ヘーゼリッヒ

Gezellig

概要

まさしく、怠惰という言葉が服を着て歩いているような男。面倒を嫌うことは勿論、面倒を嫌うことさえ憂う。1日を一切動かずに過ごすなんて事は、彼にとってありふれたことだ。無論、身嗜み等には一切気を配らない。数少ない友人であるナダレはヘーゼリッヒを「肥溜めに浸した雑巾で牛乳拭いた匂い」「俺が麻薬犬でもヘーゼルのことは嗅がない」「ぶっちゃけ側に寄るのは苦行」等と評したことがある。

怠惰で怠慢でありながら、ヘーゼリッヒは彼の唯一の楽しみのためにどっこい何とか生きてきた。その楽しみというのは、つまり『死体』だ。これまで動いていたものが、何故だか動くのをやめてしまう。その奇妙なメカニズムに心惹かれ(というか、それ以外の事には一切心惹かれず)、ヘーゼリッヒは検死を生業とした。だがそこで問題が起きた——ヘーゼリッヒは死体(だけ)に欲情する男だったのだ。お楽しみのところを敢え無く発見されて失職し、現在は闇医者の端くれとして生活している。

性格、気質

極めつきの怠惰であり、生活習慣を改善する気など一切ない。たとえ髪がベタつき、フケだかなんだかよくわからないものを撒き散らしていても、歯がボロボロ抜け落ちていても、全く興味を抱かないし、他人がそんなことを気にする意味がわからない。(生きた)他人への興味は無いに等しい。

好きなもの、嫌いなもの

ヘーゼリッヒは怠惰を好んでいるが、勤勉を嫌ってはいない。己の興味や好奇心に対しては素直に向き合い、知識欲を満たすこともする。監察医として勤務できていたことはその実績とも言えよう。
死体を愛し、その秘密を暴くことを愛するヘーゼリッヒだが、ゾンビ映画等は嫌っている。動いたら死体じゃないじゃん……。

食べ物はゼリーがすき。飲めるから。

戦闘

戦力にはならないが、殺す価値がありそうだと思われることもないため、まず標的にならない。

価値観、死生観など

死は甘美な秘密であり、これまで動いていたものが突然に動きを止めるという謎を解き明かしたいと考えている。そのため、死因のはっきりした死体には興味を持たず、自ら殺すということもない。ヘーゼリッヒが愛しているのは死体という物質ではない。推理小説を愛しているのではなく、その書に記された謎そのものを愛している。でなければ、生来の無精を差し置いてまで働き、生きている意味がない。ヘーゼリッヒは正しく知の奴隷である。

生まれ

ごく一般的な中流家庭にて育ったため、何がきっかけでこうなったのかはよくわからないが、大抵の性癖はそういうものだ。

家族、対人関係

実家とは事件の折から疎遠である。 そもそも興味がなかったため、彼自身には縁を切られたという実感さえない。

・ナダレ
同業者で友人。なんやかんや面倒見が良いナダレは偶に訪ねてくることがあるが、ヘーゼルは一度もそれを真っ当に歓待したことはない。

プロフィール

血 族:緋人族
年 齢:30代
誕生日:不明
身 長:170cm程度
体 格:小柄で痩せている
口 調:殆ど喋らず、口を開けば気だるげ
「生きた人間に興味はないんだよ、帰ってくれないかい?」
「よくぞ聞いてくれました! ……いややっぱ察してくれない? 察しろ」

ストーリー

・ストーリー上重要なキャラクターとは言えず、目立った活躍もない。しかし、彼を友人として尋ねることは、ナダレの正気の部分を保つことに貢献しているだろう。

ナダレ

Shinonome Nadare

概要

アルス王国には13の行政区が存在し、それぞれが独立した法や条例を制定し、将軍家によって統治されている。しかしながら、13番目の区においては、その統治者たる将軍家が存在しない。故に13区は無法地帯、アルス中のありとあらゆる問題が集約する魔窟となった。
ナダレはその13区で、無免許の外科医として生計を立てている。腕は天才的に確かで、わざわざ彼を頼ってくる者もいるほどだ。そして、ナダレが患者に求めるものはひとつ——金だ。
無法地帯といえど法外な診療費をふっかけ、払えないのなら死ねと脅し、『売り上げ』は全て麻薬と酒に変える毎日。ナダレの人生は遅かれ早かれ詰んでいた。人生の転落コースを真っ逆さまに滑落する、ルーチンワークの無間地獄。それが彼の全てだと言うなら、確かにかの天使は、ナダレを殺しにきた死神だったのだろう。

性格、気質

根は真面目の筈なのだが、今の生活に陥ってからは大雑把で自堕落で、適当な毎日を過ごしている。ナダレは、死ぬのも怖いが生きるのも怖いのだ。そのために毎日、緩慢な自殺を試みている。このままではいけないと思いながら、つい薬に、酒に震える手が伸びる。患者から金をふんだくるのは、その購入費用に当てる為だ。端的に言えば、ナダレは人間のクズだった。
クズにはクズなりのプライドがある。すなわち、金を払いさえすれば、彼は患者に真摯な対応をする。丁寧に治療を施し、優しい言葉で送り出してやることもある。それはもしかすれば、生来の真面目さ、誠実さから来ているものかもしれない。

好きなもの、嫌いなもの

ヘロインとジャックダニエルがあれば緩やかに死んでいける。常に何かに怯えているような素振りで、安心毛布を探し続けている。離脱症状の苦しみがどれだけ地獄の様だと分かっていても、ナダレは都度、薬に手を出しては病み苦しみ、薬を捨ててはそのことを後悔する。何より嫌いなのは、そんな馬鹿馬鹿しいことを繰り返す己自身なのだろう。
その他、ポップカルチャーやテレビゲームの類を好み楽しむこともある。それらの趣味は中毒に苦しんでいない時に限る。

戦闘

一切不得手。
闇医者稼業に落ち着く前は、国家の軍人、軍医として大戦に参加していた。握った銃の引き金を引く事も出来ず、戦場の悲惨さに狂いきることも出来ず、中途半端に生き延びてしまった。

価値観、死生観など

かつてはそれなりの倫理観を持って世界と向き合っていたのだろうが、今の彼は支離滅裂で無茶苦茶だ。守るべきだった価値観を失い、場当たり的に生きている。
死んでいるものを治療することはできないため、死人に敬意を払うことはない。精々、使えそうな臓器をいくつか選んで、然るべき業者に降ろす程度だ。

生まれ

ナダレは娼婦の母親が、当時愛していた男を引き留めるために産み落とされた。男のほうは母親に情など無く、ナダレはその用を果たせなかった。殺されるところだったが、頭のおかしいお客が、どうせ処分するなら玩具にさせろと言うので、金になるのであればと生かされる。生後数年を経て店が摘発され、ナダレは保護される形で、すんでのところで命を拾う事となった。
彼の養父となったシノノメ・カノトは実業家であった。生まれつきの病で子を成す事ができないカノトはナダレを引き取り、我が子の様に育て、真っ当な教育を受けさせた。カノトもナダレと同じ様に親を持たない子どもであった。「いつか同じ様に困っている子どもが居たら、同じ様に助けてやりなさい」とはカノトの養父の言であり、カノトはそれに従ったのだ。
カノトに報いるために医師を志したナダレだったが、卒業を控えた頃に大戦が激化し、軍医として徴用される。戦場での出来事をナダレは語りたがらないが、後に親友となるナムとの出会い以外の全てが地獄であったことは確かだろう。更にカノトの訃報である。生来、真面目な性格であったナダレには、それらの全てが、到底耐えられる事では無かった。以来、ナダレは生きながらゆっくりと死に続けている。

家族、対人関係

・カノト
育ての親であり、幼かったナダレにとっては世界の全てだった。カノトを救えなかったことは、今も彼の心に鋭く刺さっている。

・オルティ、ダレン
ハイスクール時代の同級生、悪友たち。現在はお互いに利用し合うような関係だが、ナダレは彼らの事を信頼している。

・ナム
戦場で出会った、当時の隊付き衛生兵。死にたがりの青年だったナムを無理やり生かしてしまった事を負い目に感じている。

・ノエル
閉じていた世界をめちゃくちゃにブチ割ってくれた、彼の天使。ノエルが居なければそのまま終わっていた。あの時生まれ直せたのだから、ノエルの助けになれるなら死んでも良いのだ。

プロフィール

血 族:鹿狼族
年 齢:39歳
誕生日:12月25日
身 長:197cm
体 格:長身で痩せぎす
口 調:雑で大雑把、やる気がない

「金がねェ奴ってのは、死体と一緒なんだよ。そのはした金で棺桶でもこさえるんだな。」
「ああなったら終いだ。俺は色んなクズの患者ってのを診てきたが、臆病風に吹かれたやつはもう二度と顔見せやしない。俺は心まで治してやれない。お前らはそうなるなよ。」
「ノエルは俺のご主人様なので……あ、いえ、間違えました! ウルトラかわいいノエルちゃんさま! が私めのご主人様でございますです、ハイ……」

軍医時代、現状、2年後、別次元(王政版)、別次元(神眼)

ストーリー

・自堕落な生活を送っていたところに、突然ノエルが現れ殺されかかる。命乞いの結果生かしてもらうに至るが、代償としてノエルの家畜になった。

・ノエルと過ごすうちに、ノエルに対して特別な感情を抱くようになる。それは恋心というには重過ぎて、愛と呼ぶには汚れ過ぎていたが、ナダレの全てを変えたことは確かだった。

・猟竜の崩壊に伴い、ノエルはナダレの前から姿を消した。以来ナダレは、2年がかりで薬物中毒とアルコール中毒を治療し、ノエルを探すために放浪を始める。

・放浪の末、ノエルがとある研究所に捕縛されていることを知ったナダレは、決死の覚悟で救出に向かう。

・無論の事、ナダレはその目的を達成出来なかった。鉛玉を何発も浴びせられ、容易く膝を折られ、それでも、這いずってでも前を向く。その姿を、ノエルは確かに目視した。

・会話は無い。半壊した研究所の片隅で、重なるように、ただ眠るように眼を閉じる。それだけの終わりだったが、確かにそこには、息づくものがあった。