んだり、不用意に殺したり、逆に延命させたりすることはしない。見かけよりもメリーラムは、線引きがしっかりしているほうだ。
スクールには通えなかったが、勉強には熱心。仕事のためになる医学には特に興味がある。単純な読み書きや計算をロータスから教わっている。

戦闘

闘うのは不得意。メリーラムの技術はあくまで、甚振ることに特化したものである。

ストーリー

・商会に救われ、初めは秘書として雇われる予定だった。しかし読み書きが出来ないことを不安に思い、メリーラムから辞退。
・その後、オルティが潔癖気味であること、商会には汚れ仕事をできる者が居ないことを知る。それならばと汚れ役を引き受け、今に至る。

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メリーラムは、腹の中で育っていくその生命が恐ろしかった。
アルスに暮らすトヲラス人が、娼館の生まれであることは珍しいことではない。トヲラス人、あるいはその血を引いている女が生計を建てるために、それよりも稼げる仕事は無いからだ。そして、激化した市場競争は特殊な性行為の提供へと偏っていく。

だからメリーラムも、その凡例のひとつに過ぎない。
初潮よりも先に妊娠した彼女は、何度も腹の子に語りかけた。産まれてきてはだめ、ずっとそこに居て。それが叶う訳もないと知りながら。
無事に産まれたとしても、この子は自分と同じように慰み物になるだけだ。そして、彼らにはこの子を無事に産まれさせる気がないと、薄々勘付いてもいた。

——思い出したくもない。けれど忘れられることもなく、それはずっと頭の片隅にある。
腹を割かれ、産声ひとつあげずに取り上げられた我が子。真っ赤に濡れた小さな命。唇に押し込まれる肉の味。生臭く、鉄臭く。嫌悪感と拒絶が胃液と共に遡る、その味。その味だけが、ずっと舌の上にあるような気がする。

以来メリーラムは、物を食べても何の味わいも感じられなくなった。その記憶を上書きすることも叶わないままに、ずっと。

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「なるべく傷の残らないようにしてやってくれ」

医者らしい男が呆れたように肩をすくめる。彼は外科医ではあるが、美容にはとんと疎いらしい。頼む相手が違うだろ、と呟く彼は、積み上げられた札束に目の色を変えた。

「まあ、やれるだけやってみる。……ったく、とんだ誕生日だ。」

メリーラムの意識は、そこで一度途切れた。
微睡みながら、夢を見た。
店が潰れたこと。ろくに稼げなかったこと。どこかのヤクザ者たちの縄張りに入り込んでしまったこと。ひどい暴行を受けて稼ぎを持っていかれたこと。

今度こそ本当に死ぬのだと思った。あの時、我が子の一部を口にした時、メリーラムの心は死んだ。けれど身体は味覚を失っただけで、未だ図々しくも動き続けている。悲しいだけでは人は死なないのだと、メリーラムに突きつけるように。けれど、今度の今度は本当に、死ぬのだと思った。
あまり、怖いとは思わなかった。けれど、あの子の命を喰らっておいて、少しも長く生きられなかった。ぼんやりと、それが悔しいような気がした。

気づけば、ぐったりと横たわった重い身体を、誰かがじっと見下ろしていた。メリーラムがまだ息をしていると知り、彼は泥と血でぐしゃぐしゃの、殆ど死体のようなメリーラムを抱き上げた。高価そうなコートを脱いで、メリーラムの肌を優しく包んだ。冷たい雪の中、薄く曇った暗い光が、彼の白金色の髪を照らしていた。悼むように目を閉じた彼は、君を必ず助ける、と呟いた。

しんしんと白く眩しい夢。苦く甘く、馥郁とした香に包まれた夢。

——オルティは煙草を咥えて、何も理由を説明しなかった。
だから目を覚ましたメリーラムも、何も聞かなかった。この味気ない世界で生き直す理由など、メリーラムは求めなかった。ただほんの少しだけ、彼の力になりたいと思った、ような気がしたから。

白狼のロータス

Lotus the Managarmr

概要

クローバー貿易商会の執行部長。兼、会計、書記担当、兼、オルティの運転手、兼、お茶汲み、兼、……要するにオルティの右腕的存在。そのオルティとは、義兄弟の契りを結んだ間柄でもある。

プロフィール

血 族:トヲラス系鹿狼族
年 齢:39歳
誕生日:早春
身 長:188cm
体 格:やや肉づきのいい、筋肉質の体型
口 調:目上の人には敬語調。優しげ。

「オルティさん、そろそろコーヒーぐらい自分で淹れられるようになってくださいよ。」
「わかってんですよ! オルティさんはすごいの! そんなの俺がいっっちばんわかってんですよ!」

外見描写

健康的な浅黒い肌。くりくりした丸い目は陽の元で赤く輝く。人懐こく、笑顔が多い。人好きのする、表情豊かな童顔丸顔。
硬い髪質の白髪は、前後ろを短く切り揃え、揉み上げをやや長く伸ばしてある。
うっすらと脂肪の乗った筋肉はしっとりと厚く、本人曰く「気を遣っている」腹周りはベルトがややキツい。骨格からして太い恵体で、特に肩周りはがっしりとしている。オーダーメイドのシャツでなければ袖を通らないほど。
ドレスシャツ、ベスト、スラックスの装いが多いが、きっちりと着ていることは稀。お気に入りのハットはオルティと同じブランドの品。いつも尻ポケットに長財布を差して、ウォレットチェーンを垂らしている。が、これはオルティから下品だと咎められている。

性質

好き嫌いがはっきりしていて、露骨に顔に出る。良く言えば素直な性格。
嘘がつけないタイプだが、それが最善だと信じた時には、心を殺してでも嘘をつき通す芯の強さもある。明るくポジティブで、ヌケている所が目立つため、他人からは能天気な馬鹿だと思われがち。能天気はあながち外してもいない。
一途で一本気な人柄でもあり、一度従うと決めた主人を裏切ることはない。現在、その主人とはオルティであり、他の誰の下につく心算もない。
クローバー貿易商会のメンバーは彼にとっては家族も同然であり、命を賭しても守り抜くと心に決めている。

戦闘

基本的には徒手格闘。ストリート仕込みの喧嘩拳法で、体格を活かすパワータイプ。
かつては『サンドラの白狼』と呼ばれ狂犬として恐れられていたが、オルティの下についてからは牙が抜けたように大人しくなった。その事を揶揄して『眠り狼』と呼ぶ者もある。事実、激昂した時など、今でも白狼の地金を見せる事はある。白狼は死せず、ただ雌伏するのみ。

ストーリー

・オルティの右腕。控えめに花を添える存在。
・オルティが病を理由に隠遁した後、必死になってオルティの行方を捜したが、二度と会うことは出来なかった。
・クローバー貿易商会会長代理となり、死ぬまで頑なに代理と名乗り続けた。

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ロータスはアルスの娼婦街で、とあるトヲラス人娼婦の元に生まれた。
母は商売女ではあったが、息子を溺愛し、愛情と金をかけて育てた。そのため、ロータスは貧民街の出でありながらも、それなりの読み書きや算術を習得している。母とその周りの娼婦たちはロータスを皆で可愛がり、ロータスも彼女たちに懐いた。今でも女性の扱いがそれなりに上手いのは、彼女たちのおかげであろう。たっぷりと愛情をかけてもらったぶん、ロータスは愛情深く、義理に厚い男に成長した。

母が亡くなった後も、ロータスは娼婦街で用心棒の真似事をして暮らしていた。あるとき客から、本当にロータスを用心棒として雇いたいと申し出があった。それをきっかけに、彼は本格的に裏社会の人間として生活し始める。
ロータスは義理堅い男だ。だから、雇い主がロータスをどう扱っても、一度仕えると決めた以上は従った。理不尽だと感じることもあった。嫌な仕事を押し付けられることも。それでも必死に努力した。飼い犬がそうであるように、ロータスは主人に選ばれる側であり、主人を選ぶ側ではなかったから。やがて彼は、主人が拠点としていたサンドラ通りの名を借りて、サンドラの白狼と呼ばれるようになった。かの狂犬が控えていると聞けば、誰もが彼の主人に頭を下げた。彼はいい気にはならなかったが、二つ名を与えられる程度には、一端の仕事ができる男になったのだと感じていた。

だから、その青年が——若かりし、王となる以前のオルティ・クラヴィアドが乗り込んできた時も、馬鹿なのだろうと思った。自分はサンドラの白狼で、主人はそれを従えているのに。彼ら、クローバー貿易商会と主人の間で何の交渉が決裂したのかなど、ロータスは知りはしない。ただ命じられたまま、叩き潰せと言われたまま、犬のように戦った。

オルティは強く、何より諦めが悪かった。その碧い瞳は明確な目的を見据えていて、表情は確信に満ちていた。ロータスは動揺する。なぜ彼がそんな態度でいられるのかわからなかった。自分と対峙し、なぜまだ立っていられるのかわからなかった。血の混じった唾を吐き捨て、ロータスは彼をじっと見据えた。

「あんたの名前を聞きたい」

単なる質問ではない。サンドラの白狼、かの狂犬が、斃すべき相手に興味を抱いたのだ。
それはロータスが単なる犬に徹していられない、ひとりの人間であることを明白にした。人として向き合いたい相手と、遂に出会った瞬間だった。

Read More – ロータスの朝は早い

起きてすぐ、身支度を整える。
彼の主人であるオルティは身なりにうるさい。シャツに皺でもつけていれば、朝から小言を食らう羽目になる。
そのオルティに電話をしたら、彼を迎えに車を出す。無論、このとき車の中にファストフードの食べカスなどは一切残してはならない。一日中文句を言われる。何せこのバカみたいな改造を施されたクラシック・カーの所有者はオルティである。

オルティを事務所まで送り届け、彼のためにコーヒーを淹れる。それを少しもらって、次は朝市へ向かう。市場の見回りは、商会の仕事とロータスの趣味を兼ねている。つまり、やっと朝飯にありつける。

ロータスはこの光景が好きだ。
開いたばかりの市場はまだ静かだ。大きな獣がゆっくりと身を起こしているようで、まだ眠たげな顔もちらほらあって。人の生活、息吹を感じられる。悪ガキに見つかり、追いかけっこの相手をするのも楽しい。食堂で、老婆の話を聞くのも面白い。若い店主が、自慢の逸品を勧めてくれるのも嬉しい。その誰もが、ロータスを「ロータス」と呼んでくれる。

見回りを終えて、事務所へ戻る。その頃には続々と社員が出勤してくる。そのひとりひとりに挨拶をして、それぞれと言葉を交わす。彼らだって、誰もロータスを「サンドラの白狼」だなんて呼ばない。
書類仕事も苦ではないし、雑務だってやりがいがある。放っておくと昼飯を抜くオルティを連れ出して軽食を摂らせ、午後はまた外回りだ。そうしてロータスの一日は眩く過ぎる。

……夜、目をつけていた女性にオルティのことを話す。話しすぎる。「もうそのオルティって人と付き合えば!?」とビンタされ振られる。それも、ロータスの日常。ありふれた、人間の日常だ。

オルティ・クラヴィアド

Ortie Claviad

オルティ4
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概要

クローバー貿易商会、2代目会長。
情報屋として名高く、迅速かつ的確な仕事ぶりで知られるアルス裏社会の名士である。魔術師、あるいはクランの名から、四ツ葉の王と呼ばれる。

プロフィール

血 族:トヲラス系鹿狼族

年 齢:39歳

誕生日:晩秋
身 長:193cm
体 格:筋肉質、大きめ
口 調:知的ではっきりしている

「では、今後ともご贔屓に。」
「この国とトヲラスは、戦争をしたからな。だから、ここでトヲラス人が生きていくには、ただ敬虔に暮らすだけでは足りなかったんだ。」
「エヴァグリーン。俺にはお前が必要だ。」

外見描写

伽羅の如く艶やかな褐色の肌に、絢なる白金色の髪がふわりと降りる。柔らかな髪質の前髪をゆるく左右に分けている。後髪は短く、手入れの行き届いた様子。碧の瞳は花蜜に浸したように、その下弦だけが金色に染まっている。長く豊かな睫、真っ直ぐで凛々しい目鼻立ち、形良く、瑞々しい唇。眉や顎髭は整えられ、甘やかな顔立ちを引き締める役を果たしている。左の頬に向かい傷があり、それさえも彼の魅力を引き上げている。僅かに尖る耳には、小さな四ツ葉の耳飾りを供えている。
上品な仕立てのスリーピースはお作法通り。ハット、サングラス、ネクタイ、コート、革靴、手袋、どれを取っても一級の品であり、よく手入れされていることが一目で伺える。極め付けには甘く苦く、複雑な深みのある馨。全てが完璧で、静謐で、当たり前のようにそこにある。

性質

いつも和やかに笑っているが、眼光には怜悧さが宿る。常に組織の利益を優先し、それを最大にする方法を採ることができる。狡猾で計算高く、いざという時には残酷な選択肢さえ厭わない。
商人としても非常に手厳しく、柔らかい態度の傍ら、常に最善手を差し続ける。何ひとつ、誰ひとり信じていない。彼の微笑はそう語っている。
一方で、商会の仲間たちの前では明るく鷹揚に振る舞う。しっかりと全員に目を配り、よくそれぞれの働きを見ている。理想的な同僚、上司である。

戦闘

商会一かよわい男を自称している。
事実、彼は何ら超常的な力などは持たず、汚れることを嫌うために戦闘行為そのものを嫌う。
しかし、ひとたび敵に回せば情報戦、心理戦、経済戦といった机上の戦いに一通り苦しめられることだろう。策を弄するのは得意中の得意である。
ついでに殴り合いでもそれなりに強い。すぐに手榴弾を投げてくる。

ストーリー

・大国アルスに呑まれ、漂うことしかできないトヲラス人は大勢いる。「クローバー貿易商会」は、そんなトヲラス人たちに雇用を生み出し、食い扶持を与えるために有る。
・先代の四ツ葉であるトランが落命したことで、オルティはその王座を継いだ。以来、2代目会長として四ツ葉の屋台骨を支えている。
・自分を殺す命を帯びたエヴァグリーンに襲撃を受けたが、取引に持ち込み逆に彼を迎え入れた。以来、殺し屋とその標的は、奇妙な雇用関係を続けている。

Read More – オルティは、

——何ひとつ正解にできなかった。
オルティ・クラヴィアドはいつもそうだ。いつだって無力さに苛まれながら、血に濡れた手で不正解を拾い上げる。

彼の華やかな見た目は、いつも災いの元になった。誰しもが彼の容姿を褒めそやしたけれど、そこに居るオルティを見てはいなかった。三毛猫みたいだ、と彼は思う。偶々、珍しい色柄に生まれついただけ。それだけで、まるで特別な価値があるかのように扱われ、実際には何もないのだと知られては謗られる。それは屈辱であり、理不尽だった。

容姿だって。妹を喪った時だって。先代の四ツ葉を救えなかった時でさえも。オルティは、”正解”に流されてしまえば良かったのだろう。少なくとも、今よりは呼吸がしやすかったはずだ。そうして、平凡でありきたりな人生を過ごす道もあったはずだ。

それでも、オルティは蕁麻の帷子を編むことを望んだ。険しい道だと知っていながら、自分にはこれしかないのだと薄らと笑う。どうせ制限付きの命なのだから、有意義に使うべきだと嘯く。
それは、自嘲に他ならず。
理由にすら、なっていなかった。

Read More – タリーの死

彼の妹は殺された。
16歳になったばかりの頃だった。
他者からの暴力によって、ではない。妹、タリーは自ら命を絶った。そして、妹を追い詰めたのは、他ならぬ彼自身であった。

トヲラス人の有力な男は、妻を複数持つのが普通だ。だから、彼とタリーの血の繋がりは半分だけだ。彼の母は父の愛妾である第二夫人で、タリーの母が第一夫人であった。それでも、親の事情などどこ吹く風に、タリーは誰よりも彼に懐いた。彼もタリーを大切にして、目に入れても痛くないほどに可愛がった。

……タリーが暴漢に襲われた理由は、定かではなかった。
トヲラス人というだけかもしれない。偶然そこに居ただけなのかも。どのみち理由があろうがなかろうが、彼にとっては赦し得ぬ事だ。同じことだった。それでも、妹の命までは奪われなかったことを、彼らの女神に感謝した。
ところがタリーは、男性をひどく恐れるようになっていた。見ず知らずの者ばかりではなく、兄のことさえ怖がり、傍に寄らせようとしなかった。彼にとって妹の最後の印象は、自分を怖がって泣き喚き暴れる姿である。そして、その現実に最も深く傷ついたのは、彼ではなくタリー自身であった。
タリーは兄を慕い、家族として愛していた。自分でも制御できない心と体の違和感が、彼女には耐え難かったのだ。だから、彼女は”殺された”のだった。ただひとつ、彼女が必至で暴行相手からもぎ取った、IDカードだけを形見にして。

彼は家族と縁を切り、キャリアも何もかもを投げ捨て、裏社会に身を置いた。IDカードの持ち主を探すために。
そしてそれが、オルティという男の始まりでもあった。

Read More – 四ツ葉の王

クローバー貿易商会、通称四ツ葉。アルス王国の中にありながら、トヲラス人のために在る城砦。
オルティは、先代四ツ葉ことトランの死によって、その玉座に座った2代目だ。

トランは、オルティが商会に身を寄せた目的を、復讐であると知っていた。それを止めさせることはしなかったけれど、彼の危うさもよく理解していた。だから、四ツ葉をオルティに継がせたのは、彼の親心であったと言える。つまり、いざ復讐を果たしてしまった時にも、オルティに拠所があるように。帰るべき場所を与えるために。

オルティは、自身のそうした脆さや危うさにひどく無自覚だ。後先を考えていないのではない。後先まで理路整然と考えたうえで、自身のことは二の次にしている。それは、多くの人々にとって理解し難い事だろう。特にエヴァグリーンには理解できないことだった。エヴァグリーンには自分の生命、生活以上に大切なことなど無い。ましてや他人のために疲弊して、押し潰されそうになるなんて。愚か以外の何者でもない。

そんなもの、王の器などではない。王亡き後の玉座にて、王を演じるだけの道化でしかない。
こんなに何もかもが嘘ばかりの人間を、エヴァグリーンは果たして見たことがなかった。否、それは嘘ですらなかった。オルティが欺いているものがあるとするなら、それはオルティ自身だからだ。だから、丁寧に嘘を剥がした末に、オルティという人間はどこにもいない。ただ柔らかく、静かに呼吸するだけの誰かの横顔がそこにあるだけだった。

それを暴いてしまったからなのか、それとも別の理由か。ともかくエヴァグリーンはその傍らを、決して離れようとはしなかった。
それは、死が二人を分つまで。

ナム・ヴォルフガング

Nam Wolfgang

概要

今を生きている、かつての死にたがり。
軍人のメンタルケアを行う職にあり、日々くたびれた軍人達の話し相手をして過ごしている。かつては大戦で隊付きの衛生兵として働いていたが、その大戦で左目、左腕、右脚を喪ったことで、戦場には出られなくなった。
そもそもナムが戦場へ行ったのは、その場で命を捨ててしまうためだったのだ。死は衆生の救いであると信じていた彼に突きつけられたのは、冷たい銃口でも冴え冴えした切っ先でもない。人を生かし、救わんとする。それを信念とする男、シノノメ・ナダレとの出会い。それこそ、ナムの人生を大きく変えたものだった。

性格、気質

理知的ではあるが、ダウナーな思考の持ち主である。必要以上にネガティヴな感情を抱くことは無いものの、ポジティブに物事を考えることができない。とはいえ、彼を生かしているのは信念である。なんとなく、だとか、どうせ、だとか、そんな曖昧な理由で彼は生きていない。生きることにも、死に焦がれるのも、ナムにはちゃんと理由がある。

好きなもの、嫌いなもの

嗜好品は酒より煙草を好み、甘いものよりは辛いものを好む。趣味らしい趣味もないが、人の話、人生の物語を聞く事は好きで、ある意味では仕事が趣味と言える。

昔はそれほど好まなかったが、大戦を経たナムは本を読むことが好きになった。読書は片手でも出来る、という事が何より大きい。

戦闘

大戦の折に交戦経験がある程度で、戦闘訓練等は特に受けていない。そもそもそのような状況に陥ったとして、ナムは生きていくために戦うという事がないだろう。

価値観、死生観など

死は安寧であり、救いである。生きるという事は地獄の淵を泳ぐようなもので、基本的には苦痛だ。より良く生きようとしなければ、より良く生きられる事はない。——これらの考え方はナムの中で非常に強固であり、幼い頃から強く実感していることでもある。
死がおそろしいと思った事は無いが、生きていくのがおそろしいと思った事はある。ではなぜ、もっと早くにひとりでにさっぱりと死んでしまわないのだろう。ナムは未だ、その答えを見つけられていない。ただ今は、自分が生きている事で救われる人がいるのだから、生きても死んでも変わりないなら、その人の為に生きようと思っているだけにすぎない。

生まれ

平凡な家庭に生まれたナムだが、物心つくより以前から母親共々、父親からの暴力に晒されてきた。母親は常に父親の暴力からナムを庇い、ナムを守ろうとした。泣いたり反抗したりすればするほど、父親の暴行は激化したため、ナムも母親も、ただじっと耐える事しか出来なかった。それでも殴られ、蹴られ、物を投げられ、ナムは母親が啜り泣きながら犯されているさまを目の前に見せつけられてきた。
それが日常と化して、長い時間が過ぎたある日。スクールから帰った少年ナムが見たのは、風呂場で手首を切って絶命している母親だった。降り注ぐシャワーの音が雨音のように甘かった。湯気は雲のように柔らかかった。数多の傷や火傷や痣を抱えていても、眠るように目を閉じた母は美しかった。微笑んでさえいた。ナムは死によって、母親が救われた事を理解した。
母親の死をきっかけに、父親が母子に施してきた暴力が明らかになった。ナムは保護され、父親と引き離された。しかしナムには、最早何の救いも必要が無かった。——人はいずれ皆死ぬ≪救われる≫のだから。

家族、対人関係

・ナダレ
元同僚で、親友で、恩人ではあるが、今は疎遠にしている。ナダレとの間柄は一言では割り切れない。平たく言えば、生きる理由1号である。

・アリエル
記憶を失った彼女に、最初は主治医というか、話し相手として接していた。今は生きる理由2号となった。

・ダレン
上司。お互いナダレの知己ではあるが、ナムとしては業務以上に関わった事は無い。

プロフィール

血 族:鹿狼系混血
年 齢:39歳
誕生日:早秋
身 長:180cmちょい
体 格:やや細いが健康的
口 調:ダウナーで斜に構えている

「死んだところで誰も気に留めやしない。なら、生きていたって誰も気に留めやしない。けど、生きてくれ、って奴はいる。なあ、それだけじゃ不満か?」
「はあ、まぁ、それがお前のしたい事ってんなら、俺が断る理由はないんだが……なぁ。あんまり人の事、困らせんなよ。」

ストーリー

・ナダレとは戦場で出会った。左眼と左腕と右脚を機関銃に撃ち抜かれたナムを、ナダレは何とか救い上げたが、ナム以外の誰も救えなかった。

・ナムは一命を取り留めたが、ナダレは精神を病み、薬に手を出してしまう。不本意とはいえ、死にものぐるいで自分を助けてくれたナダレに多少の感心を覚えたナムだったが、薬の事を知って激昂する。

・人を生かしておいて、自分は緩慢に死のうとするナダレの事が許せなかったが、ナダレの苦悩も分からないでは無かった。腹いせに死んでやろうかとも思ったが、おそらくナダレは再起不能になるだろう。それを思えば、ナムには生きる理由が出来てしまった。

・ナダレにナムの面倒見を頼まれたダレンは、ナムを本部のメンタルケア担当に据える。

・アリエルが鹵獲され、ナムの担当になる。

・アリエルの記憶を取り戻す旅に付き合い、彼女を見守り続けた。

・結局、ナムには死ぬ理由よりも生きる理由のほうが重くなってしまった。だらだらと悪態をついては長生きしてしまい、結局、一人娘に見守られながら穏やかに死を迎えたのは90歳を少し超えた頃のことだった。