ナム・ヴォルフガング

Nam Wolfgang

概要

今を生きている、かつての死にたがり。
軍人のメンタルケアを行う職にあり、日々くたびれた軍人達の話し相手をして過ごしている。かつては大戦で隊付きの衛生兵として働いていたが、その大戦で左目、左腕、右脚を喪ったことで、戦場には出られなくなった。
そもそもナムが戦場へ行ったのは、その場で命を捨ててしまうためだったのだ。死は衆生の救いであると信じていた彼に突きつけられたのは、冷たい銃口でも冴え冴えした切っ先でもない。人を生かし、救わんとする。それを信念とする男、シノノメ・ナダレとの出会い。それこそ、ナムの人生を大きく変えたものだった。

性格、気質

理知的ではあるが、ダウナーな思考の持ち主である。必要以上にネガティヴな感情を抱くことは無いものの、ポジティブに物事を考えることができない。とはいえ、彼を生かしているのは信念である。なんとなく、だとか、どうせ、だとか、そんな曖昧な理由で彼は生きていない。生きることにも、死に焦がれるのも、ナムにはちゃんと理由がある。

好きなもの、嫌いなもの

嗜好品は酒より煙草を好み、甘いものよりは辛いものを好む。趣味らしい趣味もないが、人の話、人生の物語を聞く事は好きで、ある意味では仕事が趣味と言える。

昔はそれほど好まなかったが、大戦を経たナムは本を読むことが好きになった。読書は片手でも出来る、という事が何より大きい。

戦闘

大戦の折に交戦経験がある程度で、戦闘訓練等は特に受けていない。そもそもそのような状況に陥ったとして、ナムは生きていくために戦うという事がないだろう。

価値観、死生観など

死は安寧であり、救いである。生きるという事は地獄の淵を泳ぐようなもので、基本的には苦痛だ。より良く生きようとしなければ、より良く生きられる事はない。——これらの考え方はナムの中で非常に強固であり、幼い頃から強く実感していることでもある。
死がおそろしいと思った事は無いが、生きていくのがおそろしいと思った事はある。ではなぜ、もっと早くにひとりでにさっぱりと死んでしまわないのだろう。ナムは未だ、その答えを見つけられていない。ただ今は、自分が生きている事で救われる人がいるのだから、生きても死んでも変わりないなら、その人の為に生きようと思っているだけにすぎない。

生まれ

平凡な家庭に生まれたナムだが、物心つくより以前から母親共々、父親からの暴力に晒されてきた。母親は常に父親の暴力からナムを庇い、ナムを守ろうとした。泣いたり反抗したりすればするほど、父親の暴行は激化したため、ナムも母親も、ただじっと耐える事しか出来なかった。それでも殴られ、蹴られ、物を投げられ、ナムは母親が啜り泣きながら犯されているさまを目の前に見せつけられてきた。
それが日常と化して、長い時間が過ぎたある日。スクールから帰った少年ナムが見たのは、風呂場で手首を切って絶命している母親だった。降り注ぐシャワーの音が雨音のように甘かった。湯気は雲のように柔らかかった。数多の傷や火傷や痣を抱えていても、眠るように目を閉じた母は美しかった。微笑んでさえいた。ナムは死によって、母親が救われた事を理解した。
母親の死をきっかけに、父親が母子に施してきた暴力が明らかになった。ナムは保護され、父親と引き離された。しかしナムには、最早何の救いも必要が無かった。——人はいずれ皆死ぬ≪救われる≫のだから。

家族、対人関係

・ナダレ
元同僚で、親友で、恩人ではあるが、今は疎遠にしている。ナダレとの間柄は一言では割り切れない。平たく言えば、生きる理由1号である。

・アリエル
記憶を失った彼女に、最初は主治医というか、話し相手として接していた。今は生きる理由2号となった。

・ダレン
上司。お互いナダレの知己ではあるが、ナムとしては業務以上に関わった事は無い。

プロフィール

血 族:鹿狼系混血
年 齢:39歳
誕生日:早秋
身 長:180cmちょい
体 格:やや細いが健康的
口 調:ダウナーで斜に構えている

「死んだところで誰も気に留めやしない。なら、生きていたって誰も気に留めやしない。けど、生きてくれ、って奴はいる。なあ、それだけじゃ不満か?」
「はあ、まぁ、それがお前のしたい事ってんなら、俺が断る理由はないんだが……なぁ。あんまり人の事、困らせんなよ。」

ストーリー

・ナダレとは戦場で出会った。左眼と左腕と右脚を機関銃に撃ち抜かれたナムを、ナダレは何とか救い上げたが、ナム以外の誰も救えなかった。

・ナムは一命を取り留めたが、ナダレは精神を病み、薬に手を出してしまう。不本意とはいえ、死にものぐるいで自分を助けてくれたナダレに多少の感心を覚えたナムだったが、薬の事を知って激昂する。

・人を生かしておいて、自分は緩慢に死のうとするナダレの事が許せなかったが、ナダレの苦悩も分からないでは無かった。腹いせに死んでやろうかとも思ったが、おそらくナダレは再起不能になるだろう。それを思えば、ナムには生きる理由が出来てしまった。

・ナダレにナムの面倒見を頼まれたダレンは、ナムを本部のメンタルケア担当に据える。

・アリエルが鹵獲され、ナムの担当になる。

・アリエルの記憶を取り戻す旅に付き合い、彼女を見守り続けた。

・結局、ナムには死ぬ理由よりも生きる理由のほうが重くなってしまった。だらだらと悪態をついては長生きしてしまい、結局、一人娘に見守られながら穏やかに死を迎えたのは90歳を少し超えた頃のことだった。

オルティ・クラヴィアド

Ortie Claviad

オルティ(フル装備)
オルティ(普段着)

概要

アルスの裏社会を統治するクランのひとつ、『クローバー貿易商会』の二代目会長。
情報屋として非常に顔が広く、また、その精度も高い。彼の持つ情報はクローバー商会の商材で最も高値がつくもののひとつであり、重要な収入源であるため、オルティは時間の許す限り、それらの収集と整理に当たっている。
笑顔を崩さず、余裕の態度で膨大な情報を捌く様子がまるで手品のようである、と、付いた渾名が『奇術師』あるいは『魔術師』。もしくはクランの名を取って『四ツ葉(の王様)』と呼ばれている。

性格、気質

性格は至って温厚で平和的に見える。常に和やかに笑っているが、眼光は鋭く、冷たささえ感じさせる。他人を心から信じる事がなく、温厚な態度は無駄な諍いを避ける為でしかない。残酷で無慈悲な一面もあり、特に、敵対者と自分には非常に厳しい。心から笑ったり、泣いたり、そういったことは滅多にない。
『色違い』であり、その色の珍しさを好む者には特に敵愾心を抱く。これは幼少期から、見た目ばかりを褒められ、何を努力しても、その努力や本人の才覚よりも、色違いであることを評価されてきたからである。逆に言えば、そういった扱いをしない人の事は大好きだが、アルスでは色違いの価値が高騰しつつあるため、そのような人物はなかなかいない。特に、付き合ってきた女性が皆、オルティをアクセサリーのように扱ってきたことがトラウマになっている。
故に芯の部分では根暗。好きだと言われても、どうせ色違いだからだろう、と穿ってくる程度には根暗で、面倒臭い性格。そして、自分のそういった面を嫌悪しているため、明るく振舞って無理をするのが常。

好きなもの、嫌いなもの

ファッションに気を配り、かっこいい男でいることを心がけている。ショッピングも好きで、甘党。揶揄うように『四ツ葉の雄姫様』呼ばわりされるのは、満更でもない。
やや潔癖症気味で、血とか死体とかはあまり触りたくないが、嫌いなだけで殺らないわけではない。
妹を自殺に追いやった事から、性暴力は大嫌い。

戦闘

『商会一か弱い男』を自称しているが、か弱いの意味を千回は問い質したくなる程度には強い。情報屋、のステータスに見合わぬ武闘派であり、仮にも竜種であるエヴァグリーンを手練手管で負かし、物理的に床を舐めさせたこともある。無論、情報戦、心理戦にも強く、敵に回した事をたっぷり後悔させられる事になる。
主武装はコルトパイソンだが、近接格闘戦も強い。

価値観、死生観など

商売人でありマフィアであるため、金の力は良く知っている。金は生命よりも重くなることがある。逆もまた然りであり、生命は軽々と消費しない。殺しは悪であり、社会に反していると考える。
しかしながら、彼に殺しの罪悪感はない。殺しは悪だが、それは社会に属する者にとっての事だからだ。仲間の死に悲しむことはあれど、犯罪を犯して悲しむことはない。
また、色違いであることに価値はない、そういう世界を渇望している。

生まれ

トヲラス人の父と、彼のアルス人の愛妾の下に生まれた。生涯の殆どをアルスで過ごしているため、トヲラスが母国であるという実感は薄い。父は正妻との間にも子があり、オルティの妹に当たる。
父はトヲラス系の大企業『アストラ商会』の会長を務めており、オルティはその長男。アルスの裏社会で生きることを決めた時に、家から自主的に勘当され、名前と家を捨てた。父および正妻との関係は良好だったが、そう生きたいとオルティが願ったため、父は止めなかった。
棄てた名はオルトミルフィ・アルタイル=アストラ。この事は幼馴染等、一部の関係者だけが知っている。自分では、アストラの家に迷惑にならないように、名乗らないようにしている。

家族、対人関係

・タリー
腹違いの妹。目に入れても痛くないほど可愛がっていた。彼女が自殺する原因となった、性暴力を深く憎んでいる。また、その犯人グループを今も探している。

頬の傷は、妹の仇と戦った際についたもの。彼にとっては、誇りでもある。

・トラン
先代の会長であったトランは、第二の父親と言うべき存在。彼から教わった事は数知れず。トランが殺された事で、オルティは四ツ葉を継いだ。

・ロータス
右腕的な存在。トランが存命だった頃から、トランの息子同然の義兄弟同士の間柄。周りからは頼りない補佐官と思われがちだが、オルティ本人はかなり頼りにしている。

・アンブロシア、ヴァースラフ
ロータス同様、トランが息子同然に可愛がっていた少年たち。オルティ、ロータスとはそれぞれ義兄弟の間柄。アンブロシアはトランが亡くなる原因を作り、ヴァースラフはオルティに自分を殺させ、四ツ葉に仕立てた。

・サダルメリク
拾った不死者に『サダルメリク』の個性を与え、居場所を与えた。サダルメリクからも懐かれている。本当は、彼を戦場に出したくはない。

・メリーラム
傷だらけで棄てられ、死にそうになっていたメリーラムを助け、雇用した。周囲には愛妾だと思われているが、そういう関係ではないし、一度も抱いていない。衣装もオルティが用意したと思われている。

・エリー
亡きアンブロシアの妹。アンブロシアの代わりに彼女の身元を引き受け、受付嬢として雇用している。彼女から好意を向けられている事は知っているが、オルティが殺したも同然の、かつて親友だった男の妹を愛する事はできなかった。

・サリア
血の繋がらない娘。昔一度だけ相手をした娼妓から押し付けられ、引き取った。カタギの世界で生きてほしいという想いから、自分からは遠ざけて育てている。

・ナダレ、ダレン
スクール時代からの幼馴染。オルティの本名を知る数少ない人物。自分の外見をとやかく言わなかったのは彼らが初めてであり、いまだにその事を嬉しく思っている。
特にダレンは軍上層部への貴重なパイプでもあり、綿密に連絡を取り合っている。

・エヴァグリーン
オルティを始末しにきた殺し屋だが、仲間に引き入れ、最終的には互いに相棒のような立ち位置になった。オルティはエヴァグリーンを弟分か、あるいは息子のように思っている節がある。実は関係は旧く、かつてエヴァグリーンが、意図せずオルティの命を救ったことから始まっている。

プロフィール

血 族:トヲラス系鹿狼族
年 齢:39歳
誕生日:晩秋
身 長:193cm
体 格:筋肉質、大きめ
口 調:知的ではっきりしている

「では、今後ともご贔屓に、旦那。」
「エヴァグリーン、お前はもう少し、闘い方を覚えたほうがいいぜ。出撃する度にこれじゃあ、カーペットの替えが何枚あっても足りねぇよ。」
「俺は充分、幸せだった。今までもそうだし、これからもずっとそうだ。苦しくて泣きたいぐらい、本当に幸せなんだ。……大好きだよ、愛してる。」

ストーリー

・エヴァグリーンの襲撃を受け、仲間に引き込んだ。彼の目的に協力する代わり、自分を殺さないように契約。きっちり契約満了したが、エヴァグリーンはオルティを殺さず、これからも側にいる事を望んだ。

・ノエルの失踪後、ナダレに頼まれ、ノエルの行方を追った。しかし、後を追うように消えたナダレに調査結果を伝える事はできず、その全てはエヴァグリーンに託す事となった。

・遠国の超格上ヤクザクラン相手に取引交渉に行って、先方の頭領にいたく気に入られる。互いに互いの寂しさを埋めるように深く愛し合い、逢瀬を重ねるも、想いを伝える事ができないまま、羽化症の発症と共に身を引いた……のだが。

・生来、死病である、『羽化症』の潜在的な患者であり、20代の頃には、長生きはできないと宣告されていた。結果、43歳ごろに発症し、44歳で病没する。

・亡くなる前に一度だけ、想い人と再会を果たす。初めて想いを伝え合うことができ、彼の今後が気掛かりではありながらも、結末に満足していた。

・彼の死後、サリアの手により、クローバー貿易商会は呆気なく瓦解、壊滅する。

ロータス

Lotus

ロータス(設定絵)

概要

クローバー貿易商会の会計、書記担当、兼、オルティの運転手、兼、お茶汲み、兼、……要するにオルティの右腕的存在である。
仕事では有能な割に日常生活が疎かになりがちなオルティのサポートを行いつつ、収支会計などの雑務を一手に引き受けているので、実は相当デキる部類。なのだが、なまじオルティが良い意味でも悪い意味でも目立つため、どうしても添え物のような扱いを受けてしまう。
ロータス本人も、オルティの事は自慢のボスで義兄弟だと認識している。話題は殆どが『今日のオルティさん』であり、付き合った女性から「もうそのオルティって人と付き合えば!?」とビンタされ振られたことは、一度や二度の事ではない。

性格、気質

好き嫌いがはっきりしていて、露骨に顔に出る。良く言えば素直な性格。嘘がつけないタイプだが、それが最善だと信じた時には、心を殺してでも嘘をつき通す芯の強さもある。明るくポジティブで、ヌケている所が目立つため、他人からは能天気な馬鹿だと思われがち。しかし、能天気はあながち外してもいない。
一途で一本気な忠犬属性の人柄でもあり、一度従うと決めた以上、オルティには絶対に背かない。また、他の誰の下につく気もない。クローバー貿易商会のメンバーは彼にとっては家族も同然であり、命を賭しても守り抜くと心に決めている。

好きなもの、嫌いなもの

食べる事と酒が好きで、明るく賑やかな場が好きなため、落ち着いた雰囲気のバーのような店よりも、居酒屋のような店を好む。軽食やツマミを自作して宅飲みするのも好き。度数の高い酒も飲めるが、ザルではないので適度に酔う。体型を結構気にしているが、食べたり呑んだりは辞められないので、運動でなんとか消費しようと努力している。
オルティと同じく買い物が好きだが、オルティはファッション関係やガジェット関係の買い物を好むのに比べ、ロータスは食べ物関係の買い物が好き。裏市街の朝市は、趣味と仕事を兼ねて見回る。
オルティの事は大好きだが、オルティの添え物扱いを受けるのは非常に不服であり、そういう扱いをされたと感じた時には、ムッとした表情を見せる。オルティさんが凄い事は、誰より自分が良く知っている、という思いも無きにしもあらずの事。

戦闘

基本的には徒手格闘。ストリート仕込みの喧嘩拳法だが、足技を中心にした連撃はそれぞれが重い。
かつては『サンドラの白狼』と呼ばれ狂犬として恐れられていたが、オルティの下についてからは牙が抜けたように大人しくなった。その事を揶揄して『眠り狼』と呼ぶ者もあり、事実、激昂した時など、今でも白狼の地金を見せる事はある。

ロータス(白狼時代)
白狼時代のロータス

価値観、死生観など

生まれも育ちも裏社会のため、この世は弱肉強食であり、生き残るのは強い者だと考えている。そして、その中でいかに強者となって、弱者を守るのかが、ロータスの課題でもある。

生まれ

アルスの娼婦街で、とあるトヲラス人娼婦の元に生まれる。母は商売女ではあったが、ロータスを溺愛し、愛情と金をかけて、教育を受けさせて育てた。そのため、ロータスは貧民街の出でありながらも、それなりの読み書きや算術を習得している。母とその周りの娼婦たちはロータスを可愛がり、ロータスも彼女たちに懐いた。今でも女性の扱いはそれなりに上手い。
たっぷりと愛情をかけてもらったぶん、ロータスは愛情深く、義理に厚い男に成長した。
成人する前に母を喪い、喧嘩と暴力の日々を過ごしたが、その気質は失われなかった。

家族、対人関係

・トラン
本当の父親の顔を知らないロータスは、先代のクローバー貿易商会会長であるトランを父のように慕っていた。トランもロータスを息子同然に可愛がっていた。オルティがトランの仇を討つと言い出した時、二つ返事で了承したのはロータスだけだった。

・オルティ
兄貴分であり、オルティが会長となった現在は仕えるべき主君でもあるが、その出会いは最低だった。喧嘩の強さを買われて用心棒のような事をさせられていたロータスは、当時まだクローバー貿易商会の鉄砲玉で、カチコミに来たオルティと本気の殴り合いになる。死闘の結果、地を舐めたのはロータスで、それ以来、ロータスはオルティを兄貴として慕うようになる。

・アンブロシア、ヴァースラフ
ロータスとほぼ同時期にクローバー貿易商会に参入した、トランに可愛がられた少年たち。二人が死んだ時は深く悲しみ、そして、四ツ葉を枯らす事は出来ないと、強く決意した。

・サダルメリク
オルティが拾ってきた、可愛い弟分のような存在。とはいえ、どうせ変身できるなら、おじさんじゃなくておっぱいのでかい美少女でいて欲しかった。

・メリーラム
だからってそういう路線の人を連れてこいって意味じゃない、と思った。
普段事務所で一緒に仕事になる事が多い。目のやり場に困る。

・アルシァラ
後輩。少し生意気だが仕事はできるので、特に咎めたりはしない。オルティ本人は許すが、オルティに対して態度が悪い時に叱る程度。

・エリー
彼女の兄、アンブロシアを助けられなかった責任は自分にもあると感じている。できる限り幸せに、平穏に暮らさせてあげたい。

・エヴァグリーン
またオルティさんがなんか拾ってきた。使える奴だとは思っているが、事務所のカーペットを血で汚すのはやめてほしいと常々思っている。どうせそれを片付けるのはロータスの仕事だからだ。

プロフィール

血 族:トヲラス系鹿狼族
年 齢:39歳
誕生日:早春
身 長:188cm
体 格:やや肉づきのいい、筋肉質の体型
口 調:目上の人には敬語調。優しげ。

「オルティさん、そろそろコーヒーぐらい自分で淹れられるようになってくださいよ。」
「お前ほんとまともな服着てくれよ頼むから」
「良い子だね、ほら、おいで?」

ストーリー

・オルティの右腕として、要所要所で登場はするものの、目立って活躍はしない。控えめに花を添える存在。

・オルティが病を理由に隠遁した後、必死になってオルティの行方を捜したが、二度と会うことは出来なかった。

・クローバー貿易商会会長代理となり、死ぬまで頑なに代理と名乗り続けた。

・オルティの娘サリアが軍部と組み、竜宮を作り上げて商会を狙ってきた時、ロータスはそれを止める事ができずに、商会は軍部の傀儡となった。

・竜宮とエヴァグリーンは全面戦争になり、ロータスは商会の残党を率いて戦場に立った。軍部に手を貸すつもりは微塵もなく、軍部に顔が立つ程度に働き、商会に残ったメンバーを逃がそうという腹積りで。その後、おそらく事情を理解できるだろうエヴァグリーンの手に掛かることが目的だった。

・しかし、彼を断罪したのはエヴァグリーンではなかった。異国の剣技を用い、その男はロータスの背を斬る。ああ、雨になりそうですよ、気をつけて帰ってくださいね。己を斬った男の膝で、彼の向こうの空へ手を伸ばし、それがロータスの最期の言葉になった。46歳の、雨の日のことだった。

メリーラム

Merrylamb

概要

クローバー貿易商会、『雑務』担当。ロータスの業務を手伝ったり、事務所を清掃したりと、のんびり働いている。勿論、商会がただの貿易会社ではないように、メリーラムも、清掃やお茶汲みとは別に本来の仕事を持っている。
それは平たく言えば『拷問』だ。ありとあらゆる道具、器具、あるいは薬品、を用いて、メリーラムは標的を嬲り殺す。とはいえ彼女は取り立てて殺しが好きだとか、断末魔が好きだとか、そういう性癖を抱えているわけではない。単純に、その技術があったからそうしているだけで、本当はマゾ寄りだというのが本人の弁。商会に仇為す者には容赦せず、たっぷりしっぽり情報を絞る。
ちなみに、フリフリの裸エプロン姿は「ご奉仕します」の意味らしい。……断じて雇い主であるオルティの趣味ではない。

性格、気質

口調や眼差しは眠たげだが、話す内容はきっぱりしている。人によっては不愉快に感じるような媚びた女の声色で、じりじりと責める。拷問は趣味ではなく、仕事だとはっきり認識しているため、獲物で遊んだり、不用意に殺したり、逆に延命させたりすることはしない。見かけよりも線引きがしっかりしている。
いつでも事に及べそうな服装だが、その気になることはそうそうない。誘われればする、程度の気持ち。そもそもエプロンの下が貞操帯のため、その気になったところで直ぐに事に及べるわけではない。

好きなもの、嫌いなもの

拷問や殺しに愉しさは感じないが、仕事として割り切っているため、人体の構造や、拷問のやり方等には興味を持つ。スクールには通えなかったが勉強には熱心で、単純な読み書きや計算をロータスから教わっている。
好物は辛いもの。激辛なんとか、みたいなものばかり食べている。

戦闘

動きが機敏なわけでも、耐久力があるわけでもないので、闘うのは不得手。メリーラムの技術はあくまで、甚振ることに特化したもの。

価値観、死生観など

自分はもう死んでいて、商会にいる、商会があることで生かされていると考えている。商会のないところで生きていく気は微塵もない。生きていける気もしない。
性には奔放なほうだが、生来の事情を鑑みれば、奔放というよりは、それがメリーラムにとって当然なのかもしれない。

生まれ

フリーク向けの娼館で生まれ、当然のように娼婦になった。物心ついた頃にはもう頭のおかしい客の相手をしており、初潮より先に妊娠した。
物好きな客と店によって、せっかくだから、と腹が膨れるまでそのままにされる。胎児が大きくなったところで腹を割かれ、メリーラムは自分の子宮と胎盤、そして胎児の心臓を食わされた。それ以来、物を食べても味は感じない。
じきに店は潰れる。路頭に迷い、路地裏で客を引いて金を貰うようになったが、ろくな稼ぎにはならない。おまけに、そこはとあるクランの縄張りであり、知らなかった事といえ、半殺しの目に遭わされてしまう。そうして路地裏で死にかけていたメリーラムを掬い上げたのがオルティであり、クローバー貿易商会だった。

家族、対人関係

・オルティ
命の恩人。恩返しぐらいはしておきたいのだが、別に身体は欲しくないと言われたので、それならばと今の仕事を買って出る。

・ロータス
事務所で一緒に過ごす事が多い。ツッコミが鋭いのでボケ甲斐がある。

・サダルメリク
餌付けしている。

・エリー
商会の数少ない女子メンバー同士なのだが、逆にどう接していいのかわからない。

・エヴァグリーン
童貞くさいのでそんなに好きじゃない。

・アルシァラ
鬱陶しい。誰のおかげでご飯が食べられると思っているのか。

プロフィール

血 族:トヲラス系鹿狼族
年 齢:10代
誕生日:不明
身 長:160cm+ハイヒール
体 格:Jカップ
口 調:眠たげな媚び口調
「あ、もしかして期待してる感じですかぁ。残念ですけどぉ、えっちなことはしないんですよぉ。」
「そういうのいいんで、情報だけちゃっちゃと吐いてもらえますかぁ?」

ストーリー

・商会に救われ、初めは秘書として雇われる予定だった。しかし読み書きが出来ないことを不安に思い、メリーラムから辞退。

・その後、オルティが潔癖気味であること、汚れ仕事を引き受ける者が居ないことを知る。それならばと汚れ役を引き受け、今に至る。

・商会の崩壊後も居残り続けたメンバーのひとり。商会と命運を共にした。

アルシァラ・アル・ヤマニア

Alsheara Al Yamania

概要

クローバー貿易商会で外周り営業を務める、トヲラス人の若者。商会の「商社としての」部分を担い、顧客と連絡を取ったり、仕入れに当たったりするのが仕事である。
仕事には真摯に取り組み、業績も良い。が、同僚に対する態度にはやや問題があり、商会内では若干浮いた立場にある。
トヲラス人の中で特別な地位にある「天狗」であり、その背には滑らかな光沢を持った、炎のような色合いの翼が六臂、備わっている。

性格、気質

他人を見下し、敬わない。嫌な事があると直ぐに顔に出し、不機嫌になる。
自分は優秀だと思っていて、優秀な自分が愛されることは当然で、また疎まれるのも当然だと考える。
たとえ誰かを好きになったり、凄いと思って尊敬するようなことがあったりしても、それを素直に認める事はない。

好きなもの、嫌いなもの

食べ物は甘いものや果物を好むが、摂り過ぎないように心がけている。食べ物の好き嫌いは少なく、おそらく、商会の中で最も健康的な食生活を送っている。デーツや甘い紅茶が好物。

派手で目新しい事が好きだが、下調べや、基礎を整える事を疎かにはしない。泥臭い事は好まないが、嫌ってはいない。しかし、影で努力をしている事を知られたり、それを他人に吹聴する事は嫌いで、恥だと考えている。

戦闘

戦闘は不得手で、戦う事には慣れていない。荒事は周囲に任せる。荒事にならないように事を運ぼうとする。そして、その手腕に長けているがために、アルシァラは商会内で、対外的な立場に立っている。

価値観、死生観など

トヲラス天狗である事を誇りに思うと同時に、重い枷だと感じている。優れた存在であらねばならない自分と、現実の自分のギャップに苦しみ、追いつけない誰かの背中に手を伸ばす。そうしなければ生きていてはいけない、生きていけないとさえ思う。屈辱感、劣等感のようなものに、常に追い立てられている。
アルシァラにとって死は恐怖であり、それを逃れる方法があるなら、容易く何かを犠牲にできる。

生まれ

商家として名高い、ヤマニア家の妾腹の子。当主である彼の父親は、世継となる男児を欲し、妻を何人も娶り(トヲラスでは、妻を複数人娶ることが可能である)子を産ませた。しかし産まれてきたのが女児ばかりであったため、屋敷の使用人であった地潜の娘さえ孕ませた。その子がアルシァラである。
念願の男児ではあったものの、アルシァラの背の翼は姉たちの白く輝くそれとは異なり、赤く燃えていた。トヲラスの古い家では、性別と、翼の美しさは、家長となるに欠かせぬものであった。

悲しみに暮れた当主は隠居し、そのまま生涯を閉じたため、アルシァラは彼の遺した子の中で唯一の男児となった。それを良く思わなかったのが、アルシァラの姉と、その母親たちである。アルシァラよりも姉たちの方が、当主となるに相応しい翼を持っている。ましてや妾腹の子、汚らしい地潜の娘が産んだ子に家督を継がせるわけには行かぬと、彼女たちは結託し、彼ら母子を遠くアルスへ送り出して事実上絶縁としたのだった。

アルシァラら母子を島流しにすれど、殺しはしなかったのは、血を分けた弟への、姉たちからの慈悲だったのかもしれない。
しかしながら、アルスの文化はトヲラスのそれとは余りに異なる。アルスでは、背に翼持つ者は異形であり、忌避の対象であった。それだけではなく、トヲラス人そのものを排斥しようとする者もあった。表立ってアルシァラを攻撃する者こそ少なかったが、陰湿な悪意に曝され続け、アルシァラは自己保護としてのひとつの結論に至る。

——己が疎まれるのは、己の優秀さ故だ。

家族、対人関係

・オルティ
上席。尊敬はしているのだが、素直に態度に出さない。自分よりも優秀な人間の存在は、アルシァラにとっては邪魔でしかない。

・商会のメンバー
特別な感情は無く、個人的な付き合いもない。オルティの取り巻きだろ? 俺の魅力が分からないんだよ、可哀想に。

プロフィール

血 族:鹿狼族
年 齢:28歳
誕生日:晩冬
身 長:177cm
体 格:痩身・小柄
口 調:尊大、偉そう
「まあ、このぐらいは当然だろ。俺ってホラ、よく出来るからさ。」
「逃げよう、俺と逃げよう? あいつらみんなバカなんだよ、だって死んじゃうんだぞ!? 俺と一緒に来てよ……!」

ストーリー

・クローバー貿易商会の一員として、要所要所で登場する。トヲラス的な物の考え方、あるいはトヲラス天狗の有り様を示す立ち位置にある。

・オルティが隠遁した後、クローバー貿易商会は軍部の傀儡となった。このままいては未来の無いことを悟ったアルシァラは、軍部や竜宮に商会を売り渡し足抜けを画策する。

・しかし、時は既に遅かった。竜宮を巡る戦いの渦中、彼は呆気なく落命する。終ぞ届くことのなかった誰かの背が、あるいは、側に居られなかった誰かの横顔が、血溜まりの中に霞んで消えた。

ツキヒメ

Tsukihime

概要

カジノ『パンドラボックス』のカードコーナーは常に賑わいを見せているが、時に彼女が訪れる時、その賑わいは殊更に高揚する。ツキヒメ、カードの女王にして、王の細君。名うての勝負師でも彼女には敬意を払い、か弱き者は一目散に勝負を降りる。艶然と笑む彼女の前には、次第にチップの山が築かれる。終ぞ負け知らずの、幸運の女神に愛された者。それがツキヒメだった。

性格、気質

何もかもを見透かしているような微笑みを絶やさないことで、初見では怜悧な印象や、恐ろしい印象を受ける者が多い。しかし彼女自身は非常に甘やかで優しい。一度会話をすれば彼女の蕩けるような囁きの虜にされる。そして、その後の責任は誰も持ってくれはしない。

好きなもの、嫌いなもの

カードゲームは好きだが、それよりも楽しいお喋りや飲み物、そして美しいものや華やかなものを好む。逆に見窄らしいものは嫌う。かつての時代の貴婦人のような優雅で上品な振る舞いを好む。
食べ物であればとりわけチョコレート類をこよなく愛し、どちらかといえばビターな物が好き。蕩かすように味わう。

戦闘

戦うことはからきしで、戦力にはならない。泥臭さとは無縁な彼女は、繊細で嫋やかな、守るべき女そのものだ。

価値観、死生観など

強固な価値観や生命観を持たない彼女は、他人の価値観を肯定して生きている。即ちシュワルツの価値観を肯定し、それに倣っている。彼を愛し慈しみ、彼に愛される以上の自分は不必要で、今ここに、シュワルツの傍に立つ自分だけを肯定する。

生まれ

故に、シュワルツと出会う以前の事は語らない。その情報に彼女は意味を見出せないのだ。噂では、どこかの店で娼妓をしていただとか、かつては歌姫であったのだとか、様々に口々に言われているが、ツキヒメはそれを肯定も否定もせずに、ただ微笑んでいる。

家族、対人関係

・シュワルツ
最愛の男であり、パートナー。自身の存在の理由であり、全てである。彼が望む事を何でもしてやりたいと思うし、これまでも常にそうしてきた。

プロフィール

血 族:鹿狼族
年 齢:30代前半
誕生日:晩冬
身 長:170cm前後、ヒール込み
体 格:Gカップ
口 調:華やかで丁寧

「あらあら、また私の勝ちね。嬉しいわ!」
「私には貴方がいるもの。そして、貴方には私がいるのよ。だからちっとも、寂しくなんてないの。私は貴方を愛しているわ。」

ストーリー

・主軸となるストーリーには大きく絡まない。シュワルツの隣に立ち、彼を愛する者として存在する。