Hanamune
概要
オヅノの里には、里の内政を執行し、その責を負う「御三家」と呼ばれる家がある。内政のほとんど全てを担い、強大な権力を持つ月(ツキ)家。里の玄関口であり、防衛役も担う雪(ユキ)家。残る花(ハナ)家は、そのどちらにもよい顔をして、甘い汁を吸ってきた。御三家と数えられてはいるが、花家の者はそれ単体では何かを成しているわけではない。人をくすぐる手練手管に長け、月と雪の両家に重用される。それが花家の在り方だった。
花宗は、母ゆずりの美貌と、美しく長い紫紺の髪を備えている。少女のように可憐な所作と、痩身は女性と見紛うばかりだが、歴とした男性である(もっとも、女性に化けることもできるが)。
花家の中では浮いた存在であり、父との折り合いも悪く、花家の屋敷には近寄らない。花家そのものが気に入らないから、とは花宗の弁であるが、彼は嫡男であり、次代の花家当主となるべき身である。
その本性は、ヒトを誑かすムジナである。以前は鬼火を携え、火車として人前に出ることもあったが、長い間人里へは降りていない。というのも、ヒトとの間にある程度の決着がついて以来、ヒトを襲うことやヒトの死体を荒らすことは、無用の争いを招くことになるため、控えるべきだというのがオヅノの立場だからだ。
性格、気質
飄々として掴みどころがなく、世の出来事に興味のないようなそぶりを見せる。花家の分家筋である花水仙の家や、里人であり恋仲でもある銀霞の家、あるいは里に拾われた蒼斗の家などを転々とし、勝手に布団の上で丸くなっている。気ままに暮らしているようだが、花家本家の話を出されれば途端に拗ねる。
好きなもの、嫌いなもの
風流を好み、詩作や句作を趣味とする。また、周りに可愛がられることが好きで、ムジナの姿で撫でくりまわされると簡単に腹を見せる。初対面でガシガシ撫でられても、全く嫌な気はしないらしい。
銀霞、蒼斗と連み、山鶴にちょっかいをかけることも好き。特に銀霞、蒼斗の二人が大好きで、頻繁に3人での行為に及ぶが、性行為はついでの事で、本音を言えば二人と一緒に過ごせれば方法は何でも良い。
肉体労働は好まず、自ら進んで行動することも好きではない。移動は主に銀霞の背負子で行う。
戦闘
神通力で炎を操ることができるほか、配下の鬼火を戦わせることもできるが、戦闘行為そのものが嫌いで、面倒臭いと思っている。基本的には戦闘を避けようとし、どうしても避けられないと見れば、なるべく簡単に決着をつけようとする。
価値観、死生観
諸行は無情であるが、無情な時の流れが解決してくれることもある。というよりも、時の流れでしか解決できないこともある。風流人を気取り、世捨て人のような生き方を好んでいるように見えて、花宗は真剣に己の問題と向き合っている。ただ、その問題を解決する方法が、時間を待つしかないというだけなのだ。
生まれ
花家の者は、自らは何も成さず、ただ月、雪の家を誑かす。花宗の母親は、美しく生まれた息子を月家当主・悪太郎の元へ遣り、愛妾として囲わせることを目論んだ。だが、そうして差し出された花宗を一瞥し、悪太郎はつまらなさそうに、花宗の母を切り捨てた。
生まれた頃から自分自身としての価値ではなく、花家の道具としての価値を語られてきた花宗にとっては、それは絶望的な出来事でも、希望的な出来事でもあった。たとえ母を斬ったことが悪太郎の気まぐれであっても、母の枷鎖から解放されたことは喜ばしかった。以来、花宗は悪太郎への礼節を欠いたことはない。
父はその後病を患い、花宗を次期当主にするほか無くなったのだが、しぶとく生き延びている。
家族、対人関係
・花家本家
花家の在り方を好まない花宗にとっては、憎い存在ではあるが嫌うに嫌えないものでもある。なるべく距離を置いている。
・花水仙
許嫁だが、お互いに気がないことを知っているので、いずれお互いにとって良い方へ向かうことを願っている。
・悪太郎
自身の境遇を変える気になったきっかけ。頭が上がらない。
・山鶴
ちょっかいの矛先。悪太郎と同世代なので、実はかなり歳上なのだが、気にしていない。
・銀霞
恋仲。花宗の姿が見えない時は、だいたい銀霞の背負子の中。
・蒼斗七星
悪友。蒼斗七星の名は花宗がつけた。
プロフィール
血 族:鬼種(死霊系)
年 齢:妖怪としてはまだまだ若輩者
誕生日:梅の花が美しい頃
身 長:170cm程度
体 格:細身でやわらかい
口 調:
「あお、すみ。今日は何をして遊ぶ?」
「おれはさ、みんなが楽しく笑っていられるのがいいなって思う。どうしてそれじゃだめなんだろうなあ。」