ナダレ

Shinonome Nadare

概要

アルス王国には13の行政区が存在し、それぞれが独立した法や条例を制定し、将軍家によって統治されている。しかしながら、13番目の区においては、その統治者たる将軍家が存在しない。故に13区は無法地帯、アルス中のありとあらゆる問題が集約する魔窟となった。
ナダレはその13区で、無免許の外科医として生計を立てている。腕は天才的に確かで、わざわざ彼を頼ってくる者もいるほどだ。そして、ナダレが患者に求めるものはひとつ——金だ。
無法地帯といえど法外な診療費をふっかけ、払えないのなら死ねと脅し、『売り上げ』は全て麻薬と酒に変える毎日。ナダレの人生は遅かれ早かれ詰んでいた。人生の転落コースを真っ逆さまに滑落する、ルーチンワークの無間地獄。それが彼の全てだと言うなら、確かにかの天使は、ナダレを殺しにきた死神だったのだろう。

性格、気質

根は真面目の筈なのだが、今の生活に陥ってからは大雑把で自堕落で、適当な毎日を過ごしている。ナダレは、死ぬのも怖いが生きるのも怖いのだ。そのために毎日、緩慢な自殺を試みている。このままではいけないと思いながら、つい薬に、酒に震える手が伸びる。患者から金をふんだくるのは、その購入費用に当てる為だ。端的に言えば、ナダレは人間のクズだった。
クズにはクズなりのプライドがある。すなわち、金を払いさえすれば、彼は患者に真摯な対応をする。丁寧に治療を施し、優しい言葉で送り出してやることもある。それはもしかすれば、生来の真面目さ、誠実さから来ているものかもしれない。

好きなもの、嫌いなもの

ヘロインとジャックダニエルがあれば緩やかに死んでいける。常に何かに怯えているような素振りで、安心毛布を探し続けている。離脱症状の苦しみがどれだけ地獄の様だと分かっていても、ナダレは都度、薬に手を出しては病み苦しみ、薬を捨ててはそのことを後悔する。何より嫌いなのは、そんな馬鹿馬鹿しいことを繰り返す己自身なのだろう。
その他、ポップカルチャーやテレビゲームの類を好み楽しむこともある。それらの趣味は中毒に苦しんでいない時に限る。

戦闘

一切不得手。
闇医者稼業に落ち着く前は、国家の軍人、軍医として大戦に参加していた。握った銃の引き金を引く事も出来ず、戦場の悲惨さに狂いきることも出来ず、中途半端に生き延びてしまった。

価値観、死生観など

かつてはそれなりの倫理観を持って世界と向き合っていたのだろうが、今の彼は支離滅裂で無茶苦茶だ。守るべきだった価値観を失い、場当たり的に生きている。
死んでいるものを治療することはできないため、死人に敬意を払うことはない。精々、使えそうな臓器をいくつか選んで、然るべき業者に降ろす程度だ。

生まれ

ナダレは娼婦の母親が、当時愛していた男を引き留めるために産み落とされた。男のほうは母親に情など無く、ナダレはその用を果たせなかった。殺されるところだったが、頭のおかしいお客が、どうせ処分するなら玩具にさせろと言うので、金になるのであればと生かされる。生後数年を経て店が摘発され、ナダレは保護される形で、すんでのところで命を拾う事となった。
彼の養父となったシノノメ・カノトは実業家であった。生まれつきの病で子を成す事ができないカノトはナダレを引き取り、我が子の様に育て、真っ当な教育を受けさせた。カノトもナダレと同じ様に親を持たない子どもであった。「いつか同じ様に困っている子どもが居たら、同じ様に助けてやりなさい」とはカノトの養父の言であり、カノトはそれに従ったのだ。
カノトに報いるために医師を志したナダレだったが、卒業を控えた頃に大戦が激化し、軍医として徴用される。戦場での出来事をナダレは語りたがらないが、後に親友となるナムとの出会い以外の全てが地獄であったことは確かだろう。更にカノトの訃報である。生来、真面目な性格であったナダレには、それらの全てが、到底耐えられる事では無かった。以来、ナダレは生きながらゆっくりと死に続けている。

家族、対人関係

・カノト
育ての親であり、幼かったナダレにとっては世界の全てだった。カノトを救えなかったことは、今も彼の心に鋭く刺さっている。

・オルティ、ダレン
ハイスクール時代の同級生、悪友たち。現在はお互いに利用し合うような関係だが、ナダレは彼らの事を信頼している。

・ナム
戦場で出会った、当時の隊付き衛生兵。死にたがりの青年だったナムを無理やり生かしてしまった事を負い目に感じている。

・ノエル
閉じていた世界をめちゃくちゃにブチ割ってくれた、彼の天使。ノエルが居なければそのまま終わっていた。あの時生まれ直せたのだから、ノエルの助けになれるなら死んでも良いのだ。

プロフィール

血 族:鹿狼族
年 齢:39歳
誕生日:12月25日
身 長:197cm
体 格:長身で痩せぎす
口 調:雑で大雑把、やる気がない

「金がねェ奴ってのは、死体と一緒なんだよ。そのはした金で棺桶でもこさえるんだな。」
「ああなったら終いだ。俺は色んなクズの患者ってのを診てきたが、臆病風に吹かれたやつはもう二度と顔見せやしない。俺は心まで治してやれない。お前らはそうなるなよ。」
「ノエルは俺のご主人様なので……あ、いえ、間違えました! ウルトラかわいいノエルちゃんさま! が私めのご主人様でございますです、ハイ……」

軍医時代、現状、2年後、別次元(王政版)、別次元(神眼)

ストーリー

・自堕落な生活を送っていたところに、突然ノエルが現れ殺されかかる。命乞いの結果生かしてもらうに至るが、代償としてノエルの家畜になった。

・ノエルと過ごすうちに、ノエルに対して特別な感情を抱くようになる。それは恋心というには重過ぎて、愛と呼ぶには汚れ過ぎていたが、ナダレの全てを変えたことは確かだった。

・猟竜の崩壊に伴い、ノエルはナダレの前から姿を消した。以来ナダレは、2年がかりで薬物中毒とアルコール中毒を治療し、ノエルを探すために放浪を始める。

・放浪の末、ノエルがとある研究所に捕縛されていることを知ったナダレは、決死の覚悟で救出に向かう。

・無論の事、ナダレはその目的を達成出来なかった。鉛玉を何発も浴びせられ、容易く膝を折られ、それでも、這いずってでも前を向く。その姿を、ノエルは確かに目視した。

・会話は無い。半壊した研究所の片隅で、重なるように、ただ眠るように眼を閉じる。それだけの終わりだったが、確かにそこには、息づくものがあった。

ノエル・ザ・ハイドラ

Noelle the Hydra

概要

竜種の殺し屋で構成された秘密組織、”猟竜”の存在は、実しやかに囁かれてはいるものの、噂に過ぎない。いくら人身を超えた力を持つ竜種だからといって、否、だからこそ、誰かが従えて殺し屋に仕立て上げるだなんて、荒唐無稽だ、ありえない——。
そうとも、その通り。想像力の欠如した、愚かで愛しい人類種。さっぱりと吹き飛ばした、人だった肉片の上に立ち、ノエルは悪戯っぽく瞳を釣り上げる。”猟竜”いちの殺し屋との呼び声高い、少女とも、少年ともつかない独特の雰囲気を感じさせる竜種。可憐に逞しく、高いヒールのブーツで血溜まりを踏み凛と立つ。

性格、気質

無邪気で愛らしく、冷酷で無慈悲。竜種の考え方は人のそれと異なるとはいえ、ノエルはあまりにも可愛らしく惨たらしい。生殺与奪の全てにおよそ躊躇というものがなく、人を殺した傍で人を生かしもするが、ノエルにとってそこに明確な基準などない。自らの興味の赴くままに選択する。強いて言うなら、ノエルの気分、というアトランダムで制御不能な判断基準に基づいているのだ。しかしながらノエルの行いは、殆どの場合、年相応の少年少女らしい振る舞いといえる。その全てに竜種の無茶苦茶な倫理観や、馬鹿馬鹿しいほどの身体能力が加味されているにすぎない。
竜種らしいといえばらしいのか、気に入った相手には目をかける。誰かを可愛がり側に置くこともあるが、ふと気づけば殺しているかもしれない。そしてそれを悔やむということもない。ノエル・ザ・ハイドラは130%気紛れでできている。

好きなもの、嫌いなもの

派手好きで暴れることが大好きで、大人しくしていることができない。上席の言いつけは守るが、他人に命令されることは嫌いで、意趣返しをするように命のかかった悪戯を敢行する。
他人に命令されること、ひいては他人に定義されることを好まない。自分は自分であり、竜種だとか、オスだとかメスだとか、そんな事はどうでもいいと思っている。それを決め付けられたりすることは不愉快で、まず間違いなく殺意を抱き、そのまま実行する。
食べ物はドーナツをこよなく愛しているが、その由来は不明。きいろいつぶつぶがついてるチョコ味のがすき。

戦闘

大抵の場合、手を抜いている。手を抜き、力を抜き、武装の油圧式パイルバンカーを片手に、派手に血飛沫を散らせて、楽にたくさんたっぷり殺す。ノエルにとって殺しは仕事なのだから、質よりも量を優先する。
実力は相当なものであるため、ノエルが本気を見せることは滅多にない。パイルバンカーを投げ捨てた時は本気のサイン。重い武装を捨て、圧倒的な速度と攻撃力を発揮する。

価値観、死生観など

ノエル本人にとって楽しいこと、面白いことを重要視する。それが社会的な規範や道徳を外れるものであったとしても、ノエルは一切気に留めない。当然のように殺し、当然のように楽しみ、相手や周囲がそれをどう思うか、なんてちっとも関係ない。ノエルは生きる事を全力で楽しんでいる。死ぬ時のことなんか考えたこともない。自分が死ぬとしたら、走りきった先で燃え尽きるように死ぬのだろうから、それで構わないのだ。

生まれ

猟竜の長、ロゥベルの血を分けて造られた人工竜種であり、母親はそもそも無く、試験官から研究室へ生まれてきた。ノエルはそれを特別な事とか、不幸な事とか、そうは思っていない。周りにいる竜種はみんなそうだ、卵の殻の代わりに、ガラスに包まれて生まれてきただけ。それは事実であり、過去であり、今のノエル自身になんの関わりもない事だろう。
ロゥベルには目をかけられていたが、だからといって愛情を注がれたわけではない。ほかの人工竜種と同じように扱われ、同じように戦闘訓練を施され、研究素材として育ってきた。その事にも不満はない。世界は決まりきっていて、単調で、退屈でつまらないものだと知っていたのだ。
だから、ナダレとの出会いがノエルの何かを変えるなんてことはちっともなかった。何もない出会いだった。何もなかったからこそ、それがノエルには嬉しかったのだ。

家族、対人関係

・ナダレ
家畜。家畜なので、充分可愛がって大事にしている。気が向いたら屠殺する予定らしい。

・ロゥベル
血縁上では父親に当たるが、別に何とも思っていない。反抗してみようと思ったことも、敬おうと思ったこともない。

・グリム
妹のような存在(血縁上は実際に妹に当たる)。何のかんのと世話を焼いている。

・リップ
嫌うほどでもないが、鬱陶しいので相手にしていない。

・キャロル
生真面目なキャロルと、無邪気で気まぐれなノエルは全く反りが合わない。互いに距離を置いている節がある。

・アリエル
これといった思い入れがない。てか二刀流ってグリムとキャラ被ってない?

プロフィール

血 族:竜種
年 齢:13歳
誕生日:12月25日
身 長:150cm前後
体 格:やや小柄で、少女らしい
口 調:無邪気

「すごい、命乞いのお手本みたい! 感動しちゃった!」
「へぇ、ボクと戦う気なんだ。いいよ、片手間に相手してあげる。カップ焼きそばとは言わないからさ、カップラーメン程度は持たせてよね。」
「本当にね、嬉しかったんだよ。ナダレさんが来てくれてさあ、嘘みたい、夢みたいって思ったんだ。……それだけで、ボクには充分だ。ありがとう、————………。」

ストーリー

・猟竜の一員として標的を追い詰めた先で、偶然にもナダレに現場を目撃される。ノエルは彼の命乞いをいたく気に入り、家畜と呼び可愛がることにした。

・猟竜の崩壊に伴い、妹のような存在であったグリムを喪う。ノエルは自身の為すべき事を考え、ナダレの前から姿を消した。

・傭兵稼業で身を立てながら、竜種の持つ特別な力が人類種に悪用されないための方策を練っていた。

・猟竜の残党、主に竜種の力を手に入れようとする者たちに捕えられ、実験体にされる。いかにノエルといえ、竜種の力を抑えられてしまえば、戦う力はあれどそこらの少年少女と大差がなく、脱出はことごとく失敗に終わった。

・諦めかけていたところへ、不意にナダレが救援に現れる。敢え無く討ち取られるナダレを愛おしいと思いこそすれ、哀れだとは思わなかった。故に、ノエルは魂を賭けて闘った。

・それは当然の敗北、当然の結末と言えた。しかしノエルは思いのほか、その結果に満足していた。既に息の絶えたナダレの頬を、髪を優しく撫で、ノエルは微笑み、微睡む。——ありがとう、ナダレさん。

ヘーゼリッヒ

Gezellig

概要

まさしく、怠惰という言葉が服を着て歩いているような男。面倒を嫌うことは勿論、面倒を嫌うことさえ憂う。1日を一切動かずに過ごすなんて事は、彼にとってありふれたことだ。無論、身嗜み等には一切気を配らない。数少ない友人であるナダレはヘーゼリッヒを「肥溜めに浸した雑巾で牛乳拭いた匂い」「俺が麻薬犬でもヘーゼルのことは嗅がない」「ぶっちゃけ側に寄るのは苦行」等と評したことがある。

怠惰で怠慢でありながら、ヘーゼリッヒは彼の唯一の楽しみのためにどっこい何とか生きてきた。その楽しみというのは、つまり『死体』だ。これまで動いていたものが、何故だか動くのをやめてしまう。その奇妙なメカニズムに心惹かれ(というか、それ以外の事には一切心惹かれず)、ヘーゼリッヒは検死を生業とした。だがそこで問題が起きた——ヘーゼリッヒは死体(だけ)に欲情する男だったのだ。お楽しみのところを敢え無く発見されて失職し、現在は闇医者の端くれとして生活している。

性格、気質

極めつきの怠惰であり、生活習慣を改善する気など一切ない。たとえ髪がベタつき、フケだかなんだかよくわからないものを撒き散らしていても、歯がボロボロ抜け落ちていても、全く興味を抱かないし、他人がそんなことを気にする意味がわからない。(生きた)他人への興味は無いに等しい。

好きなもの、嫌いなもの

ヘーゼリッヒは怠惰を好んでいるが、勤勉を嫌ってはいない。己の興味や好奇心に対しては素直に向き合い、知識欲を満たすこともする。監察医として勤務できていたことはその実績とも言えよう。
死体を愛し、その秘密を暴くことを愛するヘーゼリッヒだが、ゾンビ映画等は嫌っている。動いたら死体じゃないじゃん……。

食べ物はゼリーがすき。飲めるから。

戦闘

戦力にはならないが、殺す価値がありそうだと思われることもないため、まず標的にならない。

価値観、死生観など

死は甘美な秘密であり、これまで動いていたものが突然に動きを止めるという謎を解き明かしたいと考えている。そのため、死因のはっきりした死体には興味を持たず、自ら殺すということもない。ヘーゼリッヒが愛しているのは死体という物質ではない。推理小説を愛しているのではなく、その書に記された謎そのものを愛している。でなければ、生来の無精を差し置いてまで働き、生きている意味がない。ヘーゼリッヒは正しく知の奴隷である。

生まれ

ごく一般的な中流家庭にて育ったため、何がきっかけでこうなったのかはよくわからないが、大抵の性癖はそういうものだ。

家族、対人関係

実家とは事件の折から疎遠である。 そもそも興味がなかったため、彼自身には縁を切られたという実感さえない。

・ナダレ
同業者で友人。なんやかんや面倒見が良いナダレは偶に訪ねてくることがあるが、ヘーゼルは一度もそれを真っ当に歓待したことはない。

プロフィール

血 族:緋人族
年 齢:30代
誕生日:不明
身 長:170cm程度
体 格:小柄で痩せている
口 調:殆ど喋らず、口を開けば気だるげ
「生きた人間に興味はないんだよ、帰ってくれないかい?」
「よくぞ聞いてくれました! ……いややっぱ察してくれない? 察しろ」

ストーリー

・ストーリー上重要なキャラクターとは言えず、目立った活躍もない。しかし、彼を友人として尋ねることは、ナダレの正気の部分を保つことに貢献しているだろう。

ナム・ヴォルフガング

Nam Wolfgang

概要

今を生きている、かつての死にたがり。
軍人のメンタルケアを行う職にあり、日々くたびれた軍人達の話し相手をして過ごしている。かつては大戦で隊付きの衛生兵として働いていたが、その大戦で左目、左腕、右脚を喪ったことで、戦場には出られなくなった。
そもそもナムが戦場へ行ったのは、その場で命を捨ててしまうためだったのだ。死は衆生の救いであると信じていた彼に突きつけられたのは、冷たい銃口でも冴え冴えした切っ先でもない。人を生かし、救わんとする。それを信念とする男、シノノメ・ナダレとの出会い。それこそ、ナムの人生を大きく変えたものだった。

性格、気質

理知的ではあるが、ダウナーな思考の持ち主である。必要以上にネガティヴな感情を抱くことは無いものの、ポジティブに物事を考えることができない。とはいえ、彼を生かしているのは信念である。なんとなく、だとか、どうせ、だとか、そんな曖昧な理由で彼は生きていない。生きることにも、死に焦がれるのも、ナムにはちゃんと理由がある。

好きなもの、嫌いなもの

嗜好品は酒より煙草を好み、甘いものよりは辛いものを好む。趣味らしい趣味もないが、人の話、人生の物語を聞く事は好きで、ある意味では仕事が趣味と言える。

昔はそれほど好まなかったが、大戦を経たナムは本を読むことが好きになった。読書は片手でも出来る、という事が何より大きい。

戦闘

大戦の折に交戦経験がある程度で、戦闘訓練等は特に受けていない。そもそもそのような状況に陥ったとして、ナムは生きていくために戦うという事がないだろう。

価値観、死生観など

死は安寧であり、救いである。生きるという事は地獄の淵を泳ぐようなもので、基本的には苦痛だ。より良く生きようとしなければ、より良く生きられる事はない。——これらの考え方はナムの中で非常に強固であり、幼い頃から強く実感していることでもある。
死がおそろしいと思った事は無いが、生きていくのがおそろしいと思った事はある。ではなぜ、もっと早くにひとりでにさっぱりと死んでしまわないのだろう。ナムは未だ、その答えを見つけられていない。ただ今は、自分が生きている事で救われる人がいるのだから、生きても死んでも変わりないなら、その人の為に生きようと思っているだけにすぎない。

生まれ

平凡な家庭に生まれたナムだが、物心つくより以前から母親共々、父親からの暴力に晒されてきた。母親は常に父親の暴力からナムを庇い、ナムを守ろうとした。泣いたり反抗したりすればするほど、父親の暴行は激化したため、ナムも母親も、ただじっと耐える事しか出来なかった。それでも殴られ、蹴られ、物を投げられ、ナムは母親が啜り泣きながら犯されているさまを目の前に見せつけられてきた。
それが日常と化して、長い時間が過ぎたある日。スクールから帰った少年ナムが見たのは、風呂場で手首を切って絶命している母親だった。降り注ぐシャワーの音が雨音のように甘かった。湯気は雲のように柔らかかった。数多の傷や火傷や痣を抱えていても、眠るように目を閉じた母は美しかった。微笑んでさえいた。ナムは死によって、母親が救われた事を理解した。
母親の死をきっかけに、父親が母子に施してきた暴力が明らかになった。ナムは保護され、父親と引き離された。しかしナムには、最早何の救いも必要が無かった。——人はいずれ皆死ぬ≪救われる≫のだから。

家族、対人関係

・ナダレ
元同僚で、親友で、恩人ではあるが、今は疎遠にしている。ナダレとの間柄は一言では割り切れない。平たく言えば、生きる理由1号である。

・アリエル
記憶を失った彼女に、最初は主治医というか、話し相手として接していた。今は生きる理由2号となった。

・ダレン
上司。お互いナダレの知己ではあるが、ナムとしては業務以上に関わった事は無い。

プロフィール

血 族:鹿狼系混血
年 齢:39歳
誕生日:早秋
身 長:180cmちょい
体 格:やや細いが健康的
口 調:ダウナーで斜に構えている

「死んだところで誰も気に留めやしない。なら、生きていたって誰も気に留めやしない。けど、生きてくれ、って奴はいる。なあ、それだけじゃ不満か?」
「はあ、まぁ、それがお前のしたい事ってんなら、俺が断る理由はないんだが……なぁ。あんまり人の事、困らせんなよ。」

ストーリー

・ナダレとは戦場で出会った。左眼と左腕と右脚を機関銃に撃ち抜かれたナムを、ナダレは何とか救い上げたが、ナム以外の誰も救えなかった。

・ナムは一命を取り留めたが、ナダレは精神を病み、薬に手を出してしまう。不本意とはいえ、死にものぐるいで自分を助けてくれたナダレに多少の感心を覚えたナムだったが、薬の事を知って激昂する。

・人を生かしておいて、自分は緩慢に死のうとするナダレの事が許せなかったが、ナダレの苦悩も分からないでは無かった。腹いせに死んでやろうかとも思ったが、おそらくナダレは再起不能になるだろう。それを思えば、ナムには生きる理由が出来てしまった。

・ナダレにナムの面倒見を頼まれたダレンは、ナムを本部のメンタルケア担当に据える。

・アリエルが鹵獲され、ナムの担当になる。

・アリエルの記憶を取り戻す旅に付き合い、彼女を見守り続けた。

・結局、ナムには死ぬ理由よりも生きる理由のほうが重くなってしまった。だらだらと悪態をついては長生きしてしまい、結局、一人娘に見守られながら穏やかに死を迎えたのは90歳を少し超えた頃のことだった。

カマロ・アルヴァルソン・ルカヤルヴィ

Camaro Alfarsson Rukajärvi

概要

竜種の青年。聴覚が非常に過敏で、音から色や形、情景を感じ取る共感覚を持っている。聴力を抑えるために薬を処方されている程で、足音や心音を感じて、それが誰のものか当てることもできる。小さなライブハウスでギターを弾いている。
エヴァグリーンとは同僚であり、同族でもあるが、性格は似ても似つかない。カマロは温厚で穏やかで、人懐こい笑顔を浮かべていることがほとんどだ。しかし時たまに見せるミステリアスな表情や、拍子抜けするほど冷淡な言葉は、彼が確かに人外のものであると感じさせるに足る。

実態は竜種の中でもほぼ最高位に位置する『魔竜王』、その魂を受け継ぐ者。魔竜王の魂は2つに切り分けられ、永い封印の眠りに就いていたが、ある事件をきっかけに解放される。この時解放された魂の半身、その現身がカマロである。
本人にはその自覚は無く、また、自覚したからといってどうなるものでもない。彼は魔竜王ではなく、あくまでも現身――リンゴ農家の息子で、ギターが上手くて、泣いたり笑ったり人を殺したりするだけの存在なのだから。

性格、気質

何を考えているのかわからない、とは周囲の弁だが、本人は気にしていない。見ようによっては愚昧とも取れるが、単純に裏表のない性格をしているだけで、基本的には無害である。竜種の例に漏れず、彼もまた同様に愛情深い側面を持つ。そして、カマロの場合、その愛情は現在のところ主にエヴァグリーンへ注がれている。

好きなもの、嫌いなもの

リンゴ農家の息子で、好物もリンゴ。リンゴだけで生活できると言い張る。体重もリンゴ3個ぶん。得意料理はアップルパイ。
リンゴを好きになったのは、小さいころに食中毒にあたり、その時に唯一食べられたものだから。そしてそれ以来、肉や魚、特に生モノはあまり食べなくなった。
また、出身地が寒冷地のため、竜種にしては珍しく、寒さに強い。 冬は好きだが、逆に夏は嫌い。日焼けをするとすぐに皮膚が赤くなってしまうので、日焼け止めが手放せなくなる。
耳が良すぎるため、騒音や人の多いところはあまり好まない。苦手だというよりは、頭痛や吐き気を催すため、どうしても近寄りがたい。

戦闘

竜種なりの筋力や力強さはあるが、戦闘事はあまり得意ではない。
ギターを弾いて味方を鼓舞したり、相手の動きを鈍らせることができる。

価値観、死生観など

カマロの価値観や死生観を理解するのは難しい。彼は決して、生を憎んではいない。しかし、死を嫌悪することもない。人を殺すことに躊躇しないが、道端の猫の轢死体を埋めてやることはする。カマロにとって、それらは相反することではなく、ひとつにつながっている。生命の先に死体を見、死体の先に生命を見る。彼には、生も死も同じことのように感じられているのかもしれない。
しかし推しの死には弱い。

生まれ

魔竜王の魂の現身である彼には、親がいたのかいないのかさえ分からない。リンゴ農家の両親はあくまで育ての親であり、里親である。彼は児童保護施設から両親に引き取られ育てられた。両親は人類種であるため、カマロはそのことを物心ついたときから知っていた。両親は愛情を注ぎカマロを育てたので、カマロも彼らのことを愛していた。なお、姉ジュリエッタは両親の実子である。

家族、対人関係

・義両親
関係は良好で、両親はカマロのやりたいことを常に尊重していた。彼が自立しても、両親の彼に対する姿勢はあまり変わっていない。

・ジュリエッタ
愛する姉であり、カマロにとっては初めての恋人、想い人でもある。彼女を守るために、カマロはある事件を引き起こした。

・エヴァグリーン
彼に惹かれる理由はいまいちよくわかっていない。ただ、漠然と傍に居なければならない気がしている。

プロフィール

血 族:竜種
年 齢:21歳
誕生日:5月中旬
身 長:183cm
体 格:細長い
口 調:やわらかく人懐こい

「エヴァでしょ。足音ですぐ分かったよ。」
「俺は別に、そんな大層なこと考えてないよ。大事なことは自分で決めたいって思ってるだけだ。人を殺すとかってことも、人任せにしたくないってだけ。」
「ごめんね、それでも俺は君を生かすよ。君を殺してでも君を生かす。たとえ世界中を、君でさえ敵に回したとしても。」

ストーリー

・ハイスクール生のころ、ジュリエッタと体の関係を持った。酔いつぶれたジュリエッタからカマロを誘ったのだが、カマロにとってそれは願ってもないことだった。

・何度も体を重ね、お互いに愛し合っていたが、あるとき暴漢に襲われたジュリエッタを助けるため、カマロはその暴漢を殴り殺してしまう。

・竜種の犯罪対策が強化される時世であったこともあり、カマロのしたことは正当防衛とはいえ過剰であると判断された。懲役刑を受けることになったカマロはジュリエッタと引き離される結果となった。

・出所後、義両親、姉ともにカマロを暖かく出迎えてくれたが、カマロは姉の胎に宿っていたはずの命が失われていることに気が付く。そのことを悲しみはしたものの、姉を恨むことはなかった。

・その後は地元の軽犯罪グループに所属したり、バンド活動をしたりで何となく過ごしていたとき、エヴァグリーンと出会う。エヴァグリーンにとっては初めての同族の友人であり、カマロ自身の人懐こさもあり、距離は簡単に縮まった。

・エヴァグリーンがカマロの元を去った後は両親の許へ戻り、リンゴ農園の手伝いをして暮らしていた。その後エヴァグリーンが連れて戻って来た、ネイディーンを二人で育てることとなる。

・重傷を負い、死に体だったエヴァグリーンを魔竜王の権能で吸収した。その姿がスノウメルトである。

エルドラド・ドゥ・ナスタヤーシャ・ヴィア・アマデウス3世

El-Drad du Nastoyashcia via Amadeus Third

概要

この世には2種類の人間がいる。金を使う者と、金に使われる者だ。しかし、彼はそのいずれでも無い。投資家エルドラド・ドゥ・ナスタヤーシャ・ヴィア・アマデウス3世。アマデウス家の3代目にして生まれついての大金持ち、おおよそ金に不自由などした事がなく、ゆえにこの世の全てに不自由した事がなく、金を使いも、金に使われもしない。

道楽的に楽観的に毎日を過ごしていたエルドラドは、ある日誘われたパーティで運命の人に出会った。美しく精悍な顔立ち、白金にきらきらと輝く髪、宝石のような碧い瞳。立ちのぼる色香に誘われるように、エルドラドは懐から小切手を取り出した。
「ペットになってくれないか?」
信じ難く度し難いその台詞を聞いたその運命の人——オルティ・クラヴィアドは驚きと怒りに唇を震わせ、限りなく低い地の底のような声で「嫌です」とだけ返した。
以後、エルドラドはオルティとの(腐れ)縁から(半ば強引に)クローバー貿易商会の(クソ)顧客となり、どうでもいい株価なぞを聞きに商会を訪れるようになったのであった。

性格、気質

朗らかで明るく、楽しく遊ぶことが好き。金に不自由もなければ、糸目をつける必要もないため、ポンポンと気前よく金を払い、豪快に豪放に遊びまくる。

——というのは表向きの顔であり、その性癖は捻じ曲がり歪み果てている。彼は己に好意を向けられる者に興味を抱かない。むしろ彼を拒絶し、嫌い、憎む者にこそ興味を惹かれ、好奇心を刺激され、股間を膨らませるのである。目下のところ、彼のその嗜好はオルティに向けられている。

好きなもの、嫌いなもの

オルティがエルドラドを嫌えば嫌うほど、エルドラドはオルティを愛し追い詰める。そうしてさらにオルティがエルドラドを嫌えば、ますますエルドラドはオルティを愛して可愛がる。それが本当に愛であるかどうか、そんなことにエルドラドは興味を持っていない。大切な事は、その獣がエルドラドを憎み、忌み嫌っているということだけだ。

エルドラドは愛してくれる誰かに対しては全く興味を持たないが、興味を持たないだけで嫌いはしない。嫌いなものといっても金でなんとかしてしまうため、特に悪感情を抱くということもない。面倒になれば金。これですべて解決なのだ。

戦闘

金の力で解決する。本人が直接戦うということは無いが、湯水のように金を突っ込んでくるので正面切って戦うのは非常に危険である。もちろん、金だけで誰かを黙らせるとか再起不能に追い込むとか、そういうことも大得意だ。

価値観、死生観など

エルドラドにとって、金に勝る価値を有したものはない。であるから、それを拒絶するのは彼の感性では考えられないことだ。もちろん他人の命も金で買えるので、命が金より重いと思ったこともない。

そのつもりはないがナルシストで自信家な側面もあるため、他人の名前を呼ぶとその人間が自分を好きになってしまうと思っている。他人のことは名前や ニックネームで呼ばずに「お花ちゃん」や「小鳥ちゃん」等と呼ぶ。

生まれ

アマデウスの1代目は醜男であったが、荒稼ぎした金で極上の美人を手に入れて妻にした。そうして生まれた2代目は父親への対抗心から、母親を上回る美人を探し、そして妻にした。エルドラドはその美人から生まれた一粒種であるため、2人の美女の美しさを受け継ぎ、人好きのするハンサムな顔立ちをしている。

家族、対人関係

・オルティ
手に入れたい相手。彼のことは「仔猫ちゃん」と呼んでいる。オルティからはガンガンに嫌われまくっているが、それが快感になっている。

プロフィール

血 族:緋人族
年 齢:32歳
誕生日:初夏
身 長:180cm前後
体 格:肉付きよく健康的
口 調:明るくあっけらかん

「君!!!俺のペットになってくれないか?」
「やっほー仔猫ちゃん!今日も可愛いね!」
「俺は思うがままに俺だった!その物語になんの後悔も恥じらいもないさ!だから俺はここで死んでもずっとずっとずっとずっとずうっと君を愛しているよ、オルティ!」

ストーリー

・「四ツ葉」ことクローバー貿易商会の重要な取引相手である。
・事あるごとに商会に絡み、オルティにちょっかいをかける。
・好事家としてフィラデルフィア号、もとい蒐集船イーデンに乗り込み、オルティとエヴァグリーンの前に立ちはだかった。

オルティ・クラヴィアド

Ortie Claviad

オルティ(フル装備)
オルティ(普段着)

概要

アルスの裏社会を統治するクランのひとつ、『クローバー貿易商会』の二代目会長。
情報屋として非常に顔が広く、また、その精度も高い。彼の持つ情報はクローバー商会の商材で最も高値がつくもののひとつであり、重要な収入源であるため、オルティは時間の許す限り、それらの収集と整理に当たっている。
笑顔を崩さず、余裕の態度で膨大な情報を捌く様子がまるで手品のようである、と、付いた渾名が『奇術師』あるいは『魔術師』。もしくはクランの名を取って『四ツ葉(の王様)』と呼ばれている。

性格、気質

性格は至って温厚で平和的に見える。常に和やかに笑っているが、眼光は鋭く、冷たささえ感じさせる。他人を心から信じる事がなく、温厚な態度は無駄な諍いを避ける為でしかない。残酷で無慈悲な一面もあり、特に、敵対者と自分には非常に厳しい。心から笑ったり、泣いたり、そういったことは滅多にない。
『色違い』であり、その色の珍しさを好む者には特に敵愾心を抱く。これは幼少期から、見た目ばかりを褒められ、何を努力しても、その努力や本人の才覚よりも、色違いであることを評価されてきたからである。逆に言えば、そういった扱いをしない人の事は大好きだが、アルスでは色違いの価値が高騰しつつあるため、そのような人物はなかなかいない。特に、付き合ってきた女性が皆、オルティをアクセサリーのように扱ってきたことがトラウマになっている。
故に芯の部分では根暗。好きだと言われても、どうせ色違いだからだろう、と穿ってくる程度には根暗で、面倒臭い性格。そして、自分のそういった面を嫌悪しているため、明るく振舞って無理をするのが常。

好きなもの、嫌いなもの

ファッションに気を配り、かっこいい男でいることを心がけている。ショッピングも好きで、甘党。揶揄うように『四ツ葉の雄姫様』呼ばわりされるのは、満更でもない。
やや潔癖症気味で、血とか死体とかはあまり触りたくないが、嫌いなだけで殺らないわけではない。
妹を自殺に追いやった事から、性暴力は大嫌い。

戦闘

『商会一か弱い男』を自称しているが、か弱いの意味を千回は問い質したくなる程度には強い。情報屋、のステータスに見合わぬ武闘派であり、仮にも竜種であるエヴァグリーンを手練手管で負かし、物理的に床を舐めさせたこともある。無論、情報戦、心理戦にも強く、敵に回した事をたっぷり後悔させられる事になる。
主武装はコルトパイソンだが、近接格闘戦も強い。

価値観、死生観など

商売人でありマフィアであるため、金の力は良く知っている。金は生命よりも重くなることがある。逆もまた然りであり、生命は軽々と消費しない。殺しは悪であり、社会に反していると考える。
しかしながら、彼に殺しの罪悪感はない。殺しは悪だが、それは社会に属する者にとっての事だからだ。仲間の死に悲しむことはあれど、犯罪を犯して悲しむことはない。
また、色違いであることに価値はない、そういう世界を渇望している。

生まれ

トヲラス人の父と、彼のアルス人の愛妾の下に生まれた。生涯の殆どをアルスで過ごしているため、トヲラスが母国であるという実感は薄い。父は正妻との間にも子があり、オルティの妹に当たる。
父はトヲラス系の大企業『アストラ商会』の会長を務めており、オルティはその長男。アルスの裏社会で生きることを決めた時に、家から自主的に勘当され、名前と家を捨てた。父および正妻との関係は良好だったが、そう生きたいとオルティが願ったため、父は止めなかった。
棄てた名はオルトミルフィ・アルタイル=アストラ。この事は幼馴染等、一部の関係者だけが知っている。自分では、アストラの家に迷惑にならないように、名乗らないようにしている。

家族、対人関係

・タリー
腹違いの妹。目に入れても痛くないほど可愛がっていた。彼女が自殺する原因となった、性暴力を深く憎んでいる。また、その犯人グループを今も探している。

頬の傷は、妹の仇と戦った際についたもの。彼にとっては、誇りでもある。

・トラン
先代の会長であったトランは、第二の父親と言うべき存在。彼から教わった事は数知れず。トランが殺された事で、オルティは四ツ葉を継いだ。

・ロータス
右腕的な存在。トランが存命だった頃から、トランの息子同然の義兄弟同士の間柄。周りからは頼りない補佐官と思われがちだが、オルティ本人はかなり頼りにしている。

・アンブロシア、ヴァースラフ
ロータス同様、トランが息子同然に可愛がっていた少年たち。オルティ、ロータスとはそれぞれ義兄弟の間柄。アンブロシアはトランが亡くなる原因を作り、ヴァースラフはオルティに自分を殺させ、四ツ葉に仕立てた。

・サダルメリク
拾った不死者に『サダルメリク』の個性を与え、居場所を与えた。サダルメリクからも懐かれている。本当は、彼を戦場に出したくはない。

・メリーラム
傷だらけで棄てられ、死にそうになっていたメリーラムを助け、雇用した。周囲には愛妾だと思われているが、そういう関係ではないし、一度も抱いていない。衣装もオルティが用意したと思われている。

・エリー
亡きアンブロシアの妹。アンブロシアの代わりに彼女の身元を引き受け、受付嬢として雇用している。彼女から好意を向けられている事は知っているが、オルティが殺したも同然の、かつて親友だった男の妹を愛する事はできなかった。

・サリア
血の繋がらない娘。昔一度だけ相手をした娼妓から押し付けられ、引き取った。カタギの世界で生きてほしいという想いから、自分からは遠ざけて育てている。

・ナダレ、ダレン
スクール時代からの幼馴染。オルティの本名を知る数少ない人物。自分の外見をとやかく言わなかったのは彼らが初めてであり、いまだにその事を嬉しく思っている。
特にダレンは軍上層部への貴重なパイプでもあり、綿密に連絡を取り合っている。

・エヴァグリーン
オルティを始末しにきた殺し屋だが、仲間に引き入れ、最終的には互いに相棒のような立ち位置になった。オルティはエヴァグリーンを弟分か、あるいは息子のように思っている節がある。実は関係は旧く、かつてエヴァグリーンが、意図せずオルティの命を救ったことから始まっている。

プロフィール

血 族:トヲラス系鹿狼族
年 齢:39歳
誕生日:晩秋
身 長:193cm
体 格:筋肉質、大きめ
口 調:知的ではっきりしている

「では、今後ともご贔屓に、旦那。」
「エヴァグリーン、お前はもう少し、闘い方を覚えたほうがいいぜ。出撃する度にこれじゃあ、カーペットの替えが何枚あっても足りねぇよ。」
「俺は充分、幸せだった。今までもそうだし、これからもずっとそうだ。苦しくて泣きたいぐらい、本当に幸せなんだ。……大好きだよ、愛してる。」

ストーリー

・エヴァグリーンの襲撃を受け、仲間に引き込んだ。彼の目的に協力する代わり、自分を殺さないように契約。きっちり契約満了したが、エヴァグリーンはオルティを殺さず、これからも側にいる事を望んだ。

・ノエルの失踪後、ナダレに頼まれ、ノエルの行方を追った。しかし、後を追うように消えたナダレに調査結果を伝える事はできず、その全てはエヴァグリーンに託す事となった。

・遠国の超格上ヤクザクラン相手に取引交渉に行って、先方の頭領にいたく気に入られる。互いに互いの寂しさを埋めるように深く愛し合い、逢瀬を重ねるも、想いを伝える事ができないまま、羽化症の発症と共に身を引いた……のだが。

・生来、死病である、『羽化症』の潜在的な患者であり、20代の頃には、長生きはできないと宣告されていた。結果、43歳ごろに発症し、44歳で病没する。

・亡くなる前に一度だけ、想い人と再会を果たす。初めて想いを伝え合うことができ、彼の今後が気掛かりではありながらも、結末に満足していた。

・彼の死後、サリアの手により、クローバー貿易商会は呆気なく瓦解、壊滅する。

ロータス

Lotus

ロータス(設定絵)

概要

クローバー貿易商会の会計、書記担当、兼、オルティの運転手、兼、お茶汲み、兼、……要するにオルティの右腕的存在である。
仕事では有能な割に日常生活が疎かになりがちなオルティのサポートを行いつつ、収支会計などの雑務を一手に引き受けているので、実は相当デキる部類。なのだが、なまじオルティが良い意味でも悪い意味でも目立つため、どうしても添え物のような扱いを受けてしまう。
ロータス本人も、オルティの事は自慢のボスで義兄弟だと認識している。話題は殆どが『今日のオルティさん』であり、付き合った女性から「もうそのオルティって人と付き合えば!?」とビンタされ振られたことは、一度や二度の事ではない。

性格、気質

好き嫌いがはっきりしていて、露骨に顔に出る。良く言えば素直な性格。嘘がつけないタイプだが、それが最善だと信じた時には、心を殺してでも嘘をつき通す芯の強さもある。明るくポジティブで、ヌケている所が目立つため、他人からは能天気な馬鹿だと思われがち。しかし、能天気はあながち外してもいない。
一途で一本気な忠犬属性の人柄でもあり、一度従うと決めた以上、オルティには絶対に背かない。また、他の誰の下につく気もない。クローバー貿易商会のメンバーは彼にとっては家族も同然であり、命を賭しても守り抜くと心に決めている。

好きなもの、嫌いなもの

食べる事と酒が好きで、明るく賑やかな場が好きなため、落ち着いた雰囲気のバーのような店よりも、居酒屋のような店を好む。軽食やツマミを自作して宅飲みするのも好き。度数の高い酒も飲めるが、ザルではないので適度に酔う。体型を結構気にしているが、食べたり呑んだりは辞められないので、運動でなんとか消費しようと努力している。
オルティと同じく買い物が好きだが、オルティはファッション関係やガジェット関係の買い物を好むのに比べ、ロータスは食べ物関係の買い物が好き。裏市街の朝市は、趣味と仕事を兼ねて見回る。
オルティの事は大好きだが、オルティの添え物扱いを受けるのは非常に不服であり、そういう扱いをされたと感じた時には、ムッとした表情を見せる。オルティさんが凄い事は、誰より自分が良く知っている、という思いも無きにしもあらずの事。

戦闘

基本的には徒手格闘。ストリート仕込みの喧嘩拳法だが、足技を中心にした連撃はそれぞれが重い。
かつては『サンドラの白狼』と呼ばれ狂犬として恐れられていたが、オルティの下についてからは牙が抜けたように大人しくなった。その事を揶揄して『眠り狼』と呼ぶ者もあり、事実、激昂した時など、今でも白狼の地金を見せる事はある。

ロータス(白狼時代)
白狼時代のロータス

価値観、死生観など

生まれも育ちも裏社会のため、この世は弱肉強食であり、生き残るのは強い者だと考えている。そして、その中でいかに強者となって、弱者を守るのかが、ロータスの課題でもある。

生まれ

アルスの娼婦街で、とあるトヲラス人娼婦の元に生まれる。母は商売女ではあったが、ロータスを溺愛し、愛情と金をかけて、教育を受けさせて育てた。そのため、ロータスは貧民街の出でありながらも、それなりの読み書きや算術を習得している。母とその周りの娼婦たちはロータスを可愛がり、ロータスも彼女たちに懐いた。今でも女性の扱いはそれなりに上手い。
たっぷりと愛情をかけてもらったぶん、ロータスは愛情深く、義理に厚い男に成長した。
成人する前に母を喪い、喧嘩と暴力の日々を過ごしたが、その気質は失われなかった。

家族、対人関係

・トラン
本当の父親の顔を知らないロータスは、先代のクローバー貿易商会会長であるトランを父のように慕っていた。トランもロータスを息子同然に可愛がっていた。オルティがトランの仇を討つと言い出した時、二つ返事で了承したのはロータスだけだった。

・オルティ
兄貴分であり、オルティが会長となった現在は仕えるべき主君でもあるが、その出会いは最低だった。喧嘩の強さを買われて用心棒のような事をさせられていたロータスは、当時まだクローバー貿易商会の鉄砲玉で、カチコミに来たオルティと本気の殴り合いになる。死闘の結果、地を舐めたのはロータスで、それ以来、ロータスはオルティを兄貴として慕うようになる。

・アンブロシア、ヴァースラフ
ロータスとほぼ同時期にクローバー貿易商会に参入した、トランに可愛がられた少年たち。二人が死んだ時は深く悲しみ、そして、四ツ葉を枯らす事は出来ないと、強く決意した。

・サダルメリク
オルティが拾ってきた、可愛い弟分のような存在。とはいえ、どうせ変身できるなら、おじさんじゃなくておっぱいのでかい美少女でいて欲しかった。

・メリーラム
だからってそういう路線の人を連れてこいって意味じゃない、と思った。
普段事務所で一緒に仕事になる事が多い。目のやり場に困る。

・アルシァラ
後輩。少し生意気だが仕事はできるので、特に咎めたりはしない。オルティ本人は許すが、オルティに対して態度が悪い時に叱る程度。

・エリー
彼女の兄、アンブロシアを助けられなかった責任は自分にもあると感じている。できる限り幸せに、平穏に暮らさせてあげたい。

・エヴァグリーン
またオルティさんがなんか拾ってきた。使える奴だとは思っているが、事務所のカーペットを血で汚すのはやめてほしいと常々思っている。どうせそれを片付けるのはロータスの仕事だからだ。

プロフィール

血 族:トヲラス系鹿狼族
年 齢:39歳
誕生日:早春
身 長:188cm
体 格:やや肉づきのいい、筋肉質の体型
口 調:目上の人には敬語調。優しげ。

「オルティさん、そろそろコーヒーぐらい自分で淹れられるようになってくださいよ。」
「お前ほんとまともな服着てくれよ頼むから」
「良い子だね、ほら、おいで?」

ストーリー

・オルティの右腕として、要所要所で登場はするものの、目立って活躍はしない。控えめに花を添える存在。

・オルティが病を理由に隠遁した後、必死になってオルティの行方を捜したが、二度と会うことは出来なかった。

・クローバー貿易商会会長代理となり、死ぬまで頑なに代理と名乗り続けた。

・オルティの娘サリアが軍部と組み、竜宮を作り上げて商会を狙ってきた時、ロータスはそれを止める事ができずに、商会は軍部の傀儡となった。

・竜宮とエヴァグリーンは全面戦争になり、ロータスは商会の残党を率いて戦場に立った。軍部に手を貸すつもりは微塵もなく、軍部に顔が立つ程度に働き、商会に残ったメンバーを逃がそうという腹積りで。その後、おそらく事情を理解できるだろうエヴァグリーンの手に掛かることが目的だった。

・しかし、彼を断罪したのはエヴァグリーンではなかった。異国の剣技を用い、その男はロータスの背を斬る。ああ、雨になりそうですよ、気をつけて帰ってくださいね。己を斬った男の膝で、彼の向こうの空へ手を伸ばし、それがロータスの最期の言葉になった。46歳の、雨の日のことだった。

変幻自在のサダルメリク

Sadalmelik

概要

クローバー貿易商会の潜入、および戦闘時の陽動担当。観察したことのあるものならば、ほぼ無限に姿を変える事が可能な能力を持ち、また、サダルメリクを観測する者の認識の違いによって、その精度や特性が変化する。例えば、サダルメリクを怪物だと思っている人の前では、怪物に変化するが、その見た目や特徴は、観測者の認識(例:長い触手と翼のある怪物)に近い、サダルメリクが過去に観察したことのあるもの(例:頭足類や鳥類)を融合させて表現される。どちらが優先されるかは時と状況にもよるが、サダルメリク本人の想像力で変化することは難しい。

というのも、彼/彼女の能力の由来は、彼/彼女が不死者であることに由来するのだ。不死者となる際に、彼/彼女が魂の代わりに燃やした生命の炉心は、個性そのものだった。個性を喪失した彼/彼女は誰でもいられなくなり、記憶や価値観は曖昧であやふやなものになってしまった。もはや不死者となる以前、どんな人物で人格だったのかさえ思い出すことはできない。あるいは人間だったのかさえ、わからない。
彼/彼女を獲得した者に望まれるまま、怪物的に過ごしていた怪物の模倣者を拾い上げたオルティは、彼/彼女に『サダルメリク』の個性を与え、商会で保護する。それから彼は『サダルメリク』をベースとして生活するようになり、いつでも変身・復帰が可能なように、『サダルメリク』を書き込んだ手帳を持ち歩いている。

性格、気質

『サダルメリク』でいる間は、おっとりした、ほんのり天然系のおじさん。温和で争いを好まず、ふわふわと笑っている。見た目や雰囲気は、数学教師風、と形容される事が多いが、数学はむしろ苦手な部類である。
変身中は、その深度にもよるが、変身した相手の性格や気質を模倣する。素のサダルメリクとは真逆のような人格を持つ人に変身しても、深度が浅ければサダルメリクの性格がベースにある。変身の深度が深ければ深いほど、変身した相手の人格に引っ張られ、サダルメリクに戻ることが容易でなくなっていく。
不死者であるため、本来なら眠ることも、食事の必要もなく、傷つけられたとて痛む必要はない。しかしながら、オルティはサダルメリクが可能な限り『普通の人間』として暮らすことを望んだ。故にサダルメリクは眠り、食事し、痛み過ごす。サダルメリクはそれを煩わしいとは思わないが、不思議なことだと感じている。

好きなもの、嫌いなもの

好き、嫌いは個性の一部であるため、本来的にはこれらの情報も持たない。しかし『サダルメリク』はチョコレートケーキとチリビーンズが好きで、日向ぼっこが好きで、星を眺めたり、花を愛でたりする事が好きだ。それは誰が与えたというものでもなく、自然発生的に、サダルメリクに生まれた個性である。サダルメリク、という生き方を与えてくれたオルティ、それを受け入れてくれたクローバー貿易商会は、サダルメリクにとって大切なもののひとつである。それらの為になる事ならば、能力は惜しみなく使う。
無個性であることは彼/彼女にサダルメリクという新しい生を与えはしたが、それは砂の城のようなもので、波が寄せれば一瞬で崩れ去ってしまう。そうした時には、誰か(存命の間は主にオルティ)の認識からサダルメリクを復元するが、前と違ってやいないか、ちゃんと戻せているかと不安になり、後で忘れ去ってしまうとしても、サダルメリクはその時間が不愉快で、嫌いでさえある。

戦闘

不死者の特性上、他者の生命に干渉することは許されていない。故にサダルメリクは直接、誰かを殺すような戦い方はできない。あくまでも彼は怪物の模倣者であり、怪物そのものではない。
そのため、戦闘は行わず、能力を活かし、潜入や陽動を行うことがほとんど。どうしても武力が必要な場合は、誰かの姿を借りて戦うが、やはり殺す事はできない。

不死の特性ゆえに死にはしないので、肉壁を買って出る事はあるが、余程の困窮した状況に限られる。というのも大抵の場合、そういう事をするとオルティをはじめ、商会メンバーが心配するのだ。

価値観、死生観など

サダルメリクの性格ゆえか不死者ゆえか、危険なものに対する抵抗感が皆無で、また、自分の身体についても、大切にする必要はあまり感じていない。サダルメリクという個性は大切にしているが、不死であり、変身が可能な以上、肉体はいくら傷ついても問題はなく、危機感知能力が低い。それは一種、諦めにも似ている。
死ぬことが嫌で不死者になったはずなのだが、その「死ぬことが嫌だった個性」さえ喪っているので、特別死を恐れてはいない。
他人が不死の特性を求めることは快く思わない。これはサダルメリクの個性ではなく、不死者はそのように作られているからである。
後に、とある理由から不死の特性を棄却しようと足掻く事がある。

生まれ

不死者となる以前の環境は不明。
『サダルメリク』としての記憶と記録は、オルティに出会った時から始まっている。

家族、対人関係

・オルティ
『サダルメリク』を与えてくれた恩人。いちばん良く懐いている。彼の死に際し、サダルメリクを保てなくなった。

・ロータス
何かと気にかけてくれる人。なんやかんや世話を焼いてくれるので、一緒にいると楽。

・メリーラム、エリー
仲間として大切に思っている。変身途中の粘土のような姿を見られるのは、なんとなく恥ずかしい気がする。

・エヴァグリーン
強い人という認識なので、戦闘になるような事があれば真っ先に変身する。

・『収集者』
彼/彼女に不死者としての未来を提示した存在。ちょっとだけこわい。

プロフィール

血 族:不明
年 齢:不明(見た目30代後半)
誕生日:不明
身 長:概ね168cm
体 格:瘦せぎす
口 調:おっとり系、平仮名語

「おそかったね、オルティくん。君のまま死んでしまうところだったよ。」
「だめだよ。絶対にだめだ。君は僕みたいになっちゃいけない。」
「僕だって死ねるはずなんだ! 『サダルメリク』のまま、死ねるはずなんだ……!」

ストーリー

・『人を食う怪物』として飼育されているところをオルティ、ロータスに発見される。もちろん戦闘になったが、彼の特性を見抜いたオルティに無害で平凡な個性を与えられて鎮圧された。

・その後、普通の人として生活できるように、『サダルメリク』の個性と、それを手帳に書き留める方法が考案され、クローバー貿易商会の一員となる。

・人手不足の商会のため、潜入、諜報要員として使ってくれと言いだした。オルティは反対したが、最終的にはそれがサダルメリクの仕事になった。

・オルティの死後、自己認識が壊れてしまい、『サダルメリク』を失っていた。そのまま己が誰とも知れず生きていたところを、突然に揺り起こされる。それからの物語は、誰も知らない。

・再び全てを失ったサダルメリクは、この個性を抱えたまま死ぬ事を目指して何度も『自殺』を試みるが、『ある収集者』曰く、そう何度も横紙破りが許されるものではない、とのこと。結果、サダルメリクに残ったのはぼろぼろの身体と、古びた手帳、そして誰かの名前を刻んだ指輪だけだった。

・長い年月の後に、死神になったとある青年と再会を果たす。そうしてサダルメリクの永い永い死出の旅は、やっと終わるのだった。

エヴァグリーン・イヴリス

Evagreen Ivris

概要

クローバー貿易商会に出入りする、殺し屋の竜種。会長オルティから直接指示を受け、標的を仕留めて報酬を受け取る。商会と正式に雇用契約を結んでいるわけではなく、アルバイト的に業務をこなしている。
ある理由でオルティを殺す為にやって来たはいいが、そのオルティに手八丁口八丁で丸め込まれてしまった。それ依頼、敵でも味方でもない微妙な立ち位置を保ち続けている。

性格、気質

乱暴粗暴、負けず嫌いな直情型。口より先に手が出て脚が出る。頭で理屈を考えることが不得手でもあり、つい感情的になりがち。生来孤独に過ごしたためか、一度仲間と認識した相手には甘い。口先では鬱陶しそうにするが、照れ隠しだということが非常にわかりやすい。

好きなもの、嫌いなもの

ラーメンが大好物。甘いものよりは辛いもの、塩気のものを好み、油気のものも大好き。ラーメンライスとハンバーガーセットをぺろりと平らげる大食漢であり、食べものは質より量派。非常に燃費が悪い。
しかし何故かキノコだけは食べたがらない。嫌な思い出があるらしい。

戦闘

敏捷にして重撃。その拳は風を切り、剣脚は大地を割く。有り体に言えば馬鹿力。本来の力は身に余り、どうしても振り回されてしまう。
また、戦法もかなり無茶苦茶で、駆け寄って潰す、を繰り返すのがほとんど。格闘術などあってないようなもので、なんとなく足技メインに戦っている、というような状態。
そのため、物理的な力では優っているはずなのに、戦闘毎の消耗が激しい、技を主軸にしている相手とは戦いづらい、というような問題を抱えている。

価値観、死生観など

『強者生存』。竜種であればある程度共通して、似たような価値観を持っているが、彼の場合は特に苛烈であり、病的でさえある。脅迫されるように「勝ち続けること」を目指し、弱い己を恥じる。その根底には「誰も自分を認めてくれない」という悲しみや孤独感がある。
強くとも選ばれなかった自分、弱くとも選ばれた者。過去からの残影に囚われ続けている。

生まれ

彼が生まれたのは、とある『艦』の上だった。とはいえ生まれたばかりの彼はそれを知らず、艦に積まれたわずかなパノラマ的な大地を世界のすべてだと信じていた。しかし生まれて1年もしないうちに、彼は艦を降ろされる。その艦は「希少なもの」を集めるための艦だったのだ。黒曜石の殻を持った卵の状態では珍しいものだった彼だが、孵化してしまえばなんのことはない、ただの竜種だった。 そして、ちょうど入れ替わるようなタイミングで艦に収容された 「色違い」、すなわち希少な竜種の存在。それらに後押し、あるいは蹴り落されるような形で、エヴァグリーンは捨てられたのだった。

エヴァグリーンは、廃棄される瞬間にそれが世界ではなかったことを知った。冷たい海の中で、その艦の姿を確かに見た。そして艦は、薄れる意識の中に強い嫌悪と怒りの火種を灯す。

家族、対人関係

・オルティ
標的であり、相棒であり、弱者であり強者であり、生き方を教えてくれた人でもある。結局最期まで付き添った。

・カマロ
いつの間にか恋人になっていた。そして誰よりも大切な人になっていた。そんな事考えるのも照れ臭いが。

・ネイディーン
拾った竜種の子。後々、カマロと共に育てることになったりする。

プロフィール

血 族:竜種
年 齢:23歳
誕生日:不明
身 長:168cm(ブーツ込み174cm)
体 格:痩身、筋肉質、しなやか
口 調:粗暴

「雑魚がウダウダうるっせぇんだよ。黙ってさっぱり死にやがれ。」
「っだーーーーーー! 俺に触るなって言ってんだろこのクソ野郎!!!!! その腕指から輪切りにされてぇのかクソボケがァ!!!!」
「お前やナディが幸せに生きて行けるんなら、俺はそれで充分だぜ、カマロ。」

ストーリー

・殺し屋としてオルティを襲撃するが、逆に捻じ伏せられ取引をすることになった。オルティを殺さない代わりに、ある艦の情報を提供される約束で。

・オルティとの取引関係は艦を潰したことで終了したのだが、オルティを殺すことはせず、相棒でいることを選んだ。

・オルティの死を看取り、彼の最期の頼みのため、とある研究施設へ潜入。そこで竜種の少年・ネイディーンを拾う。

・カマロと共にネイディーンを育てながら、現代最高峰の殺し屋として讃えられるほどのプロフェッショナルに。

・オルティの娘サリアが引き起こした竜種抗争こと『竜宮』事件に巻き込まれる。ネイディーン、カマロ、そして竜種の少年ニヴィアを庇い、重大なダメージを負って殺し屋を廃業した。