アルシァラ・アル・ヤマニア

Alsheara Al Yamania

概要

クローバー貿易商会で外周り営業を務める、トヲラス人の若者。商会の「商社としての」部分を担い、顧客と連絡を取ったり、仕入れに当たったりするのが仕事である。
仕事には真摯に取り組み、業績も良い。が、同僚に対する態度にはやや問題があり、商会内では若干浮いた立場にある。
トヲラス人の中で特別な地位にある「天狗」であり、その背には滑らかな光沢を持った、炎のような色合いの翼が六臂、備わっている。

性格、気質

他人を見下し、敬わない。嫌な事があると直ぐに顔に出し、不機嫌になる。
自分は優秀だと思っていて、優秀な自分が愛されることは当然で、また疎まれるのも当然だと考える。
たとえ誰かを好きになったり、凄いと思って尊敬するようなことがあったりしても、それを素直に認める事はない。

好きなもの、嫌いなもの

食べ物は甘いものや果物を好むが、摂り過ぎないように心がけている。食べ物の好き嫌いは少なく、おそらく、商会の中で最も健康的な食生活を送っている。デーツや甘い紅茶が好物。

派手で目新しい事が好きだが、下調べや、基礎を整える事を疎かにはしない。泥臭い事は好まないが、嫌ってはいない。しかし、影で努力をしている事を知られたり、それを他人に吹聴する事は嫌いで、恥だと考えている。

戦闘

戦闘は不得手で、戦う事には慣れていない。荒事は周囲に任せる。荒事にならないように事を運ぼうとする。そして、その手腕に長けているがために、アルシァラは商会内で、対外的な立場に立っている。

価値観、死生観など

トヲラス天狗である事を誇りに思うと同時に、重い枷だと感じている。優れた存在であらねばならない自分と、現実の自分のギャップに苦しみ、追いつけない誰かの背中に手を伸ばす。そうしなければ生きていてはいけない、生きていけないとさえ思う。屈辱感、劣等感のようなものに、常に追い立てられている。
アルシァラにとって死は恐怖であり、それを逃れる方法があるなら、容易く何かを犠牲にできる。

生まれ

商家として名高い、ヤマニア家の妾腹の子。当主である彼の父親は、世継となる男児を欲し、妻を何人も娶り(トヲラスでは、妻を複数人娶ることが可能である)子を産ませた。しかし産まれてきたのが女児ばかりであったため、屋敷の使用人であった地潜の娘さえ孕ませた。その子がアルシァラである。
念願の男児ではあったものの、アルシァラの背の翼は姉たちの白く輝くそれとは異なり、赤く燃えていた。トヲラスの古い家では、性別と、翼の美しさは、家長となるに欠かせぬものであった。

悲しみに暮れた当主は隠居し、そのまま生涯を閉じたため、アルシァラは彼の遺した子の中で唯一の男児となった。それを良く思わなかったのが、アルシァラの姉と、その母親たちである。アルシァラよりも姉たちの方が、当主となるに相応しい翼を持っている。ましてや妾腹の子、汚らしい地潜の娘が産んだ子に家督を継がせるわけには行かぬと、彼女たちは結託し、彼ら母子を遠くアルスへ送り出して事実上絶縁としたのだった。

アルシァラら母子を島流しにすれど、殺しはしなかったのは、血を分けた弟への、姉たちからの慈悲だったのかもしれない。
しかしながら、アルスの文化はトヲラスのそれとは余りに異なる。アルスでは、背に翼持つ者は異形であり、忌避の対象であった。それだけではなく、トヲラス人そのものを排斥しようとする者もあった。表立ってアルシァラを攻撃する者こそ少なかったが、陰湿な悪意に曝され続け、アルシァラは自己保護としてのひとつの結論に至る。

——己が疎まれるのは、己の優秀さ故だ。

家族、対人関係

・オルティ
上席。尊敬はしているのだが、素直に態度に出さない。自分よりも優秀な人間の存在は、アルシァラにとっては邪魔でしかない。

・商会のメンバー
特別な感情は無く、個人的な付き合いもない。オルティの取り巻きだろ? 俺の魅力が分からないんだよ、可哀想に。

プロフィール

血 族:鹿狼族
年 齢:28歳
誕生日:晩冬
身 長:177cm
体 格:痩身・小柄
口 調:尊大、偉そう
「まあ、このぐらいは当然だろ。俺ってホラ、よく出来るからさ。」
「逃げよう、俺と逃げよう? あいつらみんなバカなんだよ、だって死んじゃうんだぞ!? 俺と一緒に来てよ……!」

ストーリー

・クローバー貿易商会の一員として、要所要所で登場する。トヲラス的な物の考え方、あるいはトヲラス天狗の有り様を示す立ち位置にある。

・オルティが隠遁した後、クローバー貿易商会は軍部の傀儡となった。このままいては未来の無いことを悟ったアルシァラは、軍部や竜宮に商会を売り渡し足抜けを画策する。

・しかし、時は既に遅かった。竜宮を巡る戦いの渦中、彼は呆気なく落命する。終ぞ届くことのなかった誰かの背が、あるいは、側に居られなかった誰かの横顔が、血溜まりの中に霞んで消えた。