生命と死について

魂とは

人類種四族は、魂、という概念上のエネルギーを『炉』で燃やすことで生きています。魂の存在が、人類種を特別な生命体としています。このエネルギーは有限で、この火が消えることが、即ち人類種四族の死となります。

竜種の魂

竜種竜族は、このエネルギーが無限です。概ね人類種四族より長生きする理由は、これです。人類種四族は肉体ありきで魂をエネルギー源としますが、竜種竜族は魂ありきで、肉体を形成して使用します。このため、竜種竜族は死亡し、次に生まれても同じ外見や性格を保つことができます。

竜族の魂エネルギーは無限ですが、死ぬことはあります。肉体の損傷が激しく、その形を保てなくなったとき。そして、彼らが「生きることに価値を見出さなくなった」とき。肉体の崩壊が即ち、竜族の死となります。殆どの場合、竜族は肉体の損傷により死亡します。

不死者とは

不死者は、魂の焼失による死を拒み、魂エネルギーの代替として、強い感情や願いを焼き、生存を図った人類種四族の成れの果てです。

不死者になったからといって、不死身になるわけでもありません。不死者は死を拒む者であり、死なない者ではないからです。しかし、実際のところ、不死者は不死身と殆ど同じものです。

不死者はその永い生の間に、たびたび、真っ当な精神性を棄てています。また、魂の代わりに燃やせるような強い願いや想いは、生前の彼らの生きる理由そのものである事も多く、それを炉にくべている事を苦痛だと感じている不死者や、生きる理由そのものを見失い、抜け殻のように生きている不死者も存在します。

竜種は不死者足りうるか

その成立条件上、竜種竜族が不死者となる事はないでしょう。竜種にとって、永く生きることはさほど難しいことではないからです。しかしながら、竜種と人類種が、あるいは神と人の境界線が曖昧であったころであれば、そのような行き違いも起こったかもしれません。

かつての竜種
かつては竜種だったのかもしれない。

変幻自在のサダルメリク

Sadalmelik

概要

クローバー貿易商会の潜入、および戦闘時の陽動担当。観察したことのあるものならば、ほぼ無限に姿を変える事が可能な能力を持ち、また、サダルメリクを観測する者の認識の違いによって、その精度や特性が変化する。例えば、サダルメリクを怪物だと思っている人の前では、怪物に変化するが、その見た目や特徴は、観測者の認識(例:長い触手と翼のある怪物)に近い、サダルメリクが過去に観察したことのあるもの(例:頭足類や鳥類)を融合させて表現される。どちらが優先されるかは時と状況にもよるが、サダルメリク本人の想像力で変化することは難しい。

というのも、彼/彼女の能力の由来は、彼/彼女が不死者であることに由来するのだ。不死者となる際に、彼/彼女が魂の代わりに燃やした生命の炉心は、個性そのものだった。個性を喪失した彼/彼女は誰でもいられなくなり、記憶や価値観は曖昧であやふやなものになってしまった。もはや不死者となる以前、どんな人物で人格だったのかさえ思い出すことはできない。あるいは人間だったのかさえ、わからない。
彼/彼女を獲得した者に望まれるまま、怪物的に過ごしていた怪物の模倣者を拾い上げたオルティは、彼/彼女に『サダルメリク』の個性を与え、商会で保護する。それから彼は『サダルメリク』をベースとして生活するようになり、いつでも変身・復帰が可能なように、『サダルメリク』を書き込んだ手帳を持ち歩いている。

性格、気質

『サダルメリク』でいる間は、おっとりした、ほんのり天然系のおじさん。温和で争いを好まず、ふわふわと笑っている。見た目や雰囲気は、数学教師風、と形容される事が多いが、数学はむしろ苦手な部類である。
変身中は、その深度にもよるが、変身した相手の性格や気質を模倣する。素のサダルメリクとは真逆のような人格を持つ人に変身しても、深度が浅ければサダルメリクの性格がベースにある。変身の深度が深ければ深いほど、変身した相手の人格に引っ張られ、サダルメリクに戻ることが容易でなくなっていく。
不死者であるため、本来なら眠ることも、食事の必要もなく、傷つけられたとて痛む必要はない。しかしながら、オルティはサダルメリクが可能な限り『普通の人間』として暮らすことを望んだ。故にサダルメリクは眠り、食事し、痛み過ごす。サダルメリクはそれを煩わしいとは思わないが、不思議なことだと感じている。

好きなもの、嫌いなもの

好き、嫌いは個性の一部であるため、本来的にはこれらの情報も持たない。しかし『サダルメリク』はチョコレートケーキとチリビーンズが好きで、日向ぼっこが好きで、星を眺めたり、花を愛でたりする事が好きだ。それは誰が与えたというものでもなく、自然発生的に、サダルメリクに生まれた個性である。サダルメリク、という生き方を与えてくれたオルティ、それを受け入れてくれたクローバー貿易商会は、サダルメリクにとって大切なもののひとつである。それらの為になる事ならば、能力は惜しみなく使う。
無個性であることは彼/彼女にサダルメリクという新しい生を与えはしたが、それは砂の城のようなもので、波が寄せれば一瞬で崩れ去ってしまう。そうした時には、誰か(存命の間は主にオルティ)の認識からサダルメリクを復元するが、前と違ってやいないか、ちゃんと戻せているかと不安になり、後で忘れ去ってしまうとしても、サダルメリクはその時間が不愉快で、嫌いでさえある。

戦闘

不死者の特性上、他者の生命に干渉することは許されていない。故にサダルメリクは直接、誰かを殺すような戦い方はできない。あくまでも彼は怪物の模倣者であり、怪物そのものではない。
そのため、戦闘は行わず、能力を活かし、潜入や陽動を行うことがほとんど。どうしても武力が必要な場合は、誰かの姿を借りて戦うが、やはり殺す事はできない。

不死の特性ゆえに死にはしないので、肉壁を買って出る事はあるが、余程の困窮した状況に限られる。というのも大抵の場合、そういう事をするとオルティをはじめ、商会メンバーが心配するのだ。

価値観、死生観など

サダルメリクの性格ゆえか不死者ゆえか、危険なものに対する抵抗感が皆無で、また、自分の身体についても、大切にする必要はあまり感じていない。サダルメリクという個性は大切にしているが、不死であり、変身が可能な以上、肉体はいくら傷ついても問題はなく、危機感知能力が低い。それは一種、諦めにも似ている。
死ぬことが嫌で不死者になったはずなのだが、その「死ぬことが嫌だった個性」さえ喪っているので、特別死を恐れてはいない。
他人が不死の特性を求めることは快く思わない。これはサダルメリクの個性ではなく、不死者はそのように作られているからである。
後に、とある理由から不死の特性を棄却しようと足掻く事がある。

生まれ

不死者となる以前の環境は不明。
『サダルメリク』としての記憶と記録は、オルティに出会った時から始まっている。

家族、対人関係

・オルティ
『サダルメリク』を与えてくれた恩人。いちばん良く懐いている。彼の死に際し、サダルメリクを保てなくなった。

・ロータス
何かと気にかけてくれる人。なんやかんや世話を焼いてくれるので、一緒にいると楽。

・メリーラム、エリー
仲間として大切に思っている。変身途中の粘土のような姿を見られるのは、なんとなく恥ずかしい気がする。

・エヴァグリーン
強い人という認識なので、戦闘になるような事があれば真っ先に変身する。

・『収集者』
彼/彼女に不死者としての未来を提示した存在。ちょっとだけこわい。

プロフィール

血 族:不明
年 齢:不明(見た目30代後半)
誕生日:不明
身 長:概ね168cm
体 格:瘦せぎす
口 調:おっとり系、平仮名語

「おそかったね、オルティくん。君のまま死んでしまうところだったよ。」
「だめだよ。絶対にだめだ。君は僕みたいになっちゃいけない。」
「僕だって死ねるはずなんだ! 『サダルメリク』のまま、死ねるはずなんだ……!」

ストーリー

・『人を食う怪物』として飼育されているところをオルティ、ロータスに発見される。もちろん戦闘になったが、彼の特性を見抜いたオルティに無害で平凡な個性を与えられて鎮圧された。

・その後、普通の人として生活できるように、『サダルメリク』の個性と、それを手帳に書き留める方法が考案され、クローバー貿易商会の一員となる。

・人手不足の商会のため、潜入、諜報要員として使ってくれと言いだした。オルティは反対したが、最終的にはそれがサダルメリクの仕事になった。

・オルティの死後、自己認識が壊れてしまい、『サダルメリク』を失っていた。そのまま己が誰とも知れず生きていたところを、突然に揺り起こされる。それからの物語は、誰も知らない。

・再び全てを失ったサダルメリクは、この個性を抱えたまま死ぬ事を目指して何度も『自殺』を試みるが、『ある収集者』曰く、そう何度も横紙破りが許されるものではない、とのこと。結果、サダルメリクに残ったのはぼろぼろの身体と、古びた手帳、そして誰かの名前を刻んだ指輪だけだった。

・長い年月の後に、死神になったとある青年と再会を果たす。そうしてサダルメリクの永い永い死出の旅は、やっと終わるのだった。