人類種

Humans

人類種。ヒト。
社会を形成し、互いの関係性によって世界を広げるもの。この星の霊長。
……あえて説明する必要があるのか、って顔してるね。まあ、君たちの知る、君たち自身とは結構違うよ。

概要

人類種は四族に分類される。
現代では混血が進み、平均に近づいているものの、いまだ血族の特徴を濃く残している者も少なくはない。

  • 緋人族 / Bloodreds
    最も平均的で、広い地域に適応した人類種のスタンダード。これといった特徴がないのが特徴と言える。
  • 鹿狼族 / Lycelafis
    山野や高原によく見られる、狩猟民の末裔。体の一部に獣様の器官(翼、尾、耳など)を形成する場合がある。緋人族との混血が進んでおり、緋人族の中に溶け吸収されている。トヲラス等の一部地域においては、純血統の鹿狼族が残っている。
  • 鱗族 / Scalekins
    沿岸部によく見られる、漁民の末裔。鹿狼族と同じく緋人族との混血が進んでおり、純粋な血脈はほぼ途絶えていると考えられている。鱗族の血が濃い者は手足に水かき様の器官を形成するが、多くの地域で幼児のうちに切除する慣わしとなっており、見た目に鱗族であると判別することは難しい。
  • 精霊族
    山間部にて、伝統的な暮らしを続けている種族。他の三族に比べ代謝が穏やかであり、結果として長命であることで知られる。
    三族との関わりにおいてその差異のため、事故に至る例が少なくない。このため、精霊族は自ら人里を離れ、独自のコミュニティを築いている。

特徴

敢えて人類種、特に緋人族の特徴と呼べるものを挙げるとするならば、その適応能力と発展性……世界にもたらす「変化」にあるだろう。
単純な力押しでは竜種、鬼種に及ぶべくもないが、人類種はその創意工夫により、科学技術を発展させることで彼らに並び得た。つまり、自分たちが最も生存しやすい環境を模索し、世界の側を自分たちに引き寄せる。

さらに、広範な環境への適応から、人類種は繁殖の機会を選ぶ必要がない。いついかなる場合であれ、栄養が十分でさえあれば子を産み増えることができる。数の優位は、かつて人類種は自分自身こそが最も安価な通貨である、と言われていたほど凄まじい。
竜種及び鬼種が、その必要に駆られなければ積極的に増えることがないのとは真逆の性質であると言える。

生態

社会を形成して暮らす。社会から外れ暮らす者もなくはないが、人類種は「孤独であることに耐えかねる」ようにできている。本能的にそうだ、というよりは、生命として、独りで生きていくことができない。

だから、全くの個人が孤独に生活するということは滅多にない。コミュニティから弾き出されるような余程の理由があったとして、その者は別のコミュニティに身を寄せることを選ぶ。互いに密で深い関係性を築き上げることを良しとし、それを維持しようとする。

これは竜種や鬼種から見れば、かなり独特な生態として映るらしい。とある鬼種は、人類種を「虫のようだ」と称したと伝わる。おそらく、自分たち鬼種と比較して虫のように弱い者である、という意味であろう。しかし、こうしたコミュニティを築き、過密とも言える距離感で暮らす人類種を、群れる虫に譬えた物言いであるとも言われている。

また、竜種は信仰を持たないとされているが、人類種と鬼種は信仰を持つ傾向にある。神やそれに類するものを崇拝し、信仰の教義を共有することで、コミュニティへの帰属意識を強め、生活の規範としているものである。
鬼種と明白に異なる点としては、鬼種が信仰するものは彼らにとって「存在が確実なもの」である。具体的には、鬼種は力のある古い同朋を信仰して祀るのだ。人類種は、たとえ自らがその姿を見たことがないとしても、神を想像しそれに仕えるのである。

——存在しないものを存在するかのように扱うことができるのは、人類種にだけ備わった力なのだ。

立場

この星の霊長である人類種は、もはや世界そのものを社会としている。そこが人類種の社会に組み込まれている場所であれば、所属する国や信仰する宗教に関わらず、生活することにさほどの苦労はない。人類種というだけで、ある程度の社会的権利を得ることができるようになっている。
無論、コミュニティの内側で社会的権利を得ることと引き換えには、社会的な義務が発生する。すなわち、そのコミュニティへの貢献であり、そのコミュニティへの加害を行わないことである。いかなる国、地域であっても、それが大きく変わるということはない。
そして、仮に義務を果たすことが難しいような場合であれ、即座にコミュニティから弾き出されるようなこともない。そして、ほとんど全ての国家、都市においてそのコミュニティの運営は法治によって行われている。

人類種の社会は斯様に安定的で寛容であるが、しかしながら竜種、鬼種をコミュニティに受け入れる事はしない。比較的小さな、家族や生活の共同者として受け入れる例はあれど、社会全体で見ればやはり不寛容である。彼らを人類種の一部として数えるのではなく、竜種、鬼種と呼ぶことが、その最も卑近な例であろう。

秘匿

君たちの認識では、君たち人類というものはどうやって生まれてきた?
さまざまな神話が語られながらも、科学は全く別の答えを物語っていることだろう。そのいずれが正しいかは僕の断じるところにない。君たち自身で答えを追求するべき問題だ。
……ともかく。

我々の世界では、この問いかけに答えが用意されている。一般に知られている物語ではないけれど、僕はそれを認識して、真実として知っている。
それでは、星の子どもたちの話をしよう。

起源

人類種を生み出したのは——ひいては、この世界を生み出したのは……便宜上「神」と呼ぶとしよう。そういうロクデナシだ。
どういう事情で「世界を作ろう」なんて発想に至ったのかは知らないよ。知りたくもないし、知っていたとして僕らの糧にはなりっこない。
星の建造については、別の機会に詳しく話すとして。星の霊長、星の支配者として、神は僕ら人類種の創造に手をつけた。ところが、肉を捏ねて造形された「人型」は、生命ではあったけれど、霊長ではなかった。単に二足歩行するだけの獣だ。魂と呼べるものがなかったからだ。

神は、無から魂を作ることまではできなかった。しかし、ここで何とも都合の良いことが起こった。魂と呼べる、それに相応するものを持っている存在が見つかったんだ。本来ならば、この星の霊長として君臨するはずだった「星の大精霊」。神はそれを拾い上げ——細かく刻んだ。魂として運用できるぎりぎりの量になるまで微塵切りにした。
そして、それを組み込んで「人型」を「人類種」という霊長にすることに成功したんだ。それが、緋人族という人種だ。初めて創られたヒト。それから神は、生き物や環境を作り込んでいた他の神に声をかけ、星の霊長の創造に手を貸すように言った。

獣を作っていた神が、鹿狼族を産み出した。あまり良い出来とは言えない。獣の作り方をそのまま応用された彼らは、今も血族特有の病に苦しんでいる。
魚を作っていた神が、鱗族を産み出した。ところが陸で暮らすということを忘れていたから、水を出た彼らは渇いてしまう。彼らは沿岸で暮らしているのじゃなくて、沿岸を離れられないだけだ。
石を作っていた神が、精霊族を産み出した。見た目は精巧だった。ただ、人が生きる時間を長く見積り過ぎていたせいで、彼らは時に取り残されている。

こうして人類種は誕生し、星の命のかけらをその身に宿した霊長となった。なったにも関わらず、今もそれぞれに、神の無鉄砲のツケを払い続けているというわけさ。

本質・構造

肉を捏ねただけでは、人は人たり得なかった。
魂を組み込まれ、それを燃やして初めて、単なる二足の獣から霊長になることができた。
魂とは、不思議なものだ。物質ではない。けれど確かに存在している。触ることも見ることもできない空気みたいなものだけれど、何らかの原子によって構成されてはいない。生命のエネルギーであり、ヒトを構成する情報でもある。そしてそれは有限の資源である。

星の大精霊を切り崩した残り滓。微塵切りのひとかけらにすぎないもの。それが、誰しもの身体に宿り、それを一固の生命へと押し上げている。
人類種の死とは、単純に、魂のエネルギーが燃え尽きることで発生しているわけだ。
魂の炉が、エネルギーを取り出している。それは概念的なもので、物理的に存在しているものではない。エネルギーを取り出しながら、魂の炉はその人物の情報(ログ)を魂に焼き付けていく。それこそが生きるということであり、人生とは情報であるということ。すなわち、人類種とは本質的に情報、つまりデータであると言える。
不死者というのは、この魂が燃え尽きたとしても、その炉に新たなエネルギー源を焚べ続ける存在だ。これは、別の機会に話すほうがいいだろう。

魂は有限だ。これは人類種が増えすぎない理由でもある。同時に存在できる人類種の数に限りがある。とはいえ、それは極めて大きな数であるから、ヒトの目に留まるようなことは今のところ起きていない。
もし、生まれてくる人類種の数が徹底的に把握されるような未来がくれば、それは白日に晒されるかもしれないね。

//うん? 僕は完全にただの人だよ。不死とかでもない。ありふれた人類種だ。たかが、「自分と同じ魂の破片を持った個体と、IFを超えて繋がることができる」だけの男だ。

補足

君たちの世界では、ヒトが神の園を追放されたことを原罪と呼ぶ神話があるそうだね。
僕らの神話にもそういうものはあるけど、真実としては、人類種が生きていること、それ自体に罪はないんだ。被造物に過ぎないのに、そこに責任を求められても仕方ない。

けど、人類種は誰しも、星の大精霊の破片を持って生まれてくる。竜種が竜王の断片として生まれてくるように。
生きることは罪ではない。でも、だからこそ、生きることは真摯でなければならない。僕はそう思っているよ。

//ええと、本当はこの補足ごとコメントアウトしないといけないだろうね。これは僕の感情と感想だもの。
//けど、いちばん大切なことだと僕はこれを信じているからね。……きっと誰かに知っておいて欲しかったんだろうな。