カルラ

Karura

北上をぶらついてるおじさん。一帯の地主らしい。地主というだけで働きもせず生きていけるはずないのだが、誰も疑問に思わないようだ。

番傘を片手に川辺で釣り糸を垂らしているのをよく見かける。飄々として掴みどころがないが、何故か何でも話せてしまうと感じる。子供には特に優しく、土地の子供にも懐かれている。

非常に印象的な見た目をしているはずなのだが、北上を離れるとその存在さえ思い出せなくなる。たとえその土地で育ち、幼いころからカルラと親しくしていたとしても。しかし北上に戻ればすぐに思い出すことができ、記憶の違和感も起こらない。

突っ込んだことを聞こうとすると躱される。それでも食い下がると、真剣な面持ちで「どうしてもと言うなら、教えてやってもいい」と言われ、大抵の人間はそれ以上彼に何も聞かない。その先を聞けば、家に帰れなくなる気がするのだ。

北上センターの社で祀られているべき存在の実態。

天よりこぼれた最初のものであり、天鼓、天狐、天狗である。
流星、いかづちの如きもの、天の白き獣。暁の星より来たりし炎。
呑む者。永若の賢者。サナトクマラ・カルラ。かつては北上護法魔王尊と呼ばれたものである。

地に堕ちた彼は地上のあらゆる生命と縁を結び、己の眷属を増やすことを良しとした。
それらが鬼である。地上で生きるすべての鬼は彼の子供たちである。
すなわち、カルラは鬼の祖ともいうべき存在である。

彼は繁殖のため、自分の気に入った相手を連れ去る。
相手を孕ませただけで地上に返すこともあれば、長く側に置くこともある。
彼は自分の性質に合った姿として男性の姿を取っているが、女性になることも可能である。
そうして自らが相手の子を孕み、出産をした経験もあるようだ。

「おまえがここを出たいと言うなら、俺は引き留めぬ。いつでも戻ってくるが良い。いつでも俺はここに在る。」